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第17回、母が他界して良かったこと 子育てを楽にするお袋の味

17歳で母が他界 その後、四半世紀あまりで感じた母が亡くなったからこそ”良かったこと”をシリーズでお伝えしています。

またしてもずいぶん時間が空いてしまいました。久々のマガジン更新です。

第17回 
子育てを楽にするお袋の味

毎日食べていた母の料理を食べる機会が無くなると、あの時のお袋の味を食べてみたくなる。と言うことはあるあるだろうと思います。

独り暮らしを始めた学生さんとか、親元を離れた方はそうなることも多いんじゃないでしょうか?

母が亡くなると、現実問題として母の料理を食べれなくなります。幸い、料理はその頃すでにそれなりにできるようになっていたので、食べることに困った事はありません。料理を作れるように育ててもらったことに母の偉大さを感じます。

けれど、自分が料理を作れる事と、お袋の味を求める事は全く別物。子どもができてから、お袋の味と言うものについて考える機会が増えました。

お袋の味に求めているものって何だろうか?

思い出とか?
懐かしさとか?
優しさとか?
気遣いとか?
温かさとか?

いろいろ考えた。でもなんかしっくり来ない。

思い出の味なら、外食した思い出だってあるし。

優しさとか温かさみたいなものは、リアルに居てくれてるなら、味じゃなくていいはずだし。

味であることの利点みたいなものって何だろうか?

それを食べたときに感じる独特な感情って何なんだろう。

私が、お袋の味で唯一再現できたもの。
それは、さつまいもの素揚げ。それをお塩で食べます。

これは、いつ作っても毎回、母の味と同じものができ上がる。簡単でシンプルな家庭料理だからこそ再現可能なのだ。

母の料理は、あれ以来食べたことは無いから再現しようにも、確認を取ることはできない。どんどん忘れて行ってしまうから、四半世紀も経ったらほぼ覚えていない。自分で料理をしてきた年月の方が長いので、ほぼ私の味になってしまった。

さつまいもの素揚げに私が感じる感情はなんだろうか。と考えた時、ようやくピッタリの言葉が見つかった!

安心感

これだ!
そうか。私はお袋の味に安心感を感じていて、またその安心感を味わいたくて、さつまいもの素揚げを作っていたのか。

お袋の味と言うのは、何も母が作ってくれる必要は無い。それを再現できていれば、同じ効果が得られるのだから。

だとすると、私は子育てするにあたって、簡単でシンプルな家庭料理を息子達に伝える事ができればOK と言う事か!なぁーんだ。お袋の味って簡単だったんじゃん。全然男の子でも問題なくいけるじゃん。難しく考えたり、過剰に世話をやく必要なんて無いのか。

これが分かったのは、子どもたちがまだ保育園の頃だった。保育園に通っていると、おじいちゃんやおばあちゃんの存在が自分達には一人少ないのだと気が付く。

それが寂しいとか嫌だとか、そういった感情ではなく、単純におばあちゃんってどんな人だったのか?と言う興味が子どもたちにはあった。

しかし、言葉でいくら説明しても、写真や動画を見ても、子どもたちがしっくりくることは無かった。

けれど、さつまいもの素揚げを作り、『おばあちゃんがいつもこれを作ってくれたんだよ』なんて言って一緒に食べながら『これがおばあちゃんだよ』と言ってみた。

子どもたちは、これまでのどんな話よりも納得してくれた。さつまいもの素揚げは子どもたちの大好物になった。それは、自分達のルーツなのだと。味が持つ説得力はとても強いメッセージとともに幼い子どもにも伝わる。そう実感した事を覚えている。

そうして、さつまいもの素揚げは、私にとってのお袋の味となり、子どもたちにとってのおばあちゃんの味となった。

何度も何度も繰り返し、さつまいもの素揚げを食べてきた。そうしているうちに、さつまいも嫌いだった夫が、さつまいもの素揚げだけは食べられるようになった。『これなら食べれる。美味しいな』

簡単でシンプルで、再現度の高い味を家族に私が伝える事ができれば、子どもたちが巣立った後、彼らは安心感を求めてまた、お袋の味を再現しようとすることができる。

いつでも、お袋の味が僕の中にある。それは、明日への勇気になるかもしれないし、今日の疲れを癒すかもしれない。

手の込んだ再現できない料理は、生きているうちしか味わえないとても特別なものだけど、たとえ死んだとしても未来へ続く味は、ずっと愛を感じられる大切なものだと私は思っている。

一緒に居る事が愛の形とは限らない。

作ってあげることが、お袋の味なのではない。伝えて再現できて初めてお袋の味なのだと私は思う。

明日は生きているとは限らない。いくら健康であっても、明日も生きていられる保障は無い。人生100年時代を生きる私たちは、明日死ぬ事を想像できなくなっている。死ぬ事を想像できないと、大切な事は見えてこない。死ぬ事を覚悟していないと、大切な事は伝わらない。

今、できること。今、伝えられることを必ず伝えたい。

私は言う。

『お母さんが死んでも、さつまいもの素揚げをつくればいい。乱切りにして、油であげるだけ。後はお塩を振りかける。おばあちゃんとお母さんの味だよ』

『お母さんが死んでも、朝はお湯を沸かしてミルクティーを作ればいい。アールグレイティーと牛乳があればいつものホッとする味になるよ』

『お母さんが死んでも大丈夫。そのようにあなたたちを育ててる。何も心配いらないよ』

母よ。
あなたが伝えてくれたその味は、
孫たちの大好物になりました。
夫は嫌いな食べ物がが一つ減りました。

あなたのおかげで、今があります。
ありがとう
あなたの味は、いつも私の拠り所です。

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