フォローしませんか?
シェア
営業所の喫煙所で一人、煙草をふかすこともなく、缶コーヒーを飲んでいた。営業所に備え付け…
■前回までの話はこちら■本編 大薙刀を携えた巫女チハヤの顔を、篝火の揺らめく炎が淡く照ら…
■別の姉妹の話はこちら■本編 こんな晴れた日は、散歩をするにうってつけですな、と老人は杖…
■前回のお話はこちら■本編 私は再び老人の家の戸口に立っていた。 相変わらずその住まい…
■前回のお話はこちら■本編 精霊の森のさらに奥にある霊峰、ストラ山。山の民の初代酋長の名…
その家を選んだのはほんの偶然だった。 私はけちな空き巣だ。かといって、元々盗みで生計…
■前編はこちらから■後編 母が死んだとき、世界はまだ混沌に包まれてはいなかった。 葬儀は大人が取り仕切っていたから、グレンはほとんど覚えていない。覚えているのは、ただ泣きじゃくって母の棺にとりついていたことと、もしかしたら父が来てくれるかもしれないという期待だけだった。 グレンが物心ついたとき、既に父は家にいなかった。母からは父は偉い身分なので忙しいのだとずっと聞かされていた。でも、どれだけ忙しかろうとも、母の葬儀に顔を出さないはずはない、とグレンは信じていて、それを周り
エリス・如月は殺すな。生け捕りにしろ。 教官は命令の最後にそう付け加えた。それを聞い…
男は旅人だった。旅の目的がなんだったのか忘れるぐらい、彼は旅をした。もはや旅をすること…
緑のフェンスをよじ登り、くるりと反対側に回ると飛び降りた。 こんなことならスカートじ…
ナルミは街の失せ物管理事務所で働いている。 週四日勤務。時間は八時から十六時まで。土…
■note10周年を記念した、特別小説を「10」という数字、それから「note」という言葉をキーワー…
治癒者(ヒーラー)なんて必要ないから! 茜は上等なカシミアのスーツを着た、一見セール…
当たり前に明日がくる。そう信じて、いや、きっとそんなこと考えもせず、僕は眠りについた。そして目覚めたら、明日はきた。きたけれど、その明日で僕は、すべての記憶を失っていた。 ベッドから起き上がってまず感じたのは、記憶の有無じゃない。これが自分の体なのか、という自意識の歪み。他人の器の中にするりと入り込んでしまったような羞恥と、申し訳なさ。それが僕の意識を支配していた。 慌てて立ち上がり、鏡を探して、バスルームはどっちだ、ということが分からない。手当たり次第に扉を開けて鏡の