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本当の世代交代

前回までのあらすじ:
社員が増えほっとしていたところに始まったcovid-19の猛威。
今までの苦労とは真逆の、今度は社員が多すぎて困るという事態に。
俺は、コロナ特例雇用調整助成金を申請することにした。

今から思えば、当時の勤務表は、毎月すごい数のコロナ休業を示すマーク。
本当、異常事態だったんだ、あの頃は。。。

それを、コロナ特例雇用調整助成金で補ってもらった。

不幸中の幸いだったなあ。

そして、俺も妻も、会社の維持のために必死だった。
少しも気が抜けない状況だったからだ。

自宅と会社を往復するだけの日々。

だから、一人暮らししていた親父の世話なんか無理だった。

親父は家事は何でもできるタイプ。
自分で買い出しに行き、自分で料理する。
洗濯もアイロンがけも得意だ。

だから、元気であれば、放っておいても大丈夫とたかをくくっていた。

しかし、

夏が終わる頃、事件は起きた。

いつも来るはずの親父が来ない。
昼食を一緒にとるようにしていたからだ。

電話を何度かけても出てこない。
俺はヤバイと思って親父の家へ。

そこで目にしたのは、意識朦朧でソファに横たわっていた親父の姿。

慌てて病院へ搬送し、一命は取り留めた。

酒が好きな親父。
どうやら、酒ばかり飲んで脱水症状を引き起こしたらしい。

最近、色んな事が面倒くさいと言い出していた。
もう少し気にかけてやればよかったと後悔したよ。

入院生活は高齢のために長引いた。

親父は、実は様々な病気やけがを経験していて、入院には慣れていた。
数年前にはがんを患い手術したが、5年生存を果たし完治となっている。

そんな親父だから、また復活することを俺は期待していた。

今回は、特に何かの病気というのではなくて、老化による身体機能の衰えでの入院生活。時間はかかったが、少しずつ状態は良くなっていった。

しかし、年の瀬が迫る頃、再び事件は発生した。

退院する!と親父が言い出したんだ。

まだまだ医療が必要な身体状態だった。
病院から呼び出され、俺は慌てて駆けつけた。

だが、俺の説得は聞かなかった。
ま、聞かないだろうとは思っていたけど。。

結局、医師・看護師・俺・孫、誰からの説得も一切聞き入れず、ついにはなんと暴れだし、手のつけられない状態になった。

こんな姿を見せるなんて、正直大ショックだった。
そして、必然的に退院せざるを得ない状況になったんだ。

親父は決死の覚悟で頭を働かせたんだと思う。

俺は仕方なく、親父を車に乗せて自宅へ送った。
親父は満足そうだった。

人間だれだって自分の家が好きだ。
3ヶ月自宅から離れていた親父。
帰りたかったんだろう。

でも、この身体で一人暮らしは無理だ。
俺は、仕事をしながら、夜は親父宅で泊まることにした。
昼間は妻が様子をみてくれた。

幸い年末だったから、1週間程度で仕事は休みになった。
親父も考えていたかもしれないな。
全ては計画通りだったのかも。。

そして、年末には、姉も弟も家族を連れて帰って来ることになっていた。
コロナもちょうどこの頃、少し収まっていた。

全ての偶然や必然が重なり、昔に戻ったかのような賑やかな日々が続いた。


つづく












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