じっくり煮込んだものはウマい。
「教養のある人間になりなさい!!」
よく言われるセリフです。
いやいや、教養ってなんやねん・・・
そもそも、そんなもの必要なモノなんか?
今の時代、Googleのホームページを開いて「検索」ボタンを押せば、どんな情報でも無料で簡単に手に入るじゃないか。図書館の価値はどんどん下がっていき、「昔からの書物」なんてものはめんどくさくて読む気がするわけない。なにしろ私たちは忙しいんだ。毎日いろんなものに追われて生活してるんだ。
これだけたくさんの仕事がある世の中だ。何かに対する知識は、お金をもらってその分野を専門に研究している人から教えてもらえばいい。世の中分業でできているのだ。俺ができることは俺がやる。その代わり、知識をかみ砕いてくれる誰かに、俺の情報の供給先を頼ればいいのさ。
たしかに。
それにしても、つくづくスゲエ時代だな、と思います
無料で誰でも知識を得ることができるようになりました。インターネット一つ開けば、昔は「士業」の独占知識だった医学や法学などの分野まで、事細かな解説のついたホームページがワンサカあります。
知識を持っていることに価値がなくなりました。何かを知っていたとしても、「それ、調べりゃでてくるじゃん」と言われれば口をつぐんで頷かざるを得ない。
そこで、価値のあるものは「知識」よりもむしろ「経験」になってきました。
経験だけはなかなかインターネットに落ちてません。高校へ行き、大学へ行き、会社に就職し・・・などと、いわゆる一般的な生き方をしている大多数の方は、自分のできないような生活をしている方の「経験」に大いに興味を持ち、それを応援します。
売れているYouTuberたちは、普通はなかなかできないようなことを画面の中でやってのけ、それによって人気を博してきました。
大学入試でさえその傾向が強まっているみたいです。今までは公平性の権化みたいなセンター試験の点数が重視されていたのに、最近では「英語留学」とか、「ボランティア活動」とかの経験が重要視されているみたいです。
この流れは止まることはないでしょう。
すると、こんな声が聞こえてきそうです。
「勉強したって無駄じゃないか!!」
「俺が今苦労してあくせく覚えている刑法の内容やら、薬の作用機序やらは、すでにスマホ一つあれば誰でも知れる内容じゃないか!それを知っていることに意味はないのだったら、それを苦労して覚えることに意味はないじゃないか!大量の物事を暗記するのにどれだけのエネルギーと時間が必要だと思っているんだ??そんなもんUSBに任せちまえ!」
なんでも効率化、合理化するのが良しとされている昨今です。このような考えを持つ方はたくさんいらっしゃると思います。
しかし、ちょっと待ってほしいのです。
勉強すると言うことは、何かをひたすら詰め込む、ということでは決してないということを思い出してほしいのです。
日常の生活に直接役に立たないような勉強こそ、将来、君たちの人格を完成させるのだ。何も自分の知識を誇る必要はない。勉強して、それから、けろりと忘れてもいいんだ。学問なんて、覚えると同時に忘れてしまってもいいものなんだ。けれども、全部忘れてしまっても、その勉強の訓練の底に一つかみの砂金が残っているものだ。これだ。これが貴いのだ。(太宰治「正義と微笑」より引用)
太宰のすごいところは、これだけの深い内容を平易な言葉で表すことができることですね。
つまり。
何かの「情報」があるとすれば、そこには必ず理路整然とした「理屈」なり、「背景」があります。さっき「刑法」やら「薬の作用機序」やらの例を出しましたが、GHQを含めた日本の法律を起草した連中がいったい何を考えてそのような法律を設定したのか、薬ならばいったいどのような物質が生体のどのような部分に作用して効果を表わすのか、すべて含めて「おぼろげに」理解するのです。これだ!これが貴いのだ!
なんていえばいいんだろう?と聞かれた時に答えられるかどうか。
過去にその情報を発見した人、開発した人たちがいったい何を考えてそれを導き出したのか?数学ならば公式を暗記するだけではなく、その公式がどのように導き出されたのかまでしっかりと理解すること。これこそが大切なのです。人間の脳とコンピューターとで競い合った場合、唯一勝てるのはここだけです。つまり、何かを考える力です。何かを独自に判断する力、一般的に言われていることに対して、「ちょっと待てい!」と言える力です。
だからこそ。。
「遅い」ことをもうちょい見直してあげてもいいのではないでしょうか。じっくりやることを大切にした方がいいのではないでしょうか。何でも即席の知識に頼っていては、私たちはますますコンピューターに近づいていくだけです。与えられた情報を鵜呑みにしてなんでも活用しようとしてしまうのは危険です。その情報がどのようなものなのかを自分で考え、判断する力は、きっと「遅い」勉強でしか養うことはできないのではないでしょうか。
今日もお読みいただきありがとうございます。皆様の日曜が素敵なものになりますように。
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