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騙し、騙され -その5 インド・リキシャー編-

前回までのあらすじ
反乱軍に殺された父親の仇を打つために銀河帝国軍に入隊したサミュエル。主要な拠点ルマドン星に配属される。やがてその星で自分の出生に隠された大きな秘密に気づき…。

-インド・リキシャー編-
インドと言えば、このnoteのタイトルにふさわしい土地とお思いの方も多いだろう。
期待通り、インドでも騙そうとする人は少なくない。
ただ、あまりにも手口が露骨すぎて発展しないものばかりだったので、一つのエピソードだけ。

インドに行くと人生観変わるよ。
よく聞くフレーズだ。
色々と環境が変わっていく中、色々と考える事も多かった。
できるなら、人生観を変えてみたい、いやどのように変わるのか試してみたかった。
2週間ほどの休みを取りインドに行くことに決めた。
往復の飛行機と適当な宿だけ取った。
ビビリな性格なので空港から宿までの送迎だけは付けた。

宿には数人の日本人がいた。
彼らもまたインドに行こうと思うような種類の人たちなのでどこかおかしな人ばかりだがそれなりに意気投合した。もちろん、どこかおかしな人というのには自分も含めている。
日々の行動はそれぞれの目的に沿って別々だったが、夜にライトアップしている寺院があるという情報に食いつき、みんなで行ってみようと盛り上がった。
旅慣れている人もいたが、やはり夜のインドを一人で行動するのは怖いというか危険も伴うようだ。
当然、私もみんなと行けるのなら安心だし、その寺院も見てみたかったので誘いに乗った。
予定を合わせ、宿の近くにいた適当なリキシャを捕まえて乗り込む。
お寺の名前を告げると、リキシャは走り出す。
インドの夜は意外と暗いのだが、テンションの上がった私たちはワイワイやりながら運転手に任せ寺に向かう。
5分くらい走ると、何やらお店の前にリキシャを横付けに。
運転手はリキシャから降りその店に入っていく。

「ここが寺か?」

「いやトイレ休憩じゃない?」

何が起こったのか分からないまま、私たちはリキシャから降りずに運転手の帰りを待っていた。
比較的すぐに運転手が戻ってきた。

「ヤァ、みんな。ここは、いい店だから服を買うといい」

私たち全員、豆鉄砲を喰らった鳩のような顔をしていたと思う。

「え?いや、寺は?」

「寺は今日はライトアップやっていない。だからここで服を買うといい」

寺に行きたいという私たちをなぜ服屋に連れてきたのか。
理解に苦しむがここはインドだ。
何が起こってもおかしくない土地だ。
これが人生観を変える、常識を覆すという感覚なのか。
なるほど、なるほど。
なんとなく自分の中で落とし所を探っていたのだが、他のみんなは怒っていた。

「私たちは寺に行きたいと言った。とにかく連れていけ」

「いや、今日はやっていないんだってば」

「ライトアップしていなくてもいい。寺に行け」

「ここはいい店だから買ったほうがいい」

「とにかく寺に行け。話はそれからだ」

「まず服を見て行けよ」

ここまで勧められると、本当に良い服があるのではないかという気すらしてきた。
でも、ここまで必死なのはお店からのキックバック目当てなのは痛いほど伝わってきたが、特に服に困ってはいなかった。

「寺に連れていけ!前を通るだけでもいい」

仲間もひかない。
やがて周りからリキシャ仲間のインド人がわらわらと集まりワーワー言い始める。
インド人は数が増えると更にヒートアップする。

インド人は嫌いではない。
何なら文化も好きだ。
この時も含めて結局4回インドへは旅行している。
インドカレーはしょっちゅう食べに行くし、自分でスパイス配合を研究するくらい好きだ。
ただ、ヒートアップしたインド人は覆水盆に返らずだ。
面倒臭くなった。
私だけでなく、他の日本人全ても面倒臭くなっていた。

「もういい!帰ろう」

みんなで通ってきた道を記憶をたどり歩いていく。リキシャの運転手数人は、歩いて後をついてきて何やらワーワー言っている。全員ガン無視だ。
そのうちいなくなったと思ったら、私たちをのせた運転手が自分のリキシャに乗って、私たちが歩く速度に合わせてリキシャで何か言いながら後をついてくる。
店までの運賃を払えと言っていたのか、寺まで連れていくよと言っていたのか、もう私たちも聞く耳を持たない。
とにかく、気分を害されたので全部無視して宿まで帰った。

お金こそ取られなかったが、時間とエネルギーはかなり消費した。
宿に帰った後はみんな口数少なめでそれぞれの部屋に帰っていった。

あの場面に一人だったらどうなっていたか。
流石にあの人数分の飴はもっていない。
束になったインド人の迫力と言ったら一人ひとりの声も態度も大きいから結構怖いのだ。


エネルギーを大量消費したからか、翌日から私はお腹を壊した。


結論
インドカレーはおいしいし、食べると元気を得られるよ。
インド人のような元気を。

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