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「雫姫」と「陽だまりに月」あとがき


■あとがきのまえがき

このところ立て続けに小説ばかり書いているので、読書によるインプットが少なくなっています。今は限られたリソースを食いつぶして小説を書いているようなもので。
それを顕著に感じたのが、「河童狂騒曲」と「陽だまりに月」のどちらも主人公の末路が似通ってしまっているというところです。
銃が持ち出された以上、舞台中でその銃弾は放たれなければなりません。それが主人公に向くというのも物語の型の一つではあるでしょう。

ですが、立て続けに似た型を用いた、それが妙に心の中に棘のように引っかかっていて。

物語が単調になってやしないか、ということを危惧しています。

私の場合プロットは作らず、筆ののるままに任せるので、どうしても自分の中の型、ステレオタイプに偏りがちです。それをずらす作業が私にとっての創作なのですが。ずらせているか、というのをちょっと立ち止まって考えてみて、どうなのかな、と今首を傾げています。

読書記録も最近書いてないですし、そろそろ「読む」ことに重きを置くタイミングになっているのかもしれません。

■「雫姫」について

この作品は、元は私が大学時代に書いて、学内のコンペで入選した作品の設定を改変したものです。
元は姫君が涙を流さないせいで日照りが続き、飢饉になってしまった国に、卑しい身分の若者が現れて物語をし、結果姫君に涙を流させる、というストーリーだったと思います。
思います、というのは、その原稿がデータも製本されたものも手元にないので、確認のしようがないからなのですが、大体あってると思います。
これを姫君の設定を逆転し、涙を流し続ける姫君の、涙を若者が止めるというストーリーに改変したのが「雫姫」です。
元作品は普通の三人称の小説でしたが、今回は語り口調での物語に。そうすると、たとえ相手方のセリフを書かなくても、二人であることがはっきり分かるので、ぼかしながら書くのにはちょうどいいかなと。

■「陽だまりに月」について

この作品はもう連想ゲームでした。不意に「陽だまり」という言葉が頭に浮かんで、「陽だまり」といえば、「海の中で光ってる」←?ここの連想は我ながらよく分からないです。理屈を超越した感性によるものとしか。

ということで、「海の中で何かが光っている場所」を「陽だまり」と呼ぼう。そう決めたら、後は海の中で光っているものとして「太陽石」が登場し、太陽石が必要な状態を設え。海の中から現れるものとして、マーメイドを登場させ、それだけ危険な太陽石なら扱う専門家がいるよな、ということで主人公を太陽石管理者の一人にする。

一つが決まると、こんな感じにとんとんとうまい拍子に内容が決まっていくことが往々にしてあります。

ちなみに管理者の発想は吉田篤弘さんの「電球交換士の憂鬱」がちょうど目に入ったため得た着想です。

主人公のカズヤを最初から悲劇的な結末に帰着させるつもりはありませんでした。でも、問題があって、その問題の解決はできなくて、と追い詰められていったとき、愚直なカズヤは取りうる限り最悪の手段をとるだろうな、と私も思ってしまったのです。
そして彼が管理者の一員であったことも悪く作用しました。

「人魚姫」では、姫の方が王子に恋をして魔法の力で人間になりますが、悲劇的な結末を迎えます。
この作品では人間の男が人魚に恋をして、太陽石という過ぎた力に頼ったがために、悲劇的な結末に辿り着くのです。では、レティシアが最後に見せた激しい感情は何だったのでしょうか。答えは読者の方の胸の内にのみぞあります。

黒須警部はもうちょっと詳細に描写してもよかったかなと反省です。彼は凄腕のスナイパーであり若くして警部に昇り詰めたやり手ですので、ひょっとしたら他の作品でも顔を出すかもしれません。

とまあ、なんだかんだ言っても、作品としては気に入っています。「陽だまり」という設定が好きですね。映像にしても美しいと思います。眩い光が海の中から発して、それがあたかも月光であるかのように見える。描写のしがいのある設定だと思います。

■あとがきのあとがき

こんな感じで、気が向くままに作品にあとがきをつけていきたいなと思います。あとがきで書くことがなかったりすると、書かないこともありますが、気に入った作品とかにはあとがきをつけていこうと思います。ありがたいことに、そうした要望をしてくださる方もいらっしゃるので。

私は他のnoterの方と違って、役立つ情報などを提供できる知識も教養もないので、小説を書くことしかできません。なので、まさに職人のごとく小説を書き上げてみなさんのご覧に供する、それだけを考えていきたいと思っています。

それではまた、「あとがき」でお会いしましょう。

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