監督から母へ。その4
前回のリレーエッセイで、空雅さんのお母さん「くみちょ。」が、空雅さんの15歳から17歳の変化の謎を解いてくれました。
私にとっても、いたいけな少年から思春期の男の子として成長したんだという確信は、空雅さんが700人の前で自分のセクシュアリティをカミングアウトした弁論大会のあとに訪れました。
2年前には母親の影に隠れるような素振りだったのに、今回母親には、自分の晴れ姿を見られたくないから大会には来るなと言ってあるという。
それでもこっそり見にきていた母親。弁論が終わったあとの会場のエントランスで、2人がたまたま出くわしました。
遠慮がちな母親。
照れくささからか、母親と距離を取ろうとする空雅。
それでも、もらったばかりの入賞カップを自慢げに見せる空雅。
子どもの晴れ晴れしい表情を見てうれしそうな母親。
ふたりは、微妙な距離感をもって会話をはじめました。その会話の様子からはまさに「母親から巣立とうとしている男の子」の空気が漂ってきました。
私はこの瞬間を記録したいと思い、カメラを回し続けました。
このときです、私が空雅さんを描く映画を作りたいと思ったのは。この瞬間を伝えたいと思った。空雅さんは、どんな大人になっていくんだろう。いつまでもまっすぐなままの大人になれるのだろうか。性別の垣根を超えて、どう自分らしさを表現していくんだろう。私は、空雅さんが大人になっていく様子を描くことで、なにか私たちが生きていくために大切なメッセージが伝えられるという、確信めいたものを感じていたのです。
くみちょ。はその直後のインタビューでこう答えています。
「初めて見たんで、始まるまで胃が痛くて。第一声からはっきり自分の言葉で話していて、あれだけ自分のことを真正面向いて言えるってすごいなって。わが子ながら立派だなって思った」
このインタビューの様子をメルマガ読者だけに初公開!!!
その後、くみちょ。とのメールのやり取りで発覚した意外な事実。
「弁論大会は、来るなではなくて生徒と先生しか入れないと聞いていたんですよ。親は見学できないって1年の時から言われていてね。先生と話す機会があって確認したらそんな事はないって聞いて、うわ〜嘘ついてたのね〜と思って、じゃ、行くわよって思って行きました。」
この親子の関係性はとてもおもしろいんです。そのあたりもまた書いていきますので、次回以降をお楽しみに!
byとこちょ。
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