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ポンコツストーリー6 -紙を食べる「やぎ」ではない何か-

今回は高校時代のお話。


アート系の科がある高校に入学した。
私の入った科は、学年で1クラスしかない特殊な科ではあったものの男女比はほぼ半々だった。
高校といえば、ドラマやアニメの学園もののように色々な事が起こると期待するものだと思うのだが、確かに色々な事が起こりはしたが期待通りではなく、うまく行かないのがポンコツな私の人生だ。

入学して数日目のこと。
アート系ということもあり、制服はなく服装は自由、当然髪型も髪の色も自由という高校だ。
もちろん、見た目普通の子もいるが大半は風貌も、服装も癖が強い人が多かった。
入学式の数日後から女子生徒の髪の色は赤、青、紫と紫陽花のような華やかな、色とりどりの世界が広がった。
これだけでも中学時代とは大きく違うのだが、その直後に見た光景が衝撃だった。

「おいしいよね」

女子高生特有のキャピキャピした黄色い声ではなく、淀んだぬかるみの中から聞こえるような低い声が後ろの席から聞こえてきた。
休み時間だし、何か食べているんだろうな、何食べてるんだろ?
そんな気持ちで軽く振り返ってみた。

「やっぱりコピー紙より、わら半紙のほうがおいしいよね」

!!!!!?????

目線の先には、さっき配られたプリントをちぎって食べる赤髪と紫髪の女子生徒。
ここで初めて気づく。

「普通科」ではないということはこういうことなのか!

食べることが大好きな私だが、さすがに紙を食べたことはない。
いや、でも私が知らないだけで実は一般的なことなのか?

よくある「16Personalities」の性格診断テストでは、「仲介者」属性の私だ。
この性格属性の説明に、次のような一文がある。

「真の理想主義者で、極悪人や最悪の出来事の中にさえも、常にわずかな善を見い出し、物事をより良くするための方法を模索しています」

どのような状況でも、自分なりの「善」を見出そうとし、相手を理解しようとする傾向がある。
自分と違う意見や見方も、他者を受け入れることを「善」とし、自己解釈によって受け入れる事ができる比較的柔軟な私だ。
この状況でも、この傾向が働く。

便秘予防には繊維質を摂るのが良いと聞いたことがあるし、紙って繊維でできているし、何よりわら半紙って確かに繊維質の集まりな感じがする。
ひょっとしたら、自分が知らないだけでこうやって繊維質を摂るという方法があるのかもしれない。

「仲介者」の思考パターンはこのようなものだ。

しかし、近くにいた男子生徒もそれに気づく。

「うわっ!紙食ってる。ヤギかよ」

そうか。
やはり、紙を食べることは一般的ではないのか。
「仲介者」の「善」はいとも簡単に破壊された。

それ以降、私たちはこの女子たちのことを「やぎ」と呼ぶようになった。
そして、3年間この「やぎ」の方々とは口をきく機会もなかった。

ここは、風貌だけでなく行動までも普通ではない世界。
とんでもない異世界に迷い込んでしまったと気付いた私だった。

というか、こうなると自分はポンコツではないのではないか、あるいはポンコツの中でもまだマシな方、つまり下の上なのではないかと様々な感情が浮かんでは消えていくのだが、後になって種類の違うポンコツというだけで、私がポンコツなことには変わりないという現実に気づくのだがそれはまた別の話。

「やぎ」と言えば、「あらしのよるに」という映画はいい話ですね。

と、何の脈略もなく無理やり映画の話を持ってこようとして滑っている辺りもポンコツなのである。

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