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【毎週ショートショートnote】「アナログ」「巌流島」

かの有名な剣豪達の聖地をこの目で見たい。

居ても立っても居られなくなった私は旅に出た。
初めて訪れた山口県の港から船で数十分ほど揺られると目的地に到着した。
アナログ巌流島だ。
そこにはデジタル巌流島で何度も見た景色が広がっていた。

ようこそ巌流島へと書かれたゲートをくぐる。
巌流島という名前の響きからゴツゴツとした岩場を想像する人もいるかもしれないが、実際には緑豊かな島である。
整備された海沿いの道を時計回りに半周ほど歩くと、躍動感のある宮本武蔵と佐々木小次郎の像が現れた。

私は像の傍で双眼鏡を取り出し、海に浮かぶ防壁を見つめた。
あれが決闘の地。
あの中に本物の宮本武蔵と佐々木小次郎の象があるのか。

侵食と海面上昇でリアル巌流島はもうほとんど残っておらず、今は防壁に守られて人が侵入することは許されない。

ここはリアル巌流島を遠目に眺めるために作られた、在りし日のリアル巌流島を再現したデジタル巌流島を再現したアナログ巌流島なのだ。

(410字)


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前回のお題「顔」「自動販売機」

以下、今回の本文作成に至るまでのアイディアめも。

アイディアの羅列
アナログ:デジタルの対、
巌流島:武蔵と小次郎、決戦の地、

アイディアの組み合わせ
巌流島がなくなっている話:デジタルに飽きた人がアナログな旅に出る。アナログだけどリアルではない。

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