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靴たちの声

今朝、朝顔が咲いた。
1年前、ぼくの目は、誰を迎えるでもなく、日本家屋の玄関にあった。

石畳、敷石、玄関土間、沓脱石、上り框。玄関の脱ぎ置かれた靴。どの靴がどういう順番でどう脱がれたのか、なんとなく想像したくなる。慣れた靴、よそよそしい靴、行儀の良い靴、遅れてきた靴、とりあえずの靴。

そこに人の存在を想像できる空間は、人がいなくてもあたたかい。指紋のように形跡が残っている。それは靴にだけでない。家や庭をカタチづくる木や石の素材が丁寧にしつらえられている。長い時間それらが丁寧に使われて、これからも使われる予感がある。そこには通り過ぎてもなお、生きる時間がある。

ちなみにここは「うち」ではない。千住仲町にある「仲町の家」という芸術活動創造拠点。通りから石畳を抜けると、千住でも珍しくみどりと木漏れ日があふれる庭と出会い、曲がるとこの日本家屋の玄関にあたる。誰でも気軽に立ち寄ることができる心地よい庭のある場所。

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