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トークショー最終日を振り返って(松尾)


こんにちは、LINDAです。お元気ですか?京都はまた観光客が増えて来て、河原町を闊歩するのも一苦労です。修論執筆の息抜きに、永観堂まで紅葉を観に行こうと密かに計画しています。


さて、トークショーが最終日を迎えてから、はや数日が経とうとしています。元町映画館での上映あたりから監督にも疲れが見えるようになっていましたが、それでも体調を崩すこともなく、連日舞台に立つことが出来ました。監督の不屈の精神、そして彼の強靭な喉には上映委員一同本当に感謝しています。ありがとうございました。そして本当にお疲れ様でした。

続いて、劇場にお越しくださった皆様。皆様がいてくださったからこそ、監督も連日楽しくトークをすることが出来ました。そして上映委員たちも沢山元気を頂き、劇場で素敵な時間を過ごすことが出来ました。本当に本当にありがとうございました。

今日は、このトークショー最終日の模様を、上映委員の松尾さんにお話頂こうと思います。松尾さんは上映委員、そして監督がいつも頼りにしている存在です。私も松尾さんとの会話を通じて、色々な映画や本のことを知り、いつも新しい世界を垣間見るような気持ちになります。活力や優しさに溢れたその人柄と愛は、いつも上映委員会を明るく照らしてくれます。

それでは松尾さん、よろしくお願いいたします。


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10月22日(木)から始まった映画『僕とオトウト』の上映&トークショー。
連日行われた髙木佑透監督と豪華なゲストとのトークショーも22日目、ついに最終日を迎えました。


最終日のゲストは、小川道幸さん。
知的障害を持つ人たちが中心となり番組制作を行う、日本初のインターネット放送局「パンジーメディア」のエグゼクティブプロデューサーです。


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障害を持つ当事者たちが自分の言葉で表現し、その思いや悩みを深く知ってもらえるような番組を放送されています。自分の価値観や想像力をもはるかに超えた世界に触れることができます。ぜひご覧ください。

(パンジーメディアHP→https://pansymedia.com


パンジーメディアは、社会福祉法人「創思苑(そうしえん)」が運営しています。
映画『僕とオトウト』の髙木監督の弟・壮真さんが現在通っている通所施設もこの法人の運営です。「どんなに障害が重くても地域の中で自分らしく暮らすことができる社会」を目指して皆さん活動されています。


自分の価値観をなくして自分も経験するしかない


今は障害を持つ方々と一緒に番組制作をされている小川さんですが、彼らのドキュメンタリーを撮ろうと思い立った当初は、彼らとどう向き合えばいいのか分からず、何を考えているのかも分からないという状態が続いたそうです。

それは、障害を抱える彼らの多くが差別や偏見、虐待などに苦しんだ経験を持ち、小川さんが近づこうとしても拒否されたから。なかなか近づけなくて何を考えているんだろうと必死に考え、ある時、いつも手を動かしている人がいたので、小川さん自身も同じ行動を取ってみることにしました。論理的には分からなくても、同じことをやってみるとなんとなく気持ちが分かってくる、自分の価値観をなくして自分も経験するしかないと思い、半年ほどそういうことを繰り返していくうちに、それまで小川さんのことを拒否していた人があちらから手を伸ばしてきてくれたそうです。

小川さん自身がこのような経験をされているので、髙木監督が映画の中で弟・壮真さんのことが分からないと悩む姿に、とても共感されていました。



世界観が広がっていくと、いろいろな生き方ができる


小川さんは髙木監督の弟・壮真さんに2度会ったことがあるそうです。

初めて会ったのは映画『僕とオトウト』撮影後からほどなく、壮真さんが通所施設に通い始めた頃でした。環境が変わって不安が大きかったからか、映画の中の壮真さんとあまり変わらなかったそうです。それから1年経って2度目に会った時は、その変化にびっくりしたそうです。通所施設にもだんだん慣れてきて安心感が出てきたのか、とても落ち着いていて表情も柔らかくなっていたからです。農作業もよく行っているし、週に何回かウォーキングにも行っていてとても元気だったと壮真さんの近況を嬉しそうに教えてくださいました。

「新しい環境で少しずつ慣れていって、彼の世界観がどんどん広がっていくと、いろいろな生き方、暮らし方ができるのかなと思うんです」

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「夢はかなう!どんなに障害が重くても」


障害を持っているからといって止めることはせずに、どんどん外に出ていくことを推奨される小川さん。
かつての大冒険についてもお話ししてくださいました。

ある日、小川さんは、知的障害を持つある人に「僕もエベレストに登れますか?」と聞かれたそうです。「エベレストはとても無理だけど、練習したらトレッキングぐらいはできるかもしれない」と答えたら、なんと、彼を中心にしてすぐに山岳部が設立されました。それから、2年半ほど準備を重ねて、とうとう標高4200mのアンナプルナのベースキャンプへ!

