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ひとり暮らし猫飼いが長期入院することになったらどうするか

我輩は四十路である。結婚は(まだ)してない。子どもはいないが、子どもと同じくらい大切な、愛する猫と暮らしている。

猫と四十路独身女の濃密なるニャンニャンライフ。周りが何と言おうと幸せです。しかし飼い主が突然白血病になり緊急で長期入院することになったら、そうも言っていられません。

昨年11月22日、会社の健康診断で再検査が出ていたので、特に体調が悪かったわけでもないけど血液検査を受けに行ったら急性骨髄性白血病であると診断され、即日緊急入院に。

このまま入院だと通告する先生に「猫がいるので一度うちに帰りたい」と主張しましたが「いつ脳内出血するかも分からない状況なので帰したくないです」と、医者として冷静なる回答。しかし猫飼いとしての思いが溢れ「ひとり暮らしなので猫が死にます…」と静かに言ったら、医者と言えども先生も人間。「まぁそうですね、骨髄検査が済んだら1時間は動けないけど、動けるようになったら一度帰宅していいので1時間以内に病院に戻ってきてください」と走れメロス的なお許しを得ました。

いつの間にやら外は雨。タクシーが拾えない。さらに言うと、その日の内にやらないといけない仕事があって、しくじると1,000万円をみすみす逃すことになる仕事だったので、電話で会社の後輩に連絡を取り、遠隔で仕事を進めつつ、雨の中、必死でタクシーを探す。今思い出しても切ないです。

何とかタクシーをつかまえて帰宅。黙々と3日分の着替え、タオル、洗面用具、化粧品、お茶類、本、充電器をバッグに詰め込む。4年前に子宮筋腫の手術で入院した際の経験を活かし、その時の残りの、ペットボトルにさせるストローも入れましたが、無菌状態を維持しないといけない白血病にとっては使えないシロモノでした泣(白血病においては、ペットボトルの水はコップに注いで飲む。開栓したら冷蔵庫保存で24時間以内に飲みきる。というルール)。

猫のごはんを1日分お皿に入れ、飲み水を換え、トイレをきれいにして、ひとまず丸1日は凌げる状態にしました。うちに戻るタクシーの車中から、近所の猫友に電話して「詳しい説明はまたするけども、突然入院することになっちゃって、うちの鍵を渡すから明日の夜にでもごはんとトイレのことをしてほしい」とSOSを出し、快諾をもらっていたのです。持つべきものは近所の猫友。仕事中なのに電話に出てくれて、しかも状況をすぐに飲み込んでくれて本当にありがとう。

夕闇が迫り、暗くなっていく部屋で、いつもと変わらずかわいい愛猫を撫でながら「1ヶ月入院って言われたんだけど、2〜3週間で戻ってくるね」と全く何の根拠もない声がけをし、でも心の中ではもっと長い間会えなくなるのかもしれないという思いもあり、スマホに愛猫の撫でられてる姿を大事に収めました。お名残惜しいけどメロス行かなきゃ…先生に怒られちゃう。名残を振り切って部屋を出ました。

外はまだ雨。でも傘は持たない。入院の邪魔になりそうだったから。濡れながらタクシーを探す自分に多少の憐憫を感じつつも、何とかタクシーを拾って病院にチェックイン。

翌日は猫友にお世話してもらい、翌々日には田舎から両親が病気の説明を聞きに来ることになったので、4年前の入院時に、うちに住み込んで嫌々猫の世話をしてくれた猫嫌いの母親(70代半ば)にまたしても猫のお世話をお願いしました。据え付けていたペットカメラで愛猫のかわいらしい様子をスマホで覗き見しつつ病室でニヤニヤしていました。

しかしいつまでニヤニヤしていられるものでもありません。入院は半年に及ぶ長丁場だと、入院した日に宣告されたのです。その間に母も田舎に帰ってしまうし、何より猫嫌い。誰か預かり手を探さねばなりません。

猫を飼ったことがある、あるいは今飼っている人で近くに住んでいる人という条件で考えると自然と候補は限られています。条件に合っていても「2匹のお世話をする余裕はなさそうだな…」とか「お願いできるほどの関柄ではないかな…」とか、やはり人の子を預かるような負担の大きい依頼なので、おいそれとは頼めません。

その中で選抜して連絡した3人の方々には「最近飼い始めた犬が嫉妬深くて…」とか「預かりたいけどマンションがペット不可なので…」とか「大家さんが猫嫌いで…」などと前向きかつ真摯に考えてくださった結果の丁寧なお断りをいただき、私は軽く途方に暮れました。入院してから自分のことについて涙を流したりはしていなかったのですが、猫の行く末を思うたびに泣いていました。

それから程なくある人が連絡をくれました。「ぼんちゃん(うちの猫)の預かり先は見つかりましたか?誰もいなかったら言ってくださいね。」と。

いや、神様かと思いました。そこのおうちにはすでに猫が2匹いるので勝手に「無理だろうなぁ」と諦めていたのです。なのに自ら聞いてきてくれるなんて!!感謝感激!!

そうして愛猫は程なくお引越し。猫を飼い慣れた人で、うちの子だけ別の部屋に隔離してくれて、少しずつ慣らそうとしてくれました。それでも環境の変化に弱いのがお猫様。3日間は水も飲まず、1週間ごはんも食べませんでした。

「今日ごはんを食べなかったらさすがに病院に連れて行ってもらおう」と思っていた日、預かってくれている友人にお願いして愛猫とテレビ電話をしました。「ぼんちゃん、ごはん食べようかー」などと40〜50分かけて話をして、通話中にカリカリを仕方なく一粒食べてくれましたが、それ以上は食べませんでした。しかし通話終了から30分後「ぼんちゃんがごはんをたいらげました!」とLINEが来て歓喜!なんちゅう賢い子や!!

猫ってよくわかってるんですよね、人の言ってること。わからないフリしてるだけで、本当は全部理解してるんじゃないかなと思うほど。

その後、なかなか先住猫さんたちと仲良くなれなくて悩んでいたときも、テレビ電話で「ぼんちゃん、仲良くしてください」と声をかけたら、おもむろに隣の部屋に行き、先住猫さんたちの傍にちょこんと座りました。なんちゅう賢い子や!!!

そんなわけで、愛猫自慢はこれくらいにして、ひとり暮らしの猫飼いの皆さん(猫のみならず)には万が一の飼い主不測の事態に備えておくことをお勧めいたします。

・信頼できる猫友を(できれば複数人)作っておくこと。

・うちの子ノートを作っておくこと(愛猫の性格や、行きつけの病院、病歴、ごはん、好きな遊び方、嫌がること等が記載されたノート)←もう売ってないかもしれませんがダイソーに売ってます、その名も「うちの子ノート」。2021年12月の時点では品薄ながら販売していました。

愛するニャンコのために!

そして今の私の一番の治療のモチベーションは愛猫です。また一緒に暮らせる日を楽しみに治療から逃げずに前進するのであります。ニャンコの力は偉大なり


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