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人生って個人経営の書店みたいですよね


■人生という名の書店

自動ドア、いや、押し開くタイプのガラス戸かもしれません。そこを開ければ、その人の人生のすべてとでもいうべき記録が棚を埋め尽くしています。

店によって趣はまったく違うと思います。オーソドックスな書店のように、整然と本が並べられている店もあれば、神田の古書店のように雑然とビニール紐で縛った全集が天井まで積み上げられているかもしれません。

でも共通するのは、そこにあるすべてがその人の言葉であり、声であり、人生だということです。

あなたは人生を振り返り、誰かをそこに迎え入れようと思ったとき、どんな店を築いていたいでしょうか。

■大学というトンネルを抜けると、私は書店員だった

プロフィールにも書かせていただきましたが、私は前職で書店員でした。本が好きだから書店員、という安易な考えで就職しましたが、かえって本を読まなくなりました。

器用なタチではないので、本=商品(売るもの)という図式が頭の中で成立してしまうと、読書して楽しむもの、という概念が頭から弾かれて出ていってしまったのです。

勿論すんなりはいかず、葛藤はありました。でも、私が好きな本は言い方は悪いですが、売れない類の本ばかりで。頭を趣味と切り離さないと、仕事としてやっていけなかったのです。

なので、本に囲まれた書店員時代よりも、今の方がゆるりと読書を楽しめています。

ちなみに、初任給で買ったのは、バルザックの全集でした。全20数巻。金額にして十数万円。自分で版元に電話して発注をかけ、仕入れて買いました。社割で一割引きだったので、当時はまだ消費税も十パーセントではなかったので、お得感はありました。一万円以上値引きされたわけなので。

しかし最大の問題は、今なお本棚の肥やしになって、読んでいないということです。買って満足してしまいました。勿体ない……。

全集を持っているのはバルザックとホフマンスタールですね。ホフマンスタールは神田の古本街に足繫く通い、山積みになっているものの中からようやく見つけて購入した思い出があります。

■ゴールデンライン

人生という書店づくりに役立つか分かりませんが、書店には(私のいた会社だけかもしれませんが)ゴールデンラインという考え方がありました。
棚の中でも、主にお客様の目線の高さになる場所のことです。ここに売れ筋の本などを面出し(表紙側にして)陳列すると、売り上げがアップする、と上司から口を酸っぱくして教えられました。

要はあなたが売りたいものは何ですか? それが決まっていたら、売れる場所に並べれば自然と売れますよねってことです。

人生であなたの売りたい経験や知識ってありますか?
あればその方は羨ましいです。あとはゴールデンラインに並べてあげるだけですから。

ない方も悲観しなくていいと思います。私もそうですから。
これから見つけていけばいいですし、今あるものの中から、少しでもアピールしたいものを並べておくだけで、誰かが手に取って買ってくれるかもしれません。でも、棚の奥にしまっておいたら、売れる機会はやってこないとおもいませんか?

私は今ゴールデンラインに並べようとしているのは小説です。
私はプロではないので、それが売れ筋というわけでなく、私が売りたいから並べるのです。ひょっとしたら、それが道を切り開くこともあるかもしれませんから。

棚に差したままのあなたの可能性、ゴールデンラインに並べてみませんか?

■声(叫び)

学生時代、授業で朗読する機会がありました。教授から声がいい、君の朗読はずっと聞いていられる。と褒められたり、卒論の発表会の後で級友から進路でアナウンサーを考えてみる気はないの、と声をかけられたり、声を褒められる機会が結構ありました。

先日も音楽のプロの方とやりとりする機会があって、実際にお目にかかったときに「電話で話してすごくいい声だったので、どんな方かとおもいました」とお褒めの言葉をいただいたときには嬉しかったですね。

しかしながら、声がよくても、歌は上手くなく。音域が高めなので、女性ボーカルの曲をよく歌うのですが、採点すると80ちょうどぐらい。男性ボーカルでも同じような結果で。いわゆる「普通」を脱しきれない程度です。原因は分かっています。リズム感の欠如と音程の不安定さです(それを音痴というのではなかろうか)。

でも、カラオケで大きな声を出すのはストレス発散にもなるので、楽しいです。バラードよりもアップテンポな曲の方が楽しいですね。

また、声だけでなく、顔もよければまた別の人生があったかもしれませんが、そうは問屋が卸さず。神様、採点厳しいんじゃないかな、と思ってしまいます。

ただ、声のおかげで書店員時代ラジオインタビューに選ばれるなどといった役得もあったので、何か生かす方向で考えた方がいいのかなーとは思うのですが。

■人生書店(水瀬支店)

まずは一等地の平台に自分の小説をどんと、山積みに積んで。POPも派手にいきたいので何かの賞をとっておきたいですね。

雑誌のコーナーには、私の幼少期から、自分の成長、そして子供たちが成長していく記録をカラー写真たっぷりに載せて。

文庫や文芸書のコーナーは自分の本は勿論、好きな作家の好きな作品を全部詰め込んで。

今はあまり流行っていないですが、カフェを併設して、コーヒーを飲んでゆっくり本を眺められる、そんな書店にしたいですね。

けっしてドラマチックな展開のある店ではないけれど、どこか居心地がよくて、ついつい長居しちゃうんだよな。

来てもらった人にそう言ってもらえる人生書店を目指します。

あなたはどんな人生書店を作りますか?
必ずしも宣言する必要はないと思います。黙々と築いて、気づいたらオープンしている。そんな店があってもいいはずですから。

それでは、みなさんの人生書店の扉をくぐる日を楽しみにしつつ。

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