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妹との関係性を考える(蓮本美里)

最近は朝晩の冷え込みが厳しくなってきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。元町映画館のある神戸・元町商店街では、ハロウィンが終わった途端にクリスマスソングが流れ始め、アーケードにはクリスマスのリースが飾られ始めました。ついこの間まで夏だったような気がしているのに、世間はもう、クリスマスや年末に向かっている…そんな季節の移り変わりの早さに全くついていけていない、映画「僕とオトウト」上映委員会の蓮本が、今回は蓮本目線のトークショーレポをお届けします。


皆さんもご存知の通り、元町映画館では、10月30日から1週間、映画「僕とオトウト」が上映されました。そして上映後には、監督と素敵なゲストの皆さんによるトークショーが毎日行われました。トークショーの時間はなんと1時間。監督のお話もゲストのお話もたっぷり聞ける、なんとも充実した時間をお客様には過ごしていただけたのではないかと思います


その中でも11月1日には、神戸きょうだい会・元町プロダクションメンバーの石倉悦子さんと共に、私、蓮本がトークショーに登壇し、お話しする機会をいただきました。

この日登壇した髙木佑透監督、石倉悦子さん、そして私の3人の共通点は、障害者の兄弟姉妹すなわち「きょうだい」であるということです。この日のトークショーでは、そのような共通点があることもあり、家族の成員それぞれがどのように障害に向き合うか、という話題が多く上がりました。トークショーは非常に盛り上がり、その場では話しきれなかったことにも少し触れながら、振り返ってみたいと思います。


石倉さんは、知的障害を持つ妹さんにカメラを向けたドキュメンタリー映画「妹はピンクがお好き」という作品を作られています。その中で感じたことも交えながら、障害のある人との関係性について話されました。映画の撮影・編集を通して、ご自身の妹さんのことを改めて考えてみると、妹さんは、うまく表現することが難しくても、いろいろなことをちゃんとわかっている、と感じたそうです。そして、妹さんから与えてもらっているものがたくさんあることを知ることができたということでした。それは映画「僕とオトウト」を見ていて、髙木監督の弟・壮真さんにも感じたそうです。

また、石倉さんは障害者の親という立場でもあることから「親亡きあと」どう暮らしていくか、ということをきょうだいの目線と親の目線の両方で話してくださいました。障害のある方が暮らす方法にはいくつも選択肢があります。例えば、家族の中で暮らすこと、施設の中で暮らすこと、そして、支援者の方の手を借りて自立生活をすることなどです。その選択肢の中でも地域で暮らしていくためには、その方がどのように暮らしているか知ってくれている人を増やすこと、そして障害のある方自身もいろいろな経験をしていくことが大切だと静かながらも力強く話されました。

映画の中では、髙木監督から「親が死んだ後、やっぱ僕が、みないかんのかなあ、とか…」という言葉が出てきます。石倉さんは、きょうだいが「親亡きあと」について考えるとき、すぐに答えを出す必要があるわけではなく、それを考える過程が大切だ、ともおっしゃっていました。ご自身も、障害のある娘さんを社会に任せることを実践されており、娘さんは支援者の方とともに生活されています。私自身もこのお話を聞いて、これからについて考える際の視界が開けたような気がしました。


私は、4歳下のダウン症の妹とのエピソードを交えつつ、映画を見て感じたことをお話しさせていただきました。私と妹は、自他共に認める仲の良い姉妹です。その一方で、私は妹をかわいがるあまり、自分が幼い可愛い妹にいつも何かを「してあげている」立場にいると内心感じていました。

しかし、自分が大学に進学し一人暮らしを始め、妹と離れて暮らすようになってから、その考え方が少しずつ変化してきました。それは、妹が学校や作業所など、社会の中で自分の力で人との関係を構築し、いろいろなことを経験して、自分の力で考えていたことがよくわかったからです。妹のことを今までよりも客観的に見つめるようになったことで気づいたことでした。妹は、私が一方的に何かを「してあげる」存在ではなくて、お互いに助け合って生きていける存在なのだ、と考えるようになりました。

このことは、映画「僕とオトウト」の中で髙木監督がおっしゃっているようなこととすごく通じるものがあると感じていて、この映画は、私と妹の関係を優しく支えてくれるような作品だと感じています。


そして、映画の中では、壮真くんが兄の髙木監督に全身を使って愛を表現するシーンがあります。「僕とオトウト」という映画について話す時によく取り上げられる、印象的なシーンのうちの一つです。そのシーンから垣間見える、存在全てを包み込むような愛についても話題が上がりました。私の妹は、どんな格好の私にもいつも「かわいいね」と言います。私はそれがどういう意味なのかずっとわかりかねていましたが、最近それが「美しい」「美しくない」というような美の基準を通り越した、私そのものを受け入れてくれる愛情なのかもしれないと気づいた、というようなことがありました。

そんなエピソードから、髙木監督は愛を伝える難しさと尊さについて話されました。言葉で伝えるのは難しいからこそ、全身でストレートに愛を伝えることに尊さを感じる反面、そのようにストレートに表現することを避けてしまうことのもどかしさがあること。そんなお話には、私もすごく共感しました。

さらに、映画の中で、髙木監督はお父さんと改めて向き合い、自分の気持ちをぶつけるシーンがあります。そのシーンから、分の気持ちを伝える難しさ、その一方で、相手が自分と全く同じ意見ではないとしても、相手がどんなことを考えているのか、対話することで知ることの大切さについても話されました。ここでは、あのお父さんとのシーンの撮影秘話も明かされました。画面の端に写っているウイスキーボトルの裏話には会場の皆さんも大盛り上がりでした。


最後に、私はこの映画に出会って、今の自分を見つめ直すこと、そしてこれからの自分を考えることができたように感じています。ですが、映画を見て感じること、思い出すことはきっと人それぞれです。ぜひ劇場で、ご覧いただきたいと思います。


映画「僕とオトウト」上映委員会 蓮本美里


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【劇場公開情報】2021年11月8日現在

大阪 @シネ・ヌーヴォ(本編48分、アフタートーク30分)
11/8(土)-11/12(金) 13:45~
http://www.cinenouveau.com/sakuhin/bokutootouto.html
※各回上映後 、監督&日替わり特別ゲストによるアフタートークを行います!
詳細はこちら→ https://boku-to-otouto.com/infomation/

京都 @京都みなみ会館(本編48分)
11/8(日)-11/11(木) ①11:30~ ②14:00~ (1日2回上映になりました!)
11/12以降の上映も決定しています。詳しくは京都みなみ会館ホームページをご覧ください。
https://kyoto-minamikaikan.jp/movie/12338/

神戸 @元町映画館
終映しました。たくさんのご来場、誠にありがとうございました!


「僕とオトウト」公式サイト https://boku-to-otouto.com
お問い合わせ bokutootouto@gmail.com



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