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日常系・現代物小説集

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何気ない日常を描いたもの、現代を舞台にした小説をまとめています。
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#短編小説

ゆうぐれあさひ~after story~

■これまでの話はこちら■本編 家に帰ると、久しぶりに書置きがされてあった。母からだ。  …

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月を捨てる

今回の小説は下記のとおり、クロサキナオさんの企画に則って書いたものになります。 6月の誕生…

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借物の外套

 私は本屋のアルバイトだった。しがない本屋のしがない学生アルバイト。  大学でも地味でぱ…

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ポートレート

 笛が鳴る。  彼女の手が、足が躍動して、一迅のオレンジの風のように走り抜けていく。その…

水瀬 文祐
3週間前
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ある日の夢~海水浴~

■まえがき今回の短編はタイトルの通り、ある日見た私の夢を元にした小説です。 以前アップし…

水瀬 文祐
3週間前
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ゆうぐれあさひ~SIDEゲーテさん~

■前回のお話はこちら■本編 書店員の朝は早い。十時の開店に備えて、それまでにある程度の新…

水瀬 文祐
3週間前
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麻薬読書者

 男は後ろをやけに気にしながら歩き、ある小路の入り口に立つと、殊更に警戒心を剝き出しにし、周囲を窺って見ている者がいないことを確かめて小路に入り込んだ。  うら寂しい小路は、夜の闇を凝縮したような影をそちこちに抱え、降りしきる雨の冷たさと臭いが充満していた。人気はないのに何かの気配で満ちていた。  切れかけたネオンの看板がじりじりと音をたてて明滅し、風が吹くと居酒屋の古い引き戸ががたがたと鳴る。看板の明かりの消えた店からも、人の笑い声が響いてくる。だが、響くのは笑い声だけでは

スパイ・オア・ストーリーテラー

 病室の窓から外を眺める。青空に無数の魚影のような雲が泳いでいる。  午後のロードショー…

水瀬 文祐
1か月前
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空色のダイヤモンド

 世界には空に穴の空く場所があって、その穴の中には空色をしたダイヤモンドが眠っている。 …

水瀬 文祐
1か月前
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波間に揺れる

 波打ち際に貝殻が転がっていた。押し寄せては引く波に弄ばれ、ころころ、ころころと転がった…

水瀬 文祐
1か月前
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白露に映るものは

 顧問の黒田しづねが文芸部の部室を覗き込むと、鷺橋美織だけがいて、彼女は机や椅子を雑巾で…

水瀬 文祐
1か月前
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カメリア~紅蓮~

■前回までのお話はこちら■本編「椿、着替え終わったか」  ノックもせずに扉が開けられ、そ…

水瀬 文祐
1か月前
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写真小説家~小説家の追憶~

■前回までのお話はこちら■本編 そのホールは古びていた。あちこちの壁に雨だれが見られたし…

水瀬 文祐
1か月前
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写真小説家~英雄の肖像~

■前回のお話はこちら■本編 牧場の中は寂れていた。日曜日の、しかもこんなにも天気のいい昼間だというのに、家族連れの客がちらほら見えるだけで、閑散としていた。  遊園地のような乗り物やバッティングセンター、乗馬体験など、かつての賑わいの残影を想起させるものが、そこかしこに残ってはいた。色あせた看板、閉店して物置になっているレストラン、打ち捨てられたゴーカート。  私は売店で牧場のウリのソフトクリームを買うと、ベンチに腰掛けてまばらな人並を眺めながらそれを舐めた。濃厚でありながら