この冒険には、障害を持つ7人の仲間たちが挑戦。
その中には、ほとんど山に登ったことがない人や、重度の障害がある人もいらっしゃったのだとか。それでも、行きたいという気持ちや可能性をつぶさずに、どうやったら実現できるのかを考えたそうです。

現地でも高所恐怖症でパニックになったり、高山病で苦しんだり、厳しい現実と試練が待ち受けていました。彼らは果たしてベースキャンプにたどり着けるのか… その様子は、ドキュメンタリー映画になっています。こちらから予告が見られますので、ぜひご覧ください。

『ヒマラヤの青い空と白い雲がくれたもの』予告編→https://youtu.be/wleMP5bNIsY


障害を持つ人たちがひとつひとつ夢をかなえていく姿を身近で見ているうちに、「(できないと)僕らが健常者の立場で決めつけているだけじゃないか。それを取っ払っていくと、もっといろいろなことができるんじゃないか」と思うようになったそうです。そして、髙木監督が映画『僕とオトウト』を作ったのも「自分の中にある価値観をどんどん崩していく作業だったんじゃないかな」と仰っていました。
小川さんのこの思いは、先に紹介した映画のキャッチコピーからも強く、そして温かさと共に伝わってきます。

「夢はかなう!どんなに障害が重くても」


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最後に、小川さんから髙木監督へ質問がひとつ。

小川さん「壮真くんはあと1〜2年経ったら、お兄さんからも自立して、街のグループホームで暮らすかもしれませんよ。東大阪では、重度の人もグループホームで暮らして、ヘルパーさんたちと自由に買い物したり、ごはんを食べたりしています。あと1〜2年ぐらいで壮真くんが自立したら、すごいね!そうしたら、どうします?」

髙木監督「ちょっと寂しくもあり、でも、いや、僕も負けずに頑張るぞ!という想いですね」

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小川さんの優しくて力強い、そしてユーモアたっぷりの語り口に、会場全体が引き込まれ、あっと言う間の30分でした。

映画『僕とオトウト』の上映は、京都みなみ会館で続いています(11月18日(木)まで)。
まだご覧になっていない方も、もう一度観たい方も、ぜひ!


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                              (松尾)


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松尾さん、ありがとうございました。ご自身の目で実際に世界を見つめ、色々な方との交流をじっくりと重ねてこられた松尾さん。そんな彼女だからこそ、小川さんの言葉に込められた大切なものを丁寧に拾い上げ、こうして優しく私たちに語り掛けてくださっているのかもしれません。


どんなに大変な時であっても、彼女は「きっと最後には素敵なものが待っているはずなんです。だからみんなで私はそこに辿り着きたいなあ」と言って、私たちをいつも励まし続けてくれました。

様々な理由で、トークショー最終日まで活動に参加できなかった委員もいます。また連日劇場に来るのではなく、夜遅くまでメール対応など事務作業に徹してくださった委員もいます。そんな皆さんと共にこれからは、この思い出を大切に温めていきたいと思います。それは、私だけの希望ではなく、松尾さんも、他の上映委員たちも、そしてきっと監督も考えておられることなのではないでしょうか。

この映画に関わって下さった皆さん、本当にありがとうございました。上映はまだ続きます。どうぞ最後まで引き続きよろしくお願いいたします‼



(編集担当:LINDA)

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【上映委員 ひとこと】

劇場公開前は、夜中まで会議と称して語り明かし、翌朝にはグロッキーだったこともしばしば。時にはぶつかり合ったり、投げ出したくなったりすることもあったのだけれど、そんな思い出がどれも今は愛おしく思えます。惜春の情を温めていたら、俵万智のある歌を思い出しました。

「青春という字を書いて横線の多いことのみなぜか気になる」

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【劇場公開情報】2021年11月9日現在
上映後の、監督&日替わり特別ゲストによるアフタートークは終了しました!お越しくださった皆様、ありがとうございました
詳細はこちら→ https://boku-to-otouto.com/infomation/


大阪 @シネ・ヌーヴォ(本編48分、アフタートーク30分)
終映しました。たくさんのご来場、誠にありがとうございました!


京都 @京都みなみ会館(本編48分)
11/18まで上映しています。詳しくは京都みなみ会館ホームページをご覧ください。
https://kyoto-minamikaikan.jp/movie/12338/


神戸 @元町映画館
終映しました。たくさんのご来場、誠にありがとうございました!

「僕とオトウト」公式サイト https://boku-to-otouto.com
お問い合わせ bokutootouto@gmail.com

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