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失恋したのでポエム書いてみた

彼と始めて出会ったのは2年前の秋。
お互いの中間地点の駅で、待ち合わせをした。

始めて会ったとき、彼は緑色のトレーナーを着て、緊張した様子で私を探していた。
私は今でもその時の映像を鮮明に覚えている。

それから、私たちは予約していたお洒落な居酒屋に入った。
通された席はカウンターで、店員さんの目が気になりあまり会話が弾まなかったので、1杯だけカクテルを飲んで、すぐに解散した。

なんか興味なさそうだったし、もう会わないのかなと思っていたけど、
彼はその日のうちに次の約束を取り付けてきた。

正直、まぁ悪い人じゃないし、断るのも申し訳ないから行くか、、
くらいの感情だった。

そこから数回2人で遊んだ。
遊びに行く前は電話をして、一緒に計画を立てた。

最初は真面目そうな印象だった彼だけど、仲良くなると独特の感性があって面白い人だということが分かった。
それに、本当に優しい人だった。

友達がおいしいと言ってたからと言って、クロワッサンを買ってきてくれたこともあったし、
私が遊びに行くときの場所を提案すると、ほんと計画立てるの上手だねっていつも褒めてくれた。

それから何度か会って、観覧車の頂上で告白された。
いつから好きだったかと聞かれるとよくわからないけれど、このころにはもう断るという選択肢は残っていなかった。

付き合ってから私はどんどん彼のことを好きになっていった。
一緒にいる時間は本当に楽しかったし、彼からの愛情をすごく感じていた。

途中で海外との遠距離になったときもあったし、ちょっと仲が悪くなるときもあったけど、私はこのままずっと彼と一緒にいれるんだろうなって、勝手にそう思っていた。

でも、そんな日々はあっさりと終わりを告げた。

約2年間毎週1回は会って、毎日連絡を取り合っていたのに、
彼が発した 別れよっか の一言でもう会うことも話すこともできなくなった。

私は別れたくなかった。
でも、彼の表情を見るともうその決意は揺らぐことはないんだろうなってなんとなく分かったから、受け入れるしかなかった。
あの時の彼の表情、言葉、今でも思い出しては苦しくなる。

でも、そんな時でさえ、穏やかで優しい私の好きな話し方だった。

別れることが決まってから、私たちはこれまでの思い出話をした。

彼は泣きながら、これまでの楽しかったことを寂しそうに語った。
私も語った。

でも、私は内容なんて覚えていない。ただ、冷静を装いながら、なんとか情を沸かせて別れを回避できないか、それだけを考えていた。

ひとしきり泣いた後、よく2人で行った近所のスーパーに夜ご飯の材料を買いに行った。
私の最後のお願いで、夜ご飯を一緒に食べてもらえることになったのだ。

その道中は手を繋いだ。お互い迷ったけど今日までは恋人だからいいよね、って言って繋いだ。
もう私のこと好きじゃないくせに、これまでで一番くらい愛おしそうにぎゅっと手を握ってくるから勘違いしそうになる。

買い物を済ませ、一緒にハンバーグとポトフを作った。
彼はハンバーグは作るの楽しそうだから嫌だって言ってたけど、最後くらい楽しい方がいいじゃんって言ったら納得してくれた。

買い物も、ご飯を作るのも、悲しいのに楽しくて、これからもこんな日々が続きそうな気がして、なんか不思議な気持ちだった。

彼もきっとそうだったんだろう。
私の方を見てため息をつきながら、こんなに楽しいのにね、って呟いた。

ご飯が完成し、テーブルに並べた。
時計は22時を回っていた。

終電まであと2時間。
シーンと静まる部屋でテーブルを囲むと、なんだか急に実感が湧いてきた。

何度も泊まりに来ていたこの部屋で過ごすのも、一緒にご飯を食べるのも、こうして話すのも、彼の顔を見ることでさえ、もう全部これで最後。

最後に一緒に作ったご飯だから、ちゃんと嚙み締めたかった。
でも、どうしてものどを通らなかった。

彼はご飯を食べながら、またぽつりぽつりと話し始める。
私への感謝、思い出、これからのこと。

そして、どちらからともなく手を握った。
手のぬくもりを感じると、我慢していた感情が溢れて涙が止まらなかった。
彼も泣いてた。

彼がすごく悲しそうに泣いて、私を大事そうに触れる。
これは愛情じゃなくて、これまであったものを手放すことへの喪失感、情でしかないことなんて分かってた。
でも、どうしてもどこかでまだ私のこと好きなんじゃないかと思ってしまう。

