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彼氏という尊い存在

和三盆、23歳。
世間で言うところの『若者』であるが、それなりに人生の酸いも甘いも経験していると自負している。
さて、そんなわたしが日々、心がけていることがある。

彼氏の惚気はできるだけ面白くする、である。

彼氏とわたしは恋人でありながら、親友、ときには夫婦漫才よろしく笑いを追求する者であるので、単に甘々な惚気をするのではなく、わたしと彼氏とのエピソードを読んだ・見た皆さまが明るい気持ちになれるような、そういった伝え方を心がけている。

これには、わたし自身の過去の経験がかなり関係しており、惚気が下手くそな人はなぜか__元も子もないオブラートは知らないクソ正直な言い方をすれば「ムカつく」のだ。

【彼氏】というワードがそもそもムカつく。
SNSに【彼氏が】【彼ピが】【彼ピッピが】と書かれてあれば内容がどうであれ、本当に幸せだと感じている人以外の人は結構喰らってしまうものである(と思っている)。

だからこそ、伝えたい彼氏のエピソードがあっても、ちょっと諧謔めいた書き方をしてみたり、包み隠さず「おならが臭い」と書いてみたりした。
敢えて、「そこんじょそこらの付き合いたての高校生みたいな惚気」を避けて生きていたのだ。
高校生へ…偏見まみれでごめんね。

そんなわたしが、そんな信条を捨てざるを得ないほど今日は感動しきりだったので、わざと「彼氏という尊い存在」というタイトルで記事を書く。

とどのつまり、普通の惚気ですので、こういった惚気を憎み、蔑み生きている人間は読まないほうがいいと思われる。


まず、わたしたちは友だちの期間が長かった。
友だちであった頃はお互いに恋人がいたし、なんなら互いに相談もしていた。
ゆえに、付き合いたてであってもショッピングなどにはさほど行かず、ひたすら家でWiiスポーツをして遊んでいた。
インドア派のくせに体を動かさないと!という一心でWiiスポーツをしていた。わたしはゴルフが上手い。

わたしは昼寝をするのが好きなスナフキン志望だったし、彼氏は高所恐怖症、巨像物恐怖症でパワプロくんが好きなインドア派だった。
遊園地や寺社仏閣巡りなどもそれほどできなかったのだ。

ところが最近、商業施設を隅々までふたりで歩いてみたら、全然興味がなかったはずのお店でたくさん発見をしたり、本屋で好きな本を探したり、(彼氏が動物アレルギーなので)飼うつもりがないペットショップのフェレットが可愛かったりして、「お出かけってもしかして…………楽しい…?!」という気持ちになった。

完全に彼氏も同意で、「お出かけ楽しい」ということに付き合って3年目でようやく気がついたのである。

そこで今日、①映画を観る、②サーティワンアイスクリームを食べるという二大目標を引っさげて、ふたたびお出かけをした。朝の9時から夕方6時までぶらりぶらりとあちらこちらに寄りつつ、一日を楽しんだのだが、どういう経緯か、「マッサージ機が見たい!」という話になり、棒のようになった足で家電量販店に向かった。

電動手持ちドリルのようなマッサージ機を片っ端から試す彼氏を、わたしは「マッサージチェアを試しています」という顔で、疲れたトドのようにどっぷりと座り、シェイプアップ機能に揉まれながら待っていた。

ひとしきり試したあと、「これ買う〜」とお気に召したマッサージ機の引き換え券を片手にレジへ行こうとしたら、その途中に、【足元を絶え間なく振動させてエクササイズをする機械(正式名称不明)】があり、面白いもの好きの我々はまんまと「靴のままお乗り下さい」の文言に従い、試乗した。

「足をもっと開けば、振動が早くなりますよ^^」と販売員のお姉さんに声をかけられながら、わたしa.k.aチョロいやつは足をゆっくりと開いていった。
お姉さんが言うとおり、さきほどまでの振動とは打って代わり、最高速度でミシンに打ち付けられる布切れのような振動がわたしの脚を容赦なくガタガタさせた。

隣で同じ機械を試乗している彼氏も「おおー!」と感動していた。
この機械が凄いことがわかった。文字にすると幼稚だが、いまいち必要性に駆られる何かがあるとは思えなかった。
また、元からこれが買いたかったわけではない我々なので「降りるか」といった雰囲気になった。

彼氏がひょいと軽やかに降りる横で、ガタガタと打ち付けられる布切れになっているわたしは「これどうやって降りるの?」という心境になり、無情にも最高速度で打ち付けられ続けた。

ゆっくりと足を閉じている(=低速化を図っている)ときに、後ろからひょいと彼氏に抱き上げられ、そのまま床に下ろされた。
あまりの衝撃にびっくりした。
3年も一緒にいて、こんな……こんな家電量販店のお姉さんの前でそんな行動ができてしまう…?!と内心ドキドキしたが、なんとも思っていない顔で「おおお…!地面に足をつけてもさっきの振動の感覚がある……震えるね……」などと言った。


また、わたしは実に愚かで、どれくらい愚かかというと愚かを体現しているねと言われるほどの愚かなので、「脚やせをしたい」という自己の願望に対し、実行する前から「長続きしないかもしれないので、その対策として一緒に夜毎にスクワットをしようよ」と、わざとらしい上目遣いで彼氏を唆していたのだ。
自分はスクワットなど必要無いはずなのに、「毎日〜?!」と否定的なニュアンスを見せつつ「良いけど」と、ツンデレのお手本みたいな了承の仕方をしてくれた。

その日はバイトがあったため、家に帰り着いたのが23時頃だったのだが、「一日目からサボるわけには行かぬ!武士の名折れである!うむ!」という気持ちで、お風呂に入る前のひと運動__スクワットをすることにした。
「今からスクワットするよっ!」とLINEを送ると、「今から?!良いけど」とスタンダード・ツンデレの様式美を一切崩さず、テレビ電話でお互いに数を数えながらスクワットをした。

彼氏が日本代表サッカーチームのユニフォームを着ており、また、自分は部活で来ていたウェアだったので、本当の部活の記憶が蘇り、パニックを起こしそうになった(ならなかった)。

約束していた回数を終えると、彼氏が立っている勢いそのまま、無言で部屋のあちこちから私物を手に取ってはカメラに向けて紹介してくれる一幕があり、カービィのぬいぐるみや橋本環奈が初めて表紙を飾った週刊マガジンなど様々なものを見せてくれた。

その中のひとつに、iPhoneで撮ったふたりの写真が入った写真立てがあり、わざわざ写真立てに入れるため、写真をプリントアウトしてくれたのだと気づいたとき、もう具体的な感情なしに「えーーーーーーッ?!?!」と思った。
内心ドキドキしたが、なんとも思っていない顔で「写真じゃん笑」といった。
ばかばかばか!そういうのは素直に伝えておくのが吉なのに!!

ひと通り私物を見せてくれた彼氏に「ありがとう、いい私物でした。お風呂入ってくるね」と声をかけたら、「俺がもうお風呂に入っていることなんて1ミリも配慮されていない……まあいいけど」と言っていた。

スタンダード・ツンデレにどっぷりと甘やかされている。
「○○やってみよ!」となんにでも誘うわたしに、いつだって付き合ってくれるのは彼氏や友だちである。
まだ、彼の彼女たちの見たことのない一面がたくさんあって、そういうところを発見して好きになっていけたらいいなと思う。

明日、ふたりの写真を印刷しにコンビニに行こう。
そして、シンプルな写真立てを買おう。

普段は文系院生として過ごしているため、学費や資料の購入に回します✩゜*⸜(ू ◜࿁◝ )