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『東京の孤独』感想

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《映画の内容》

公開 1959年
時間 107分
配給 日活
監督 井上梅次
内容 新人王と愛する人を掛けた2人の新人を軸に漢の勝負の世界を描いた野球映画
東京の孤独 | 映画 | 日活 (nikkatsu.com)
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《映画の特徴》


 主役級を演じた小林旭、芦川いづみ、宍戸錠らを中心に日活を代表する豪華キャスト。野球関連ではプロ野球球団の読売と大毎が協賛して後楽園球場での撮影、劇中にも野球解説者の南村侑弘と小西得郎、スポーツアナウンサーの志村正順が特別出演。これらのことから日活の本気と球界からの期待が伺える一作。

《映画の感想》

・ストーリー全体の感想


 主人公の猿丸と黒柳の大貫登世子を巡る恋愛ドラマは整っており、野球パートもドラマの進行に合った展開となっている。それに加え野球パート単体で見ても非常に面白く、大貫哲也率いる東京ディッパーズのペナントレースや猿丸と黒柳の新人王争いそのものに焦点を当てても楽しめる。

 話の軸となる猿丸と黒柳はそれぞれ「弱気で恩を大切にする性格」と「野心的で傲慢な性格」となっており、対照的な2人をライバルにするという王道的な展開が映画の下地を良くしている。この2人に愛する登世子という女性と新人王を同時に争わせるせることで、恋愛と野球のストーリーに関連性を持たせてどちらからも目が離せないようになっている。

 この映画は登世子の兄・哲也(以下・大貫監督)がペナント優勝を逃すとこから始まり、彼も主人公の1人かつ猿丸と黒柳に対して影響の大きい人物である。大貫監督は前述の2人以外にも様々な人物と関係を持たせつつ、厳しい勝負の世界を戦うプロと同時に人望の厚い人物として描かれており作品の世界を広げる一方で安定感を与えている。

・野球パートのレベルの高さ

 野球パート関して具体的に説明するとペナントレースはテンポよく進めつつ、球団の状況に山あり谷ありと変化を付けるこれまた基本に忠実な盛り上げ方をしている。試合1つ1つは実際の試合のように実況を付けたり牽制や審判への抗議シーンを挟むなど野球の「間」を大事にすることで試合の緊張感や臨場感などを非常に高く再現している。

 《映画の特徴》でも説明した通りこの映画は球界からも様々な協力がされており、その様子はここまでに記述した野球シーンの表現以外にもプレーの演技の高さにもよく表れている。本人の話によると投球シーンは、投手時代の王貞治に演じてもらっていたという。王選手が演じるシーンは顔が映らないようにして、合間合間に小林旭の演技を挟んでいたとのこと。

・その他


 ちなみに作品の出来栄え以外について言及すると時代の違いがところどころで目についた。例えば、優勝が決まった試合ではファンが球場に流れ込む、ベンチに顔を覗かせてヤジを飛ばすなどファンとチームの距離の違いを感じる。シーズン中の記事だが猿丸の20勝に対して黒柳は18本塁打で「激しい新人王争い」となっているが、これは当時が今より圧倒的に投高打低の傾向かつ先発投手の完投が当たり前の時代だったからだろう。また、野球以外の面でも初対面で挨拶をしていない人間に知り合いの職場を教えるシーンがあり、今と比べて他人に対する警戒心が大きく異なることが伺える。

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