目の上の子分
〔解説〕
正しくは「目上の子分」という。いつの頃からか「目の上の瘤(こぶ)」と混同され、間違ったままひとり歩きするようになったと思われる。
「目上の子分」は、自分よりも年齢が下でありながら、自分の上司として存在している人物のことをいう。
たとえば、学生時代は自分の後輩であり、舎弟のような関係だった人物が、後から偶然同じ会社に入社し、数年後には係長の自分に追いつき、ついには追い抜いて課長になってしまったというようなケースである。
〔さらに解説〕
小規模企業や個人経営などの会社はともかく、多くの企業は能力や実績で社員を評価する。
それによって「自分より年下の上司」が出現することもよくある。逆に、先輩を追い越してしまった後輩からすれば「自分より年上の部下」となる。
このようなケースは双方にとってやりにくいものである。
事例。
自分の後輩が上司になってしまったので居心地が悪くなり、別の支社へ転勤希望を出した。希望は認められ、目当ての支社へ転勤できた。
しかし、転勤先の支社にも、出世した別の後輩がいた。
結局、いやになって会社を辞め、別の会社へ就職した。するとそこにも、将来を有望視されているさらに有能な後輩がいた。
運命を呪いながら、その会社も辞めてさらに別の会社へ就職した。ここでは運良くたちまち販売部門の主任に昇進した。
ところが、その会社がもっとも大量に製品を納入している最重要取引先の、仕入れ決定権を持つ担当者が、学生時代にいじめた後輩だった。
ま、人生いろいろである。
それとは別の話。
実力もないのに、世渡りが上手なだけで先輩を追い越してしまう後輩もいる。そのような場合、追い越された先輩にしてみれば不愉快きわまりない。
そういう後輩こそ「目の上の瘤」であり、目の上どころか顔中をたんこぶだらけにしてやりたくなるものである。
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