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アニメ「ラブライブ!スーパースター!!」~澁谷かのんの過去と現在と未来~

第11話「もう一度、あの場所で」と第12話 「Song for All」の感想です。以下、第12話までのネタバレと過去のラブライブシリーズのネタバレを含みますので、自分の目で確かめたい方は回れ右していただければと思います。

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結局「ラブライブ!スーパースター!!」は何の話だったんですか?? と聞かれたら、澁谷かのんが「-1」から「+1」になった話と答えるんじゃないかと思います。もっと具体的に言えば、スクールアイドルになりたくなかった少女がスクールアイドルになり、ラブライブ優勝を目指す決意をする話です。

第1話の渋谷かのんは随分とやさぐれていました。人前に立つと歌えなくなってしまう弱点のために歌が好きだけど音楽科の受験は失敗。普通科の制服で登校中、うっかり路上で歌ってしまったことで唐可可からスバラシイコエの人と付き纏われることになります。「お終いなんてあるんですか?
好きなことを頑張ることに、お終いなんてあるんですか?」という名言を浴び、何やかんやあって可可の想いに応えることを決めると、突然「未来予報ハレルヤ」を歌い始め、人前で歌えるようになりました。早っ! トラウマ克服早っ!

まぁ、小学生の頃からの弱点がそんなに簡単に克服できるわけもなく、第3話で再び悩まされることになります。可可との2人ユニットのクーカー。どうしても歌えないかのんに代わって可可がひとりで歌うことを決めますが、いざ舞台の上に立つと震える可可。そんな彼女の手を取り、2人で一緒に歌う「Tiny Stars」は涙なしには見られません。

この話以降、特に人前で歌えないという描写はなく、場数も踏んでいよいよ克服できたのかしらと思っていたら、突然トラウマと真正面から向き合わされたのが第11話でした。だいたい嵐千砂都の策略で。かのんが好きすぎる千砂都は気がついていました。かのんは決して弱点を克服していないと。彼女が歌えるのは「みんな」と歌っているからだと。「ひとり」で歌うことはまだできないだろうと。次の地方大会の課題が「独唱」であること、トラウマの発祥地である母校から歌ってほしいという依頼を受けたことから、トラウマ克服ドッキリ大作戦が決行されることになったのです。

過去のラブライブシリーズの感想で「ダメなところも武器に変えるのが、一人前のアイドルだよ」という話をