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原作未読初見『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション後章』感想

核心に触れるネタバレだらけなので注意。必ず後章を視聴してから
読んで欲しい。


演技・演出

演技

 前章の感想記事でも述べたが、主演二人の演技は本職の声優と混ざっても違和感のない演技力で、キャラクターに合致していて素晴らしい。二人とも本業は別ではあるが、今後も声優としての仕事も見てみたい。

演出

 メインキャラの作画・背景・メカデザインは前章と同じく丁寧で作画が
怪しいシーンはなく、高クオリティだったと思う。全体的に良かったが、
中でも特によかった二つの演出について書く。
 まず一つ目の演出は、侵略者の顔だ。前章・後章において侵略者はamongusのような防護服を着ており、前章では中身が出てくることはなく、地味にどんなもんだが気になっていた。中身はエイリアン系でもなく、
人間とほぼ同じ、むしろおんたんら作中の人間よりも見た目だけなら我々に近い感じで、異質さと言えな全体的に色味が青いだけって感じ。ただそれが逆に異物感・異質感を抱かせた。明らかに違う作画、成人男性の顔をしながらサイズはぬいぐるみ並み等、侵略者がヒトとは異なる知的生命体だと視聴者に強く印象付けられたと思う。結局、後章でも二回程度しか出てこなかった(脳みそとか血はじゃんじゃん出ていたのだが)のだが、一瞬でもかなり印象に残る。
 二つ目の演出は、ラストに近いシーン。(ここからはマジのネタバレなので未視聴の方は引き返してほしい) 

簡単に流れを書くと、東京に戻る途中のパーキングエリアでおんたんと門出がキス→いつものようにじゃれ合う→東京上空で母艦が爆発→でんぱ組の曲をバックに多くの人々が消し飛ばされていく。その中には渡良瀬、マコト、竹本、おんたんの兄も含まれていた。
とんでもない破壊シーンだし実際マコトやおんたんの兄貴とか好きなキャラが巻き込まれているので可哀想なシーンのはずが、どこか爽快感・カタルシスを感じ、ゾクゾクする気持ち良いシーンだ。

キャラクター

 前章と同じく主人公二人は魅力的だったのだが、後章では特に男性キャラが良かったので、彼らについて書きたい。

マコト

 前章の中盤から終盤にかけて竹本と共に田舎から出てきた少年。可愛い存在になりたいという理由から女装しているキャラで、正直侵略者擁護派の
思想を持つ竹本がメインでさほど目立たないキャラなのかと思っていた。
しかし蓋を開けたら結構目立つ。しかも竹本より好印象。特に大葉との友人関係は、おんたん門出よりはクソデカ感情ではないものの、お互い信頼のある健全な友情を築いており、良い意味で裏切られた。だって大葉の正体を
門出おんたんの次に知ったと思ったらおんたんの過去まで知ることになるとは思わんでしょ……ちょいキャラっぽく出てきたのに。

大葉

 前章にもちょっとだけ出てきたキャラ。8.31の際、門出が中学時代まで好きだったアイドルの死体に移植される形で生き残った侵略者。普通に仲良くなったタイミングで裏切りそうな位ヤバい設定だが、むしろ人類を助ける為に奮闘する益荒男。人類を救うために一人民泊を離れ、気づいたおんたんを振り切って東京に向かう姿とかこれもう半分主人公だろ。人と侵略者が
分かり合えると考える理由も、ただの綺麗事ではなく、僕の周りの人はいい人ばかり(実際おんたんらオカルト部の人はいい人ばかり)という理由に基づいているのも良し。いい意味で意外なキャラ。

おんたんの兄貴

 前章の時点で良いキャラだったが、後章ではおんたんへの愛がより強く
感じられ、非常に魅力的。本作で二回ほどおんたんに語りかけるシーンがある(二回目は届いていないが)のだが、どちらも兄として愛のある言葉だ。
二人の兄妹愛もアニメで描かれがちな過剰だったりギャグ的なものではなく
リアルだが暖かい、良い関係。まぁ兄貴の見た目はギャグみたいだけど……

脚本

 概ね面白かったと思う。前章同様現代日本がリアルで抱える問題を少し
シニカルに描きつつも臭さは一切なく、多くの人が楽しめると思う。
 躊躇いながらも特に逆らうことなく侵略者を殺害する兵士、自分たちが先に居たと大した証拠もないのに主張し(原作で出てたらすまん)現在住んでいる人類を労働力として使おうとした侵略者、その侵略者も結局の所棄民でしかないというリアルでやるせない展開は、心に来るものがある。
 どう考えても東京から逃げた方が良い局面で「まぁ何とかなるだろ」と思考停止で仕事をするおんたん父、侵略者の人権を訴え、平和主義なはずだったのに気づいたら要人暗殺を企てる過激派に取り込まれた竹本たちの団体、お飾りの総理、箱舟で自分たちだけ生き残ろうとする上級国民、サブカル→ネットde真実→過激派組織のリーダー→テロリストにまで上り詰めた(転落)
小比類巻君……と正直起きて欲しくはないが今後日本で何か起こった時に人々が取りそうな行動を嫌という程表しているのでは?と思った。
 オチは結構普通というかハッピーエンドで、喜びがありつつも少しばかり拍子抜けした部分もある。ただ、その点もある意味リアルなのではと思う。
たった一人が出来ることなんて精々自分の行動・キャラを変える程度で、
それによって動かせる人間も本当に身近な人が限界なのでしょう。
そう考えれば大葉はよくやった方だと思う。また、ハッピーエンドに関しても、勇気ある行動を取った人間が皆死ぬのかと言われた必ずしもそう、とは言えないと思う。補正とか抜きに生き残れることもあるのだろう。おんたん門出以外の三人なんてマジで偶々東京から離れてたから生き残った訳だし。
 ただ一個だけちょっと残念だったのは、前章から気になっていたとある
キャラの真相に時間軸、要はマルチバースに近い設定が使われていた点だ。いや全然全く悪くないし、伏線も回収されて丁寧で納得のいく展開だったのだが、あくまで自分個人としてはマルチバース設定そのものがMCUを筆頭に2020年代にめっっっちゃくちゃ擦られたせいであまり得意ではないのだ。「あーまたマルチバースか……」と驚きがないと思ってしまった。まあ状況的にはマルチバース封じたらタイムマシンか前世かリセット可能世界観しか無理なわけで仕方ないけど。

総評

 前章視聴後のワクワク感はないものの、概ねオススメできる。視聴後には「終わってしまった……何もかも。どうすればいいんだ」という卒業式直後新卒就職三日前に感じた喪失感に似た感情を抱いたので、かなり入り込める作品だと言える。そもそも読書感想文が苦手だった自分が二千字以上感想が書けた時点でつまらないわけがないだろう。
 ただ、オチが原作と違う点などを考えると、本作だけでアニメ版『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』を結論付けるのはまだ早いのかもしれない。
 何だかんだ前章・後章の二本の映画として見れば面白いのでオススメ。
ただ視聴後の期待感込みで前章のが良かったかな。


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