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スクフェスとスクフェス2に学ぶPPM分析〜スクフェス2に投資価値はあるのか〜

PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)分析とは、自社の事業や製品やサービスを、市場成長率の高低と市場占有率の高低の組み合わせからなる4つのパターンに分類し、投資判断を考える分析手法です。

最近、ITパスポート試験の対策で習いました。単純な分類なので誰でも世の中に溢れる製品やサービスをこの分析にかけてみることができます。単純化されすぎているので正確とは言えませんが、自分がお世話になっている製品やサービスの行末を考えるうえでの参考にはなりますので、頭の片隅に入れておくと面白いんじゃないでしょうか。

まずは分類される4つのパターンについて説明します。

・負け犬
市場成長率: 低
市場占有率: 低

強みもなければ育ちもしない。投資しても花咲く可能性が低く、撤退を考えた方がいい領域です。わかりやすい。

・花形
市場成長率: 高
市場占有率: 高

負け犬の対極の位置にいます。つまり最高ってこと?? というとそうでもありません。市場が成長しているので、見合った投資をしていかないと占有率が下がり、市場の成長が落ち着いた頃に負け犬と化してしまいます。

・金の成る木
市場成長率: 低
市場占有率: 高

花形でちゃんと市場の成長に見合った投資を続けていれば成長が落ち着いた頃に辿り着ける領域です。成長が落ち着いているのであまり追加投資する必要がなく、しかし占有率は高いので利益を産んでくれます。ローコストハイリターン。最高。但しいつまでも居座れるわけではなく、音楽配信サービスの登場でCD売上が壊滅的になったように、世の中の革新によっていきなり負け犬になってしまったり、そうでなくても市場の飽和(全員に行き渡ったり新しい競合が出てきたり)で徐々に負け犬に向かっていきます。花形から負け犬への転落は俗に言うオワコン化です。

・問題児
市場成長率: 高
市場占有率: 低

金の成る木の対極の位置にあります。負け犬ほどどうしようもないわけではないですが、成長する市場の中で何とか占有率を上げるための大きな投資が必要です。ここで占有率が高くなれば花形になることができます。

つまり代表的なサイクルは、負け犬では始める価値がないので最低でも問題児から始まり、投資を重ねることで花形を経て金の成る木にレベルアップして、その後は少ない投資で利益を享受し、徐々に負け犬に向かっていく、ということになります。

QRコード決済のPayPayを例にすると、何ちゃらPayが乱立していた頃はまさに野生児。QRコード決済の市場が成長する中にありながら、まだ十分なシェアを獲得できていませんでした。そこで大盤振る舞いの還元キャンペーンを打って出たり、決済端末を配布したり、採算度外視の投資でシェア拡大に乗り出しました。気がつけば今やQRコード決済は当たり前になっていますし、その中でPayPayのシェアは圧倒的です。盤石な体制が整ったところで、他社クレジットカードの手数料負担という投資をやめて金の成る木へ、というのが最近サービス改悪と騒がれている件に繋がります。

さて、ようやく本題です。

最近、私が遊んでいるスマートフォンアプリの「ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル(スクフェス)」がサービス終了し、「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル2 MIRACLE LIVE!(スクフェス2)」に生まれ変わりました。これらについてもPPM分析をしてみましょう。

スクフェスはスマホで遊べるリズムアクションゲーム、いわゆる音ゲーです。リリース当時の2013年はまだスマホゲームの黎明期で、ポチポチとタップするだけのゲームが主流だったと記憶しています。その中でキャラクターを活かした音ゲーは珍しく、2015年に「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ(デレステ)」がリリースされるまでは圧倒的な強さを誇っていました。2017年にリリースされた「バンドリ! ガールズバンドパーティ!(ガルパ)」について2018年に「もはやレッドオーシャンと言っていいスマホアプリ音ゲー界隈。その中でもスクフェス、デレステに並べるポテンシャルを十分に秘めている」とスクフェスを引き合いに出しながら過去の私が語っています。

このようにスクフェスはスマホゲーム界の野生児、音ゲーに絞れば花形として生まれ落ち、新機能実装やグローバル展開などの投資を重ねてきました。上記の通り5年くらいはユーザー数もどんどん増えて超イケイケだったと思います。そこから競合他社がスマホ自体の進化に合わせてLive2Dや3Dモデルでキャラクターを動かすなどして追随してくる中、スクフェスはそのような大胆な投資に踏み切らず(3Dモデルは別のゲームに託し)、投資を抑えながら圧倒的シェアという先行者特権を活かして利益を享受する道を選択をしました。金の成る木の誕生です。真正面から戦うことをやめたので、ここからは世に溢れる良質なスマホゲームに揉まれながら、サイクルに従って徐々に負け犬に向かいます。

じゃあこのまま負け犬になって撤退しますかというところで「スクフェス2」にリニューアルされることが発表されました。すでにスマホゲーム市場が飽和している中で突然の追加投資だと……!成長が停滞しているということは、新規市場を開拓しない限り、もう金の成る木か負け犬から再スタートするしかありません。どうするつもりなのでしょう。

蓋を開けてみれば、スクフェス2は見た目が綺麗になったスクフェスでした。あっと驚く大きな変化はなく、マイナーな仕様変更に留まるのみ。逆に変化がなさすぎて驚きました。それでいてこれまでユーザーが金銭や時間をかけて集めてきたコレクションはリセットです。遊べる楽曲はめちゃくちゃ増えましたが、今の仕様で新規ファンや出戻りファンが継続課金してくれるかと言われると正直あやしいところ。これまで課金してくれていたファンを突き放してしまった分、スクフェス2へのリニューアルは、負け犬になる日が近づいただけのように思えます。

先に述べた通り、すでに市場成長率は低いため、ここから追加投資でどうにかなる気がまるでしないのがまた辛いところ。せめてリニューアルによってランニングコストが低くなり、売り上げが少なくても利益が出せる構造になっていますように。まずはリニューアルコストを回収できるといいですね。という幸先のよろしくない分析結果となりました。

繰り返しになりますが、PPM分析は単純化されすぎているので正確とは言えません。また運営も同様の分析は当然行なっているはず。加えてリニューアルしなければならない事情があったと言われれば「まぁそうですよね」と察することができる状況なので、リニューアルの選択自体は間違っていないと思っています。私がまだ想像できていないあっと驚く秘策で、半年でも長くサービスが続くことを願うばかりです。

余談
「スクフェス2、この時代に3Dモデルなしかよー」という声が散見されます。3Dモデルは開発コストが跳ね上がるので回収が見込めなければ赤字要因が増えるだけ。ガルパは6周年を機に満を持して3Dモデルを追加実装しましたが首を絞めているような気がしなくもありません。スクフェスは今から追加の大型投資でどうにかできる市場にないので、この時代でも3Dモデルを実装しなかった判断は正解だったと思っています。

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