だから、最後に私は、まだ大好きだよって抱きしめながら言った。
いつもは私が好きだと言うと、俺も好きだよって返してくれていたのに、彼はただ黙って涙を流すだけだった。

諦めをつけたくて、もうチャンスないよね…?って聞くと、
彼はしばらく考えて、首を縦に振った。

彼はそういう人だ。今日が楽しかったからといって決断を変えるような人ではないことなんて私が一番よく分かっていた。

それから、終電の時間が近づいてきたので、駅まで送っていった。

楽しかったし、幸せだった。
お互い幸せになって、またどこかで会えるといいね。

またね。

彼はそう言ってホームに消えていった。

私は、またねじゃないよ。ばいばい。
って言った。

まだちゃんと別れを受け入れられてないくせに、私の方がまたねを切望してるくせに、
最後にちょっとだけかっこつけた。
これが私にできる精一杯だった。

それからの日々は、毎日いろんなことを考えて、反省して、寂しくて、会いたくなって、そんな毎日だった。

彼との思い出が詰まった部屋で一人生きていくのは辛かった。

最初の数日は毎日泣いてご飯も食べられなかったけど、気にかけてくれる友達がいたからなんとか立ち直れた。

離れて冷静になった今、彼のことを考えても、
本当に優しい人だったな、
毎日楽しかったな、
彼以上に好きになれる人なんているのかな

湧いてくるのはそんな感情。
それほど彼は素敵な人だった。

彼とこの先の人生ずっと一緒に過ごしていきたい。
心からそう思っていた。

でも、全てこれでよかった。
彼と出会ったことも、約2年間付き合えたことも、別れたことも、全部。

彼はこの2年間で私にいろんな幸せをくれた。
浴衣で花火大会に行ったり、イルミネーションを見に行ったり、誕生日にはディズニーに行ったりして、私のやってみたかったことたくさん叶えてくれた。

思い出は数えきれないほどあるけど、私は家で一緒にテレビを見ながらお酒を飲むのが好きだった。
私の家から近いスーパーに行って、何を作るか一緒に考えて、缶のお酒を2本ずつ選ぶのがなんかすごく幸せだった。

でも、これから結婚して長い間一緒に過ごしていくには合わないんじゃないかって、きっと気付いてた。

私たちは、結婚に関する価値観、住みたい場所、望んでいる環境、何もかもが違った。

彼には結婚願望が一切なかった。
誰とも結婚したくないのか、それとも私と結婚したくないのかは今となっては知ることができないけれど、とにかく誰かと一緒に暮らしたり、結婚をするということにいいイメージが持てないらしい。

確かに、これまで将来についてちゃんと話したことはなかった。

でも、一緒に神社に行ったとき隣で私とずっと一緒にいれますようにってお願いして、私の好きなファイナルボーイフレンドという曲を聴いていた時に、俺がファイナルボーイフレンドってこと?って楽しそうに聞くような人だったから、ずっと一緒にいる未来を当たり前に想像していると思っていた。

彼が留学に行っていた都合で、帰国してから3週間だけ一緒に住んでいたことがある。
一緒に料理をしたり、たまには彼がご飯を作って待っていてくれたり、夜お散歩をしたり、本当に毎日が幸せだった。

今当時のLINEを見返してみても、彼も私の仕事が終わるのをいつも待ちわびていてくれていたし、すごく楽しんでくれているように見えてしまう。

あの期間彼はどう思っていたんだろう。
幸せだったのは私だけだったのかな。

その他にも別れた理由はいろいろある。
彼は正直に話してくれたけど、彼が言っていない理由が他にもあるのかもしれないし、本当のところは分からない。

こんなことを言うとただの強がりにしか聞こえないかもしれないが、私は別れを告げてくれた彼に感謝している。

合わないって分かっていても、結婚出来ないって分かってても、私から別れようっていうことはきっと出来なかった。

好きだったし、失うのが怖かった。

でも、私たちにはきっとこれが正解だった。
すごく好きな人だったけど、私たちはこれから長い時間を過ごす相手ではなかった。

一番好きな人と一番幸せになれる人は違うってこと、よく分かった。

私は、彼によく手紙を書いていた。
遠距離になったとき、誕生日、そして別れる1週間前も。

だから、最後は手紙で彼に気持ちを伝えたいから、ここに記そうと思う。

もう、彼に読んでもらうことはできないけれど、これが本当の最後の手紙。


○○くんへ


久しぶり。元気にしてた?

