【毎週ショートショートnote】「塩」「人」
「敵に塩を送るって知ってる?」
「困っている敵を助ける、的な意味でしょ?」
塩で食べるトンカツが有名なお店で讃岐の藻塩を掛けながら、私は彼の質問に答えた。
「今はね。でも昔は違った。とある南の島に塩人と呼ばれる人達がいてね」
「しおんちゅ?」
「そう。彼らの汗や涙は塩を精製することができたんだ。塩は貴重品。物好きな偉い人が黙っちゃいない。捕らえて力仕事で無理やり汗をかかせていたけれど、嬉し涙から採れる塩こそ至高の一品と知るや力仕事はさせないようになって。自慢の塩人を受付嬢のように玄関に黙って座らせる習慣ができると、彼らは盛り塩の語源となる守り塩人呼ばれ、愛想を振り撒かない姿は塩人対応と言われた」
「あ、じゃあ敵に塩人を送ったりもしたのかしら。それでも敵に贈答しているみたいだけど」
「半分正解。敵に塩人を送り込む目的はそっと食事に介入して塩分過多で病気に導くことなのさ」
「え、何それ怖い」
ヒマラヤの黒塩を削る私の手が止まった。
(410字)
こちらに参加しています。
前回のお題「アナログ」「巌流島」
以下、今回の本文作成に至るまでのアイディアめも。
アイディアの羅列
塩:塩対応、しょっぱい、岩塩、海、なめくじ、塩化ナトリウム、汗、塩揉み、盛り塩、
人:
アイディアの組み合わせ
常に塩対応な人の話:
塩職人の話:
涙から塩が精製できる人の話:
頂いたサポートは、美味しいものを経て、私の血となり肉となる。