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皇帝の薬膳妃 紅き棗と再会の約束/あなただけにつくるオーダーメイド料理


こんばんは。Book Conseillerの都築です。

今回紹介する作品は、思いがけず後宮に入ることになってしまった、薬膳の知識をもつ17歳の少女の物語です。

伍尭國(ごぎょうこく)という日本風の架空の世界を舞台にしたファンタジーです。  


ジャンル: 和風ファンタジー、後宮小説、
      恋愛小説
著者:   尾道理子
出版社:  KADOKAWA(角川文庫‎‎ )
文庫:   288ページ

『「鼓濤(ことう)。そなたを玄武の一の姫として皇帝陛下に輿入れさせることとする」
御簾の向こうから突然告げられた言葉に、董胡(とうこ)は呆然とした。何かの間違いだと思ったのも当然だ。すべて間違っていた。何一つ正しいことはない。』
皇帝の薬膳妃 紅き棗と再会の約束”より一部抜粋


主人公の董胡(とうこ)は、伍尭國の王都の北の玄武という領地のはずれに住んでいました。

この世界では医者(薬膳師)は男性しかなることができず、董胡は男性のふりをして何とか医師免許を取ることができました。
ところが、思わぬ出生の秘密が明らかになり、皇帝に輿入れさせられることになってしまいます。

更に嫁ぎ先の皇帝は、玄武の領主である玄武公の策略により失脚させられつつありました。
董胡は持ち前の行動力と医学(薬膳師)の知識を活かして、皇帝の窮地を助けていくことになります。

後宮に入る主人公の小説は多くありますが、題名にある「薬膳」を物語のなかに取り込んでいるところが面白いと思いました。

薬膳とは、
『季節や食べる人の体調に合わせ、食材や生薬(漢方薬の原料)を組み合わせた料理』
全日本民主医療機関連合会 くすりの話 192 薬膳とは”より

特別なものばかりではなく、普段私たちが食べているものの組み合わせでもでき、意外と身近なもののようです。

董胡の強みのひとつは、この薬膳の知識と、人が放つ味覚の色が五色の光となって見える特別な能力です。
その力を組み合わせで個々の人に合わせたおいしい薬膳料理をつくることができます。その特技は人を助け、慣れない場所で仲間との打ち解けるきっかけにもなっていきます。


董胡のもうひとつの強みは、思い切りのよい行動力。
薬膳医になるため男装することや、後宮でも自分から情報を得るため行動したり、とにかく前向きでパワフルです。

主人公たちの前に立ちはだかる玄武公がずる賢い悪役なのもあり、主人公の清々(すがすが)しさがより引き立っていました。


今回の物語は主要な人物のことや、それに関わる出来事に焦点を当てているようなので、全体の”序章”に当たる部分のようです。
主人公以外の輿入れした姫たちも謎のままで、今後物語が進むに従って明らかになると思われます。
その姫たちも主人公のように何か訳ありな様子です。
皇帝周りの不穏な動きとどう関係していくか、楽しみでもあります。

全体のボリュームは中くらいで、難しい表現などもなく、読みやすい文章だと思います。


和風のファンタジーが好きな方、薬膳に興味がある方におすすめの作品です。


☆5点満点中

読みやすさ ☆☆☆
ストーリーの重厚度 ☆☆☆
和風ファンタジー ☆☆☆☆
後宮冒険活劇 ☆☆☆
恋愛 ☆☆☆



◇この作品が好きな方はこちらもおすすめ◇
月の輝く夜に/ざ・ちぇんじ! (コバルト文庫) 

ざ・ちぇんじは平安時代を舞台にした姉弟(してい=女男のきょうだい)の入れ替わりでの、事件や恋愛模様が繰り広げられる物語です。
男装する女性が活躍する物語が読みたい方にお勧めです。
漫画版もあるのでそちらもぜひ。
この文庫では、他の読み切り作品も一緒に収載されています。


皆様と本との素敵な出会いがありますように。

都築都でした。

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