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トーマス・マン「墓地へ行く道」から読む、不幸に捕らわれた人間の末路

ーー私たちが他人の幸福を願ったり、他人の心を思いやることができるとき、いったいそれは何のおかげでできているのだろう?私たちの性格がいいから?違う。何よりもまず、私たちが幸せだからだ。

人間は自分が幸福でない限り、他人を幸福にすることができない。そして、幸福な人間のもとにすべては集まっていく。幸福はさらなる幸福を呼び、不幸はさらなる不幸を呼ぶ。

この世の不条理。トーマス・マンの蒼き繊細な眼が、誰にも顧みられるはずのない一人の不幸な老人の上に注ぐ。短編「墓地へ行く道」をお届けしますーーー


汚い老人

墓地へ行く道は、ずっと国道に沿って走っていた。その目的地、つまり墓地に達するまで、ちっとも国道を離れずに走っているのである。この道には砂利があっさりと巻いているので、踏み心地の良い歩道のような感じになっている。

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