廃校に住んじゃった!〜長期滞在メンバーストーリーズ〜倉岡花さん編
福岡県田川市にある廃校利活用施設いいかねPalette。「なんでもできる世界をつくる」をキャッチフレーズに音楽スタジオや宿泊など、様々なことができる施設として運営しています。
いいかねPaletteにはワーケーションなどで利用できる宿泊プランのほかに、「長期滞在プラン」というものがあり、現在、この施設の中には約二十名が暮らしています。
この記事では「長期滞在プラン」でいいかねPaletteに暮らす人たちがどんな理由でここにやってきて、どんな暮らしをしているのか、彼ら彼女らにインタビューすることで、その実態を探っていきます。
長期滞在者:倉岡花さん
聞き手:タカキユウト
福岡県の学校に赴任が決まり田川へ
ー倉岡さんは、いいかねPaletteで暮らしはじめて何年経ちますか?
3年近く経ちますね。大学卒業前、NPO法人Teach For Japan(以下「TFJ」といいます。)を通じて、飯塚市の学校へ赴任することが決まり、卒業後、4月から福岡で暮らすことになりました。
福岡に来て、住む場所を探す際、いいかねPaletteの長期滞在プランを知り、ここだとカバン一つで暮らすことができそうだと思い、入居を決めました。
大学時代は寮で暮らしていたので、一人暮らしは少しハードルが高いと感じて、一緒に家を探してくれた両親も私の一人暮らしを心配していたので、ちょうどいいなと思ったことが、その時に入居を決めた理由です。
ーそれから3年間も経っていますが、長く暮らすようになった理由はありますか?
最初は、一人暮らしよりもハードルが低く、寮での暮らしに近いと考えて入居を決めたのですが、ここで暮らし始めてからは、ここでの暮らしそのものが好きになっていきました。
赴任当初、学校現場での仕事は分からないことが多く、体力的にも精神的にも疲れてしまっていました。
でも、いいかねPaletteに帰って、他の長期滞在メンバーと一緒にキッチンでご飯を食べると、すごく元気をもらえて、明日もまた頑張ろうという気持ちになりました。今でも「ここでみんなとご飯を食べること」がつらい時の心の支えになっていたりしますね。
ここでの経験が教育の現場に活かせる
ー教育のお仕事をする上でここに住んでよかったことはありますか?
先生の仲間がいること、そして、先生以外の仲間がいることですね。特に、先生以外の仲間と深く関われることは、教育の現場にも活かせています。
例えば、私が社会科を教えていて、物流のことを説明する時、実際に物流の現場で働いている長期滞在の仲間の話をリアリティをもって生徒に伝えることができます。
先生をしているだけでは出会えないような人たちと一緒に暮らし、その人たちの話を直接的に聞くことができるので、視野を広げることができていると感じます。
知らない世界に踏み込むキッカケ
ー仕事以外でここに住んでよかったことはありますか?
色々なことに誘ってもらえることですね。例えば、ここで暮らしている仲間に相撲や落語が好きな人がいるのですが、相撲観戦や寄席に誘ってくれたりします。
正直、ここで暮らしてなかったら、そのような場所には一生行くことはなかったかもしれません。ここには様々な人がいて、趣味や特技も様々。だから、ここに来て、趣味や特技が増えました。
もともとギターを弾いていたのですが、ここに来て初めてバンドにも参加しましたし、よくよく考えると、ここで色んな経験をしています。
ーそうなんですね。でも様々な人がいらっしゃる分、トラブルも多そうですが。
人間関係のトラブルは長期滞在だけではなく、どんなところにもあると思います。でも、ここで暮らす人たちの多くは、良い意味で慣れているというか、干渉しすぎない距離を保っているし、人間関係のトラブルが起こっても、ここでの経験の長い人たちが、割りとすぐに解決している印象です。
個人的には、人間模様を観察できるのは、楽しいんですよね。それぞれ価値観が違うし、自分の想いを持っています。それらを垣間見れることは、一緒に暮らしているからこそできる経験です。もちろん、トラブルは嫌ですけどね。
自分の価値観や視野を広げるチャンス
ーどんな人に長期滞在プランをオススメしますか?
人と話すことが好きな人にオススメです。いいかねPaletteには長期滞在者のほかにも様々な人たちがやってきます。
話を聞くと、みんな興味深いし、話していく中で、自分の価値観や視野が広がる感じがしますね。休日は、仲の良いメンバーと旅行に行ったり、キャンプに行ったりするのですが、ここで暮らしていると、まるで旅をしているみたいに様々な人に出会うことができます。
私のように長く滞在する人もいれば、すぐに離れていく人もいて、その時々の出会いや会話を楽しむことができれば、様々な場所を実際に旅行しているように感じるかもしれません。
ー新しくここで暮らそうと思っている方にメッセージがあればお願いします。
長期滞在で暮らしている人たちは、寛容な人ばかりなので安心して来てほしいです。仕事の面で言うと、私はここに暮らすことで、先生として、子どもたちに与えられることが増えたと感じています。
ここで様々な人と出会ったことによって、私は自身の価値観や視野が広がったと感じています。おそらく、それは私が先生として、子どもたちに関わる上で、とても大切なことのような気がしています。
これからも、人との出会いや会話を大切にして、価値観や視野を広げていきたいので、新しい人たちに、ぜひ来てほしいと思っています。