プレゼントは私的な

一昨日は母の誕生日だった。
プレゼントはどうしようかというところだけれど、母は欲しいものが多いタイプではない。
毎年定番のものに落ち着いてしまいがちなのだけれど、ここのところそれもたまってしまっているようだった。

せっかく時間に自由がきく生活をしているのだから、とにかく今年は顔を出そうと決めていた。
花屋さんで花でも買って行って、お祝いは直接言ったろうと。

プレゼントは私的な演出だけれど、顔を出そう出そうと思いながらなかなか行けていないので、僕自身にとってもいい機会だ。
当日は彼女が仕事の日だったので、次男の迎えの時間までに行って、一時間ほどで戻ってこようという算段をつけた。

みんなを見送ってから急いで家事を片付ける。
家事の進みはよかったと思っていたのだけれど、一時間も顔を出せそうもなくなってしまった。本当は行き慣れたお店で花を買うつもりだったのだけれど、最短距離で行くために道中寄って行けるお店を調べて急ぎ足で家を出た。

古くからある街の花屋といった感じのお店だった。作り置きのものから良さそうなものを選ぼうかと思っていたけれど、そういうものは置いてなかったので一から作ってもらう。入れて欲しい花を一輪だけお願いすると、いい具合に仕上げていただいた。

薄いピンクと黄色を基調としたふんわりと明るい雰囲気の花束だった。
プレゼントを手に実家へと歩を進める。もうそろそろ着くというところで、母の後ろ姿が見えた。
ちょうど犬の散歩から帰っているところだったのだけれど、突然のことでどうやって驚かそうかと考えている内に先に気づかれてしまった。

母も唐突な息子の来訪に驚いていたので、まぁそれはそれで良い。
家まで少し一緒に歩いてうちに着くと、帰る時間まであと15分というところ。本当に短くなってしまった。

取り急ぎお祝いの言葉と、プレゼントを渡した。
プレゼントの花が喜んでもらえてホッとしていたところで、父名義でのプレゼントが郵送で届いた。

二年前に父が亡くなってから、気丈に振る舞おうと努めているものの、父がいなくなってしまった穴は未だに埋まることはない。父名義でのプレゼントは兄のサプライズだったのだけれど、これにも母は驚いて、誰が寄越してくれたものだろうかとおっかなびっくりしながらプレゼントを開けていた。

短い時間だったけれど、笑って過ごせていい時間だった。
そろそろ帰ろうと父の仏前で手を合わせていると、母が涙を流していた。
誕生日なんか来ても嬉しくないと思っていたけれど良かったと、そう言いながら目を拭っていた。

出かける前にはあまり短時間になってしまうくらいなら日を改めた方がいいかとも頭をよぎったけれど、やはり顔を出せて良かった。

また来るねと、笑顔で手を振って実家を出る。
予定時間を5分ほど越えていたけれど、足取りは軽かった。

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