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「あなたの「声」はどう聞こえるのか?」 ー二の湯を振り返ってー

先週の土曜日、映画「僕とオトウト」のプレイベント「二の湯」がオンラインで開催されました。50名を超える方がご参加くださり、大盛況のうちに終了することが出来ました。ご参加くださった皆さま、本当にありがとうございました。

今回は、二の湯でゲストのお話を拝聴しながら感じたこと、考えたことを、上映委員のLindaがこちらで共有したいと思います。

残念ながら二の湯の映像を、ご参加いただけなかった皆さんにお見せすることは出来ないのですが、少しでも当日の雰囲気を感じていただければと思います。


あなたの「声」はどう聞こえるのか?

突然ですが、あなたは自分の声が他人にはどのように聞こえているのか、そんなことを考えたことがありますか?かく問いを投げかける私は、つい先日自分の声を耳にする機会がありました。その時、レコーダーから流れてくる自分の声が想像とは大きく異なっていることに衝撃を受け、その落差にしばし愕然としました。


私は自分の声に非常に強いコンプレックスを抱いています。生来活舌が悪く、人前では緊張のあまり声が小さく震えがちに。かてて加えて、声音も悪いとこられては、「意地でも人前で話してやるもんか」なんてうら若きLindaは何度心に誓ったことでしょう。けれど、そうは問屋が卸すまい。可惜若き盛りをこの悪声と共に添い遂げねばならなくなったのでした。


とまあ、こんな風に書いてみたものの、現金なこの私の場合は、あの憧れの岸惠子でさえ自分の声にコンプレックスを抱いていたと知り、況や私がどうして悩むことがあるだろうかと早々に開き直ったのでした。


元町プロダクション4_3


二の湯ゲスト 石倉悦子さんのお話

さて、私の「失われた声を求めて」きた話はさておき、どうしてここでこんな話をしたかと言えば、二の湯のゲストでご登壇された石倉悦子さんの、あるお話が非常に心に残ったためです。

ここで少し石倉さんの説明をいたしましょう。石倉さんは、高木監督と同じく「元町プロダクション」に所属され、一本の映画を撮られました。「妹はピンクがお好き」です。障害を持つ妹の和子さんにカメラを向けたドキュメンタリー映画だそうです。(私はまだ観たことがないのですが、石倉さんのお話をお聞きするうちに、とても観たくなりました。ちなみに裏話として、この映画は初上映時間の直前になんとかディスクが焼き上がったとのこと。それまでは池谷プロデューサーがどうにか話を引き延ばして頑張っていたとのことでした笑)  幼いころから障害を持つ妹ばかりが可愛がられ、自分は全然かわいがってもらえなかった。そんなもやもやが映画を撮るきっかけだったのかもしれないと石倉さんは仰っていました。

では石倉さんのお話に戻りましょう。彼女は撮っては映像を見るということを繰り返すうちに気づいたことがあると言います。それは、お孫さんには優しく高い声で話しているのに、妹さんには驚くほど低く冷たい声で話しかけていたということでした。「自分はこんなにも低く怖い声で妹に話しかけていたのか」と驚いたと仰っていたのが非常に印象的でした。そして、映像を撮りながら、自らの「声」を始めとする多くの(気づかなかった)ことに向き合い、さらにそこから、今の自分のことや妹さんとの関係を見つめ直すことに繋がったとお話を締めくくられました。



誰かに「声」をかけるということ

言葉を巡っては古今東西異人凡人を問わず、実に多くの人たちによって喧々囂々たる議論が繰り返されてきました。そこでの主義主張をここで詳らかにする技量は私にはありません。それに私は石倉さんのお話から離れるつもりもありません。ただ私が言いたいのは、石倉さんのお話は非常に本質的な点をついているのではないかということです。それはつまり、誰かに「声」をかけるということは、同時に、その人の感情に寄り添う/生に参与する可能性が私たちに開かれたということをも意味しているのではないかということです。

私たちは日常においてしばしば、何か情報を伝えるための一つの手段として「声」というものを捉えがちです。しかし体感的に気づいているように、私たちが誰かの言葉に傷つく時、それは発言の内容によっての場合もあれば、他方で「声」から伝わる印象によってということも多いのではないでしょうか。あるいは、自分がそのような怖い「声」を放ってしまったという時の後悔とは、「誰かの感情に寄り添う/生に参与する上での配慮を欠いてしまった」という悔いに苛まれるからこそなのではないか。私はそう感じています。

石倉さんが自らの「声」の落差に気づき、そこでどう感じられたのか。そこまでは私にも分かりません。けれど、彼女は「声」が見せるもう一つの顔、そして「声」をかけるということが有するとても大切で、とても愛おしい側面を見せてくれたのではないかと私は感じました。

石倉さんのお話は残念ながらもう皆さんにお聞きいただくことも出来ません。ですが、彼女が書かれたこの映画のレビューはこのnoteにてお読みいただけます。一文一文にそっと息を吹き込むように、大切に紡がれた文章で、何度も読み返したくなる大好きなレビューです。ぜひ皆さんもお読みください


石倉さん、そしてご登壇くださった皆様、素敵なお話を本当にありがとうございました。


(編集担当:Linda)
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【上映委員 タレコミ】
上映委員会の皆さんの声に私はいつも癒されてます
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「僕とオトウト」公式サイト https://boku-to-otouto.com
お問い合わせ bokutootouto@gmail.com

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