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小説・詩

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小説、掌編、ショートショート、三題噺、「物語」と名のつくことばたち。 詩は、内側からあふれでる、風景や身体の本質的なことばの集合体。
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#小説

アタマの上の蝿を追え②【小説】

前回まではこちら * あの日以来、近ごろは寝坊しなくとも、もう顔に時間をかけるのは止めに…

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アタマの上の蝿を追え①【小説】

志邑です。 「不思議」をテーマに書いた小説(の冒頭)が見つかったので載せます。 まだ冒頭の…

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録画しといてって頼んだでしょ

高校生になる娘は最近家にほとんどいない。 校則でバイトはたしかに禁止されていないが、私と…

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蜃気楼を泳ぐ

ノンアルコール、と書いてある飲み物にも実は微量のアルコールが含まれている。 日本の規定で…

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一枚の絵(後編)

前編はこちら *** その絵には『一枚の絵』というタイトルが付けられ、第三展示室の隅の方…

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一枚の絵(前編)

わたしが生まれたのは日本のどこか、海辺の街で、夏だったこともあって、安直な、海っぽい名前…

廃墟で散歩

まだ昼のうちから、鬱蒼とした森はくらく、視界はあまりひらけていない。 足元一面に広がっている落ち葉を踏むたびにカサカサと音がする。 自分たちが足を止めている時、あらぬ方角から音がするたびに体が小さく跳ねた。 枯れ葉は些細な風で揺れるほど軽い。 気にしては駄目だ。 「ひゃっ」 私以上にカナが怯えていた。 私やマヤの足音や、自分の髪の毛と洋服が擦れる音にすら驚いて、その度に叫んでいる。 正直、カナの反応が大きいので、平静を保っていられた。 「廃墟にいこうよ」と言い出したのはカ

しらゆき号に乗って

次の連絡船の時間まで、あと40分あった。 わたしは往復のチケットを買い、これから湾を挟んで…

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ハイドアンドシーク

履きつぶした革靴は、靴底が破けていて、動くたびに湿っぽい砂が中に入り込んで不快感を助長し…

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宵っぱりのための夜

強い風の音がしているのを言い訳に、ふたりの間には会話がなかった。 昼間は久しぶりに日差し…

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あさぼらけ

フェードアウトしていた意識の中に、雨の音がクロスフェードしてくる。 夜半にはまだしとしと…

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