私は、友達と遊んだり、転職活動したりしながらいつも通り過ごしていたよ。

今でももちろんあなたのこと毎日思い出すよ。
休日になると今日は何してるのかなって気になるし、街中であなたに似た服を着てる人を見ると、つい反応しちゃう。

それにまだ写真も連絡先も、あなたとの思い出のものも何も捨ててないよ。
まだまだ写真もトーク履歴も見返しちゃう。

最初の頃は写真を見るたび涙が溢れてきたけど、もう今は大丈夫。
切ない気持ちにはなるけど、ちゃんと思い出にできてるよ。

あなたとお別れした日は、突然だったから気持ちを整理できていなくて、これまでの感謝とか全然伝えられなかったから、今更だけど伝えさせてね。

まずは、私と出会ってくれて、好きになってくれて、好きにさせてくれてありがとう。

そして、付き合ってから別れるまでずっと大事にしてくれてありがとう。

別れた日、嫌だったところを聞かれて、私は何もないよって答えた。
あなたは絶対嘘だって言ってたけど、本心だったよ。

確かに合わないところはたくさんあった。
傷ついたこともあった。

でも、あなたは一度も私をわざと傷つけようとしたことはなかった。
不器用だけど、あなたの優しさ十分伝わってたよ。

あ、あと、好きなところを聞かれたとき、何も考えられなくて答えられなかったから、今代わりに教えてあげる。

まずは、恋愛映画から出てきたの?ってくらい、素直に愛情表現してくれるところ。
あとは、私を呼ぶときすごく優しい声で呼ぶところ。
すごく温かい目をしているところ。
苦手なのに、頑張ってデートプラン立ててくれるところ。
毎週金曜日には必ず、今週もお仕事お疲れさまってLINEを送ってくれるところ。
私がやりたいって言ったこと、全部楽しそうにしてくれるところ。
突拍子のない行動でいつも楽しませてくれるところ。
寝てるときいつの間にか私にぎゅっと抱き着いてくるところ。

まだ聞きたい?(笑)
あなたの好きなところだったら、いくらでも言えちゃうよ。

十分知ってると思うけど、私ほんとに好きだったよ。

あなたもきっとそうでしょ?
最後に会った日言ってくれた、人生で一番好きだったって言葉、きっと本心だって思ってる。

なんかそれだけでいいや。
好きな人の暫定一位になれたこと、それだけで幸せなことだよね。

あなたはきっと後悔してないと思うけど、私に別れを告げたこと、後ろめたく思わないでね。
あなたが選んでくれた道はきっと正しいよ。

でもね、やっぱり寂しい。
ふとした時に思い出が鮮明によみがえって、会いたくなる。

仕方ないね。
あんなに一緒にいたから当たり前だよね。

付き合ってた時は、期待して、私の価値観に合わせて欲しくなってしまっていたけど、そんな余計な感情を手放した今、私は心からあなたの幸せを願えているよ。

私には結婚したくないって言ってたけど、他の誰かと結婚したっていい。
考えを変えてくれるほどの人に出会えたってことだから、嬉しいよ。

暫定一位も譲ってあげる。
まぁ、ちょっとは悔しいけどね。

そして、あなたが追い求める理想の人生叶えてね。

もう会うことはないけれど、私は遠くでずっとあなたの幸せを願ってる。
大丈夫、あなたはとっても素敵な人だから間違いなく幸せになれるよ。

私もあなたに負けないくらい幸せになるね。

じゃあ長くなったし、この辺で終わりにしようかな。

最後に、別れ際ちゃんと言えなかったけど、私の方こそ、楽しかったし、幸せだったよ。

たくさんの思い出をありがとう。

心から大好きでした。
















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