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44 白鳥より白き看護師らよ夜明け

 句集「むずかしい平凡」自解その44。

 胆石が胆嚢にたまっていたので、その摘出手術のため入院した際の句。

 術後に医師の話を聞くと、順調に手術は進んだのだが、最後、胆嚢にたまった胆石の量が多くて、へそのところにあけた穴からそれを引き抜くのに苦戦したとのこと。思いのほか時間がかかって、家族は少し心配したらしい。麻酔がかかっていたこちらは全然覚えていない。ただ、手術室を出て、なんか声をかけられたのは覚えている。呼びかけに「今何時?」と聞いたとか。なんともとぼけた話。その後リカバリ室へ。正午過ぎに入って、翌日の午前10時くらいまで管につながっていた状態だった。

 深夜に痛みが増してきて、すこし我慢していたら、看護師が来てくれて、痛み止め増やしましょうか、とさりげなく言ってくれたのはうれしかったですね。微妙な痛さで、がまんできないことはなかったけれど、眠れないのはつらかったので。ナースステーションには、あちこちの病室からコールが入ってくる。それが聞こえてくる。ひっきりなし。こりゃあ大変な仕事だ、と思いつつ、痛みに耐えつつ。

 夜明けを迎え、リカバリ室に明かりが点き、白衣の白がまぶしい、と思った瞬間の感覚。それがこの句になりました。

 ほんとに医療の仕事というの過酷でもあり、尊いものだと思います。社会にはなくてはならない存在。

 ところが、それを壊そうとする最近の社会の在り方には疑問を持ちます。

 と、ここではそんなことを論ずる場所ではありませんが、しかし社会の基盤を支えてくれている看護師への敬意を句に示すことができたのは自分としてはうれしいところ。

 どんな仕事でもそうですが、希望と尊厳を大事にしたいものです。

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