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総合商社 第1四半期決算まとめ

少し前ですが、総合商社各社の第1四半期決算発表がありましたね。

「コロナの影響がどこまで出ているのか」
「今まで発表していなかった企業の見通しはどうなっているのか」

注目が集まっていました。
今日は、総合商社大手5社の2020年度第1四半期について解説していきます。

【総合商社の動向が知りたい方】や、【就活で総合商社業界を検討している方】に役立つ記事になるよう書いていきます。

分析する上で大事な概念「減損」とは?

お金


業績を比較する前に、総合商社を分析する上で極めて重要な言葉、「減損」について説明しようと思います。
総合商社は海外の企業に事業投資しており、グループ会社の業績不調に応じて、その会社の資産価値を低下させます。この下げ幅を「減損」と呼びます。
一般の企業では、あまりなじみのない言葉ですよね。

減損は純利益にマイナスを与えますが、減損を計上するタイミングはその企業に任されています。
この「減損」を上手くコントロールし、今回の決算で株価を上げたのが、丸紅でしたね(こちらについては後述します)。

つまり、減損によって純利益が低く見えていますが、「稼ぎ頭」が残っている場合もあるので注意が必要です。

総合商社5社決算の総括

各社のパフォーマンスを比べるうえで、一般的なのはグループとしての純利益ですので、今回はそちらを使って比較を行います。
掲載する順番は20年度第1四半期(以下、1Q)の純利益に沿っています。

1Q純利益(前年度比較あり)

1Q実績比較

今年の1Qは、伊藤忠、物産、丸紅、三菱、住商の順番でランキングが確定しました。

まず着目すべきなのは、住友商事の大型マイナス決算です。
ニッケル鉱山を始め大型減損があり、純利益がマイナスとなる結果になりました。
コロナの影響は3月から続いているため、19年度決算でなぜ減損を計上しなかったのか疑問です。

次に伊藤忠が2位の三井物産に大差をつけて王者となったこと。
前年度、バチバチにライバル関係であった三菱商事はなんと4位まで落ち込んでしまいました。

前年度比で一番コロナの影響を受けていないのは丸紅。
この厳しい中11%までマイナスをとどめたのは見事です。

1Q純利益(同年見通し比較あり)

修正版見通し

次に20年度、年間の見通し(年間の目標額)との対比を行ってみます。

こちらの表で見ると、1位の伊藤忠が見通し通りに進捗していることが分かります。
一方、三菱商事は年間見通しでも伊藤忠を抜くことができず、四半期の進捗率も25%以下です。

丸紅は年間の目標額を第1四半期で58%達成しているという、かなりハイペースな結果でした。これからの見通し上方修正に期待がかかります。

住友商事の見通しは、なんとマイナス1500億円。これからの挽回は難しく、追加でマイナスを計上する見込みです。

このように今回の決算では、勝者と敗者がはっきり分かれた結果となりました。

以下では各社の個別状況を箇条書きで書いていきます。

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伊藤忠商事

・資源価格の低下のあおりを受けず、非資源中心(純利益の78%にあたる)の経営が功を奏す
・自己資本比率も改善し、28.3%
→財務状況の向上にも成功
・配当維持も株主にとって好印象

三井物産

・石炭販売価格下落や販売数量の減少、原油・ガス価格の下落を受けたが、期初想定よりも純利益向上に成功(昨年度、資源で475億の減損済み
→「資源の三井」のイメージが強く今回のコロナの影響が大きく出るのかと思っていましたが、想像以上に大丈夫でしたね。
機械・インフラの進捗率は53%で調子が良い模様

丸紅

・昨年度全体で3,900億円の減損を計上したため、第1四半期の成績は好調
→昨年の決算から大幅に純利益を改善できたのは見事です。
・電力、食料など生活必需品・サービスやトレード事業が貢献。
決算発表日には前日比で11%の株価上昇
→投資家も今後の業績に期待している表れでしょう。

三菱商事

・昨年度、「純利益、株価、純資産」の三冠王を伊藤忠に譲ったが、今年も奪還は難しい模様。
・一番大きな要因は三菱自動車の減損145億円
→今後も自動車・モビリティグループでの減損を行う可能性も
・1株当たりの利益に対する配当金額を「配当性向」と呼ぶのですが、三菱商事の配当性向は99%に上昇。つまり、純利益全部を株主に還元していることになります。
→今後新規投資に積極的になれるのかが注目です。

住友商事

・5商社の中で唯一の赤字転落。20年度見通しのマイナス1,500億円は過去最悪の結果に
・大きなインパクト要因はマダガスカルでのニッケル採掘・精錬のプロジェクト。(937億円のマイナス)
→3月末から操業停止を指示されているため、今後も減損を計上する可能性があります。
・期初に配当額を変えない方針を出しているため、株価は変化しなかったが、今後新しい投資が厳しい可能性も

まとめ

今回は、総合商社の2020年度第1四半期決算について解説しましたが、いかがだったでしょうか。

総合商社の決算は「いつ減損を計上するか」によって結果が大きく変わってくるため、長期的なモニタリングが必要かと思います。

今後も伊藤忠が2年連続王者となるのか、住友商事がどこまで回復できるのか期待してみていきたいと思います。

◇筆者ってどんな人?◇
現在新卒2年目の会社員です。
就活期は総合商社や外資系、大手広告代理店を中心に6社から内定をもらうことが出来ました。
この経験を活かし、ココナラで新卒向け就職活動のアドバイザーをやっております。
ESの添削や面接対策など、ご協力できることがありましたら、是非ご連絡ください。
宜しくお願いします!


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