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1周年を迎える前にサ終するスクフェス2から学ぶカスタマージャーニーとは。

2024年1月25日、その知らせはあまりにも突然やってきました。

2024年3月31日(日) 15時00分をもちまして、「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル2 MIRACLE LIVE!」のサービスを終了させていただくことになりました。

スクフェス2公式ページより

え?????
2023年4月半ばにスクスタとスクフェスを潰してリニューアルしたスクフェス2が1周年アニバーサリーを迎えることなく2024年3月末にサービス終了?????

2023年6月の決算で減損損失を計上していたのでうまくいっていないことは分かっていました。しかし、もともと3DCGを使わなかったり、キャラとの交流もボイスなしのテキストのみだったり、コストを大きく掛けない作りだったので、赤字を極力抑える形で収益の柱ではなくシリーズの広告塔として身を削りながら継続していくものとばかり思っていました。やはりメディアミックスといえどゲーム単独で赤は許されないのか……。

一方で、単独で黒を狙える工夫が凝らされていたかといえばそんなことはなかったと思っています。以前に市場環境からポジションを考えるPMM分析はやっているので、今回はカスタマージャーニーについて考えてみましょう。

カスタマージャーニーとは、顧客がどのようにサービスや商品を知り、購入や利用を検討、決断し、購入や利用を継続するかを想像することです。この検討が足りていないと「あれ? 思っていたより売れないな」「あれ? 思っていたより遊ばれてないな」という事態になります。スクフェス2は4月リリース6月減損損失なので思っていたより売れていなかったのは明白です。カスタマージャーニーの検討が甘かったと言わざるを得ません(或いは甘いとわかっていてもスケジュール的にゴリ押しするしかなかったのかもしれません)。

流石に知名度は十分にあったはずなので、購入や利用を検討、決断することについて、実際に遊んでいた立場(LPは漏らしたくないし、デイリー課題はちゃんとこなしたいし、イベントは出来るだけ効率よく進めたい無課金プレイヤー)から、課金に至らなかった理由、遊びにくいと感じていた部分をつらつらと述べていきたいと思います。

・これまでの課金の成果を無かったことにしたゲームに再度ゼロから課金しようと思えない。
ゲームの仕様以前にこれがいちばんクリティカルだったと思います。リニューアル前のスクフェスへの収益貢献度が高かった顧客がそのまま「またゼロからデッキを組み直しかぁ。よーし気を取り直してまた課金頑張っちゃうぞ!」となるかといわれたら、多くの人はたぶんならないんじゃないでしょうか。思い切ったリニューアルで多くのお得意様を捨ててしまったのです。

・シリーズ毎に別れていない闇鍋ガチャを引く気になれない。
スクフェス2はラブライブ!シリーズの複数作品のメンバーがガチャ対象になっています。具体的には「ラブライブ!」「ラブライブ!サンシャイン!!」「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」「ラブライブ!スーパースター!!」の4作品です。長いので以降はA、B、C、Dで表記します。「AのファンはAのキャラクターがほしいのでAのガチャを頑張って引く」というのはわかりやすい購入動線です。しかしリリース当初は「ABCD全部出るガチャ」しか存在しませんでした。AのURが欲しいのに3%でURが出たとしてもBCDかもしれない仕様によりスタートダッシュで躓いたように思います。ABCD全部まとめてギュッとするハコ推しでも、課金してまでガチャを回すとなると優先順位はあるんだよ。ストーリーは越境しないのになぜガチャは越境させたのか。

・ガチャを回す理由があまりない。
ガチャを引く理由は大きくイベント特攻と戦力強化とコレクションに分かれます。戦力強化に関してはリニューアル前のように何枚も引いて重ねてスキルレベルを上げる必要がないので、同キャラのURをピックアップ中に引きまくろうという力は働きません。また、イベント配布URがそこそこ強いので無償石ガチャと合わせて半年くらいで全属性を全ていい感じのスキルのURで染めることができました。ゆるく遊ぶならこれで十分です。コレクションに関して、ゲームによってはカード特有のストーリーがあったりしますが、スクフェス2は年に1度の誕生日キャンペーンガチャのカードについてくるだけで、通常カードにはありません。カードの絵柄自体は引かなくてもアルバムからいつでも確認できるので、手元に置きたい拘りがなければ誕生日だけ押さえておけばいいでしょう。こうなるともう毎回イベント特攻を使ってイベント上位を目指してくれるヘビーユーザー頼みになるわけですが、その層になってくれそうな多くのお得意様はリニューアルで捨ててしまったので……。ユーザーアンケートで「どういう基準でガチャを回したいと思うか」という旨の質問があったと記憶しているので、ガチャまわりは運営としてもうまくいっていなかった自覚があったんだろうなと思います。

・いまさら3Dモデルがない。
いやわかってます、わかってますよ3Dモデルはコストが掛かるのでスクフェス2でやるべきではないって。でもやっぱりビジュアルが綺麗になっただけの10年前のゲームが求められていたかといわれるとそこはそうではないんじゃないかなと思います。なんでコラボ先の「IDOLY PRIDE」に良質な3Dモデル作ってもらってるんだよ……。3Dモデルじゃなくても今どきの要素は何かしらあったほうがよかった気がします。市場環境が厳しければ尚のこと。

・好きな楽曲でシャンシャンすることがウリなのに好きな楽曲で遊ぶとイベントで不利になる。
上記の戦力強化によるガチャに繋げたかったのかもしれませんが、順位や課題に影響するイベントのポイントは楽曲スコアに大きく依存します。獲得できる楽曲スコアは楽曲によってバラバラです。イベントデイリー課題をこなすには高スコア楽曲を組み込まないと自然回復分のLPだけでは届かない可能性があります。9割くらいは何かしらイベントが開催されています。これらの事象が重なった結果として何が起こったかといえば、せっかく600曲以上遊べるのに、ほとんどの楽曲のクリアカウントが2桁いかない中、とある楽曲だけサービス終了までにクリアカウントが2000に届きそうです。イベントの隙間の月あたり数日のみ、スコアを気にせず好きな楽曲で遊ぶことが許されます。私はこの数日をスクフェスチートデイと呼んでいました。このゲームはランダム選曲イベントを除いて特定の楽曲を事務的にこなすゲームといっても過言ではありません。流石にそれは運営が望んでいたプレイスタイルではないんじゃないかという気がしつつ。このあたりはイベント間のイベント(何を言っているんだ?)の「ふり〜ツア〜」のポイントのボーダーを下げるだけでも文字通りふり〜な時間が増えて大きく改善したと思います。

・高スコア楽曲だけを自由にやらせてくれるわけじゃない。
先と逆の話になるんですが、「いいよわかったよ特定の高スコア楽曲だけ頑張るよ」と開き直ると、今度は通常デイリー課題の「A、B、C、Dの楽曲を1曲ずつプレイしなさい」が立ちはだかります。本当はAの2000回に届きそうな楽曲をひたすらやった方が効率がいいのに、B、C、Dの楽曲も1日1回はやらなければならないのです。イベントによってはそれにイベントポイントが付かないこともあるのでイベント目線ではただただLPを捨てることになります。ポジティブに捉えれば好きな楽曲で遊べる貴重な機会ではあるんですが違うそうじゃない。いちばん酷かったのは「A、B、C、D、Eの楽曲を30回ずつ、Fの楽曲を10回プレイしなさい」という20日間くらいに渡るキャンペーン課題です。チートデイのみではLPが足りないので効率は落ちてもイベントでプレイ回数稼ぐかと考えていたらよりにもよってこのタイミングで「Dの楽曲からのみランダム選曲」というイベントを10日間に渡り開催。高効率楽曲のAとイベント楽曲のDは簡単に到達できましたが、デイリー課題にすら組み込まれていないEとFはめちゃくちゃ苦労しました。イベントの噛み合わせを考えてくれー!

その他にも改修されたもの含めて、イベントを走り始めたら経験値とのバランスがおかしくて延々とランクアップを繰り返してLPが増え続けたり、デッキに同キャラを組み込んでも絆ポイントが1人分しか増えなかったり、未フルコンの楽曲がソートできなかったり、おたすけと称してスコアが伸びない低難易度をLP消費つきで半強制的にプレイさせたり。顧客の気持ちに寄り添えていないというか、プレイしたことがない人が仕様を決めたんじゃないかと疑いたくなる箇所が山積で、設計段階からカスタマージャーニーの検討が重要であることを教えてくれます。私は高難易度のフルコン目指して好きなときに好きな楽曲を遊びたかっただけなんだよ。

……と、ここまで書いておいてあれですが、私がスクフェス2の運営にとって想定顧客でない場合は私の思考に合わせてカスタマージャーニーを考えてもあまり意味がありません。私はどんなに気持ちよくなってもお金を落とさないかもしれないですからね。カスタマージャーニーを考える前に大切なことは、ターゲット層を明確にして、それに合わせた顧客ペルソナを作り、ペルソナがどのような思考、行動をとるかを深く想像することです。結局スクフェス2の想定顧客はどの層だったんですか? リニューアルで切り捨ててしまった層ですか? スクスタからの流入を期待していた層ですか?

もしもスクフェス3を開発するのであれば、そのときは想定顧客が触りたくなる動線、課金したくなる動線をしっかり意識した作品を作ってほしいところ。そのあたり最後に残されたリンクラはライブ配信直後にその内容に沿ったガチャを始めたり、それなりにうまいことやっています。コスト高そうだからそれでも赤字かもしれないけれど。

余談
ぷちぐるは死んだ。スクスタも死んだ。スクフェスも死んだ。もうラブライブ !のアプリはリンクラしか残ってない。そう思っているあなた、忘れているんじゃないですか? 伝説のTOKIMEKI RunRunsを……!

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