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一読の夢~短編小説集~

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ジャンル問わず、全短編をまとめたものです。 更新は不定期。小説を読みたい方はぜひ読んでみてください。
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#短編小説

紙ヒコーキは谷を越えて

 七月三十日と書いた紙ヒコーキを明日に向かって投げた。  草が伸び放題で手入れされていな…

水瀬 文祐
20時間前
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渦を奏でる

 坂道を下って、かたつむりの殻のように渦を巻いた道を抜ける。  そうするとトンネルがあっ…

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青い街

 地面の下には水が埋まっていて、その底には街がある。  水底の街は青く輝いていて、そこに…

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祭囃子

 雨の音にまじって祭囃子の音が聞こえる。  布団から起き上がり、窓を開けるとその先には黒…

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ピリオド

 こん、こん、とキッチンに卵をぶつけて片手で開き割り、フライパンの中に落とす。  油がち…

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息の魚

 黒髪の女性から切符を受け取り、改札ばさみでぱちり、と切り込みを入れて返す。  今日の乗…

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件の如し(第6話)

■これまでの話はこちら■本編6、アキとクロダ  人の体臭と、生ごみが腐った臭い、それから流れ出た汚水で淀んだ川の水の臭い。  クロダは顔を顰めてアキを眺めた。アキは一瞬だけ不快そうな顔をしたものの、すぐに何も感じていないような顔を作ってクロダを一瞥した。クロダはその視線に恥じ入り、俯いて顔を作った。  橋の下には段ボールやビニールシート、それから廃材と思しき木材で作った小屋が林立していた。橋脚に立てかけるようにして、行政が設置したであろう、ゴミの不法投棄や土地の占拠を戒める看

件の如し(第5話)

■これまでの話はこちら■本編5、カクタス  人通りのない暗い裏路地にある、テナントもろく…

水瀬 文祐
2週間前
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件の如し(第4話)

■これまでの話はこちら■本編4、クダン  スマートフォンのアラームで目を覚ますと、時刻表…

水瀬 文祐
2週間前
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件の如し(第3話)

■これまでの話はこちら■本編3、アキとクロダ  夜明けの街を二人の女が歩いている。 ビルと…

水瀬 文祐
2週間前
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件の如し(第2話)

■これまでの話はこちら■本編2、ガーネット  ホテルの一室で、女は男と向かい合って座って…

水瀬 文祐
3週間前
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件の如し(第1話)

■あらすじ 探偵のクダンは、ある日死んだはずの女の捜索依頼を受ける。怪しみながらも調査を…

水瀬 文祐
3週間前
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ロールド・オムレット・ストラータ(第3話)

■前回までの話はこちら■本編 父の七回忌で故郷に帰った。僕が今暮らしている町よりもずっと…

水瀬 文祐
3週間前
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ロールド・オムレット・ストラータ(第2話)

■前回の話はこちら■本編 ここに一枚のコインがある。  見慣れないコインだって?  それはいいのさ。重要なのは、私がコインを持っているということ。  そのコインを、こうして右手に握ろう。  確かに握っただろう?  だがこうして手に息を吹きかけると、  ほらごらん。コインは右手から消え去った。  なになに、ただの手品だって。  そうだな。手品ならタネも仕掛けもある。  現実の手段をもって虚構を現実とする術、それを手品と呼ぶ。  なら、ただ単に虚構を現実にする術を何と言うか知って