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どうにかこうにか彼氏にジブリ作品を観て欲しいという話

「ジブリ作品なら一番何が好き?」
数多の日本人がつなぎの会話として投げかける質問ランキング上位の質問であろう(2020年私調べ)。
古来より、わたしたち日本人は、素直に「となりのトトロが好き」と答えるか、ちょっとすかした感じで「耳をすませばかな……」と答えるかで迷ってきた過去を持つ。それくらい、わたしたち日本人とジブリ作品の関係は密接であり離れがたいものだ。金曜ロードショーでジブリ作品を放送しておけばまず間違いない。茶の間はあっという間にジブリ一色。Twitterではトレンドを総ナメ。ガチファンによるジブリ豆知識が披露され、拡散フィーバーを迎える。もはや夕食にはハンバーグを出せば間違いないと同等のレベルである。

しかし、日本人でありながら、そんなジブリ作品と精神的にも肉体的にも関係を持たない男がいる。


彼氏である。


彼氏は(嘘をついているのではないかと思うのだが)生まれてこのかた、ジブリ作品を観たことがないらしい。金曜ロードショーでジブリ作品が放映されようものならば、断固としてチャンネルを合わせない努力をしてきたらしい。
しかも、彼氏は頭がいいくせに変なところでお馬鹿なので、「これからもジブリ作品を観ない」とあらぬ方向に意地になっている。

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これには、わたしの中の惣流・アスカ・ラングレーが「あんたバカァ?」とシンジこと彼氏をめちゃくちゃに罵ってしまう。
日本人ならだれもが、「黙れ小僧!お前にサンが救えるか!」とか「そなたは美しい」とか「わたし魔女のキキ!こっちは黒猫のジジ!」とか「夢だけど夢じゃなかった!」とか「飛ばねえ豚はただの豚だ」とか「やなやつ!やなやつ!やなやつ!」とか、その他たくさんのジブリ作品の名言で大喜利を始めたり会話したりするのに(しませんか?)、それができない彼氏…。なんて…かわいそう…。
たとえば、彼氏が友達と話しているときに、急に仲間内でラピュタごっこが流行りだし(流行りませんか?)、皆が口々に「バルス!」「目が~!目が~!」と言っている間、何も分からず虚しくぼんやりとやりすごす彼氏を想像するとなかなかに辛い。もしくは、(なんか分からないけど、みんなが「バルス!」って言っているから俺も「バルス!」って言っておこう…)みたいな気持ちで「バルス…!」なんて言っていたら、不憫すぎて涙があふれてしまう。こんなことではいけない。彼女として、日本人として、わたしが彼にジブリ作品を教える必要がある。彼を一人前のジブラー(※ジブリ作品をこよなく愛する人のこと)に育て上げるのだ。

とは言え、彼氏はどの程度ジブリを認知しているのだろうか。
以前、「トトロのお腹に寝そべるメイちゃんが心底うらやましいので、寝そべるためのトトロのめちゃくちゃ大きいクッションが欲しい、人をダメにするトトロが欲しいのだ!」といった内容の話を彼氏にしようと思い、「『となりのトトロ』っていう作品にはトトロっていうモフモフの存在が出てくるんだけどさ…」と切り出したことがある。ジブリ作品を観たことのない彼氏を思いやっての切り出し方であったが、彼氏は「俺だって、トトロくらいは知っている」と烈火のごとく怒りだした。なるほど、『となりのトトロ』は金曜ロードショーの常連だし、私の小学校の担任の先生が「よくできました」スタンプに採用していたキャラクターだし、いくら彼氏でも知っているに違いなかった。彼氏とは小中高全て異なるが……。
もしかしたら、彼氏は有名どころならある程度、ジブリ作品の物語を把握しているのかもしれない。

こうしてわたしは【ジブリ作品を一度も観たことがなくてもだいたい分かってしまう説】を仮説として立て、独断と偏見で選んだジブリ16作品のタイトルだけを彼氏に便利なツールLINEで送り付け、どんな物語であるかを彼氏に説明させた。
検証のために選んだジブリ作品は以下の16作品である。
① 『となりのトトロ』
② 『ハウルの動く城』
③ 『千と千尋の神隠し』
④ 『もののけ姫』
⑤ 『魔女の宅急便』
⑥ 『耳をすませば』
⑦ 『崖の上のポニョ』
⑧ 『天空の城ラピュタ』
⑨ 『風の谷のナウシカ』
⑩ 『猫の恩返し』
⑪ 『風立ちぬ』
⑫ 『火垂るの墓』
⑬ 『コクリコ坂から』
⑭ 『おもひでぽろぽろ』
⑮ 『借りぐらしのアリエッティ』
⑯ 『紅の豚』
すごい。自分でも知名度があると思っている作品を挙げたのだが、PCの予測変換機能にポンポン出てきて、執筆が非常に楽だった。この調子でWordくんには励んでもらいたい。
ちなみに、彼氏にめちゃくちゃジブリ作品を勧めている割に、わたしも観たことがない作品がある。
…が、そんなことは内緒でジブリ作品とともに育った生粋のジブラー顔をして彼氏とはやり取りしている。

まず先に言おう。彼氏が「マジで何も分からん。」と面白さすら放棄した作品たちが、『猫の恩返し』『風立ちぬ』『コクリコ坂から』『おもひでぽろぽろ』『借りぐらしのアリエッティ』だった。『コクリコ坂から』は私が好きな作品のひとつであるため、特に悔しい。今度、『コクリコ坂から』の仇を打ちたいと思う。
それ以外の11作品はなんらかの反応があったため記していく。

① 『となりのトトロ』

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これは割と的を射たものとなっているが、猫バスの説明が怪しい。そもそも「猫バス」を「ネコバス」と表記するあたり素人感が否めない。
また、この向さんは動画のコメント欄で「猫バスに似てる」と視聴者に指摘されているらしい。もはや彼氏にとって、ジブリ作品とは本編と関係ないところで享受するものらしい。先行きが大いに不安である。
② 『ハウルの動く城』

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もはやバラエティー番組の宣伝である。提供スポンサーを紹介をしているときの、画面脇のヤツである。


③ 『千と千尋の神隠し』

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千尋の注目すべきところはデコなのだろうか?まあ、湯婆婆が大きいのは分かる。あんなサイズと威勢のお婆様が現実にいたら、卒倒してしまうことは間違いないだろう。
独断と偏見なのだが彼氏は釜じいが好きそうなので、釜じいを早く観てほしい。


④ 『もののけ姫』

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LINE上でわざわざ歌ってくれるなんて可愛いヤツ!♥(無限回数愛でる)
ここらへんで、やっぱり、金曜ロードショー常連組はなんとなく認知度が高いことを確信した。同時に、彼氏にジブリ作品を鑑賞してもらう作戦も考えているのだが、金曜ロードショー常連組が手堅い気がする。歌いながらしれっと見せよう。あと、「狼みたいなやつ」も良い線を言っている。山犬のことであろう。


⑤ 『魔女の宅急便』

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これ、めちゃくちゃひどくないですか?なに?「キキが、わちゃわちゃ言うんだっけ?」って。『魔女の宅急便』を観たことがある人もない人も関係なく「わちゃわちゃ言うやつだよね?」とか絶対に言わないと思う。
タイトルにもなっている主人公の魔女=キキがわちゃわちゃ言わなかったらどうなるんですか?
ここらへんから、検証に飽きてきているのか、彼氏の説明がヤバさを増していく。


⑥ 『耳をすませば』

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ハ……?良い子も読むnoteでコンプラ発言(なのか?)はやめて欲しい。説明しにくい。
※気になる人はGoogle先生に頼ろう!
どうやったら、『耳をすませば』と結び付けられるのか、脳の解剖をする必要さえ出てきてしまった。シナプスよ正常に……


⑦ 『崖の上のポニョ』

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LINE上でわざわざ歌ってくれるなんて可愛いヤツ!♥(無限回数愛でる)
しかし、わたしの記憶ではタイタニックみたいなシーンはなかったような気がする。壮大さで言えば、まあ否定はできないが…。(ここでもやはり歌は健在である)ていうか、公開直前の特報映像とか金曜ロードショーの宣伝でのレベルでしか映像を観たことがないんじゃないか…?
大橋のぞみちゃんの記憶があるだけ褒められるべき事態である。


⑧ 『天空の城ラピュタ』

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名(迷)言アニメーション『天空の城ラピュタ』をこんなシンプルな覚え方をしている人間もなかなかいまい。1番知ってるくせに「城が動くことしかわからん」のも如何なものか。『ハウルの動く城』だって城は動いているのである。
余談ではあるが、彼氏は大きいものが大の苦手で、東大寺南大門にある仁王像が死ぬほど怖いらしい。修学旅行に行ったとき東大寺を訪れ、死ぬかと思ったらしい。ラピュタも大きいので直視できないと思う。


⑨ 『風の谷のナウシカ』

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いきなり世代ネタをぶっ込んでしまい申し訳ない。彼氏に代わりお詫び申し上げる。また、分かってしまう人に関しては、急に懐かしの下ネタ(レベル1)に誘ってしまい申し訳ない。重ねてお詫び申し上げる。
「テブラーシカ」はわたしたちの世代で流行ったTV番組『ピカルの定理』のコントである。彼氏は「テブラーシカ」の元ネタが「ナウシカ」だと思っているらしいのだが、「テブラーシカ」の元ネタは「チェブラーシカ」である。「シカ」しか合っていない。


⑫ 『火垂るの墓』

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夏によく金曜ロードショーで放送されているイメージの『火垂るの墓』。彼氏はジブリ作品であったことを知らないようだったので、実は観たことがあるのではないかと期待に胸を膨らませたものの、観たことがないという。
雑な覚え方をしているが、ここで彼氏がアニメーションに求めているものが垣間見られる。笑いという点での「面白さ」であろう。これは有益な情報だ。ちなみに、9歳のころに『火垂るの墓』を観てショックを受けて以来、わたしは『火垂るの墓』を観ていない。おにいちゃんが生きるために野菜を盗んで農家のおじさんからボコボコに殴られるシーンがだめだった……


⑬ 『紅の豚』

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彼氏は免許を持っていないくせに、よく購入したい車を検索している。道を歩いていると通った車を指さしながらいろいろ言っているのだが何を言っているのかあまり分からない。「ナントカというメーカーのナントカという車種」というのをずっと言っている。私は車に関して、興味があまりないので「フーン、スゴイネー」と答えている。しかし、「マセラッティー」だけはなぜか覚えている。とにかく彼氏はカッコいいものが好きなのだ。うら若き20代前半の青年であるが、矢沢永吉をよく聴いている。イケメン若手俳優より、イケオジ俳優などの名前を挙げ「おれもあんな風になりたい」と息を巻いている。
まずは自動車の免許を取得するがよい。

この検証結果を踏まえると、具体的に回答を得られたジブリ作品は比較的古い作品且つ、金曜ロードショーでの放映が多い傾向にある。
【ジブリ作品を一度も観たことがなくてもだいたい分かってしまう説】はあながち間違いではないだろう。
さて、最後に題名にもしている「彼氏にどうにかこうにかしてジブリをみせたい」というわたしの願望についてである。題としたからには見せなければならない。1番手応えがありそうな『紅の豚』から始めるのが良いだろう。しかし、記事の冒頭でも載せたように

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こうであるので、すぐに観せるのは至難の業であろう。これから毎日、サブスクリプション解禁されたジブリの音楽を流しつづけて、ゆっくりとゆっくりと「ジブリ脳」にしていく必要がある。刷り込みだ。
彼氏の深層心理から変えていくことが必要となる。3ヶ月後、心も身体もすっかりジブリとなった彼氏にようやく『紅の豚』を観せるのだ……。


……正直に言うと、早く劇場版『ドラえもん  のび太の新恐竜』が観たい。

普段は文系院生として過ごしているため、学費や資料の購入に回します✩゜*⸜(ू ◜࿁◝ )