短編小説 茂須鬼生斗(もす きいと)

 8月。ある晩の事だった。
 静かな住宅街の夜。事件の臭いなど誰も感じていなかったが、その事件は起きた。 

 夜9時頃、田原家の次男、小学5年生の直樹は自分の部屋でぐっすりと眠っていた。
日中の暑さが残る部屋を少しでも涼しくしようと、窓を開けて網戸にして風が入るようにしていた。
網戸は閉まりきっておらず少しだけ開いている、なんてそんな事彼は知らなかったし知ったところで気にしなかっただろう。

 夜は更け日付けが変わる頃、窓から直樹の部屋に侵入しようとする者がいた。
「あぁ、旨そうだなぁ…」
彼は眠っている直樹を見るなり、そう呟いた。

 いとも簡単に部屋に侵入したそいつは、直樹に近づき、タオルケットから飛び出ている脚、ふくらはぎを狙って…

刺した。

侵入から犯行終了までわずか1分。

「若いのはやっぱり旨いよなぁ。」
犯人は満足げにニンマリと笑って直樹の部屋を後にした。その犯人の名は、茂須鬼生斗。
ここのところ多発している連続吸血事件の犯人だ。その手口があまりに巧妙なため、警察も彼を捕まえられない。

 「次はどこに行こうかな」
茂須鬼生斗は次の犯行に及ぶため、夜の町に消えていった。

 次にヤツに刺されるのは貴方かもしれない。
どうか気をつけて欲しい。特に夏には…。

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【作者からのメッセージ】

今これを投稿するのはちょっと季節外れですね…

すいません!

数年前にこんなような話書いてたな、と思い出して記憶を辿りながら改めて書いてみました。

夏になったらまた思い出して読んでみてくださいね。


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