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【毎週ショートショートnote】「忍者」「ラブレター」

「これは一体どういうことですか」
私はクレームの電話をかけていた。

「おかげで完膚なきまでに振られたよ」
「忍者恋文サービスはどんな手を使ってでも必ずラブレターを忍び込ませるところまで。結果についての責任は負いかねます」
定型文のような回答にため息が漏れた。
「振られたことを怒っているわけじゃないんだ。私が頼んだのは一通のはず。なんで十通以上になってるの。カバンから、ポケットから、引き出しから、いろんなところから出てきて気持ち悪いを通り越して怖いって言われたんだけど」
「それはオプションサービスの分身の術でございます。お客様が選択のチェックを外さなかったのではないかと」
「分身ありが初期設定なのおかしいでしょ」
「他社配達サービスと差別化が必要でして。もれなく暗号化もしています」
「読めなかったってそういう意味か。埒があかない。責任者を呼べ」
「畏まりました」

「お電話代わりました。将軍食堂です」
おい、身代わりの術でドロンするな!

(410字)


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前回のお題「数学」「ダージリン」

以下、今回の本文作成に至るまでのアイディアめも。

アイディアの羅列
忍者:暗殺、忍び、伊賀甲賀、手裏剣、忍術、水遁、火遁、
ラブレター:手紙、恋愛、ヤブレター、恋文、下駄箱

アイディアの組み合わせ
恋人のフリをして暗殺する話:恋文を渡す。恋文は火であぶると文字が浮かび上がる。煙も上がり居場所が特定される。涙ながらにハートを射抜く。
ラブレター配送サービスの話:ラブレターを必ず忍ばせる忍者ラブレター。ラブレターの返信が10通届く。オプションで分身の術をつけられたらしい。文句を言うと身代わりの術でどこかに消えてしまう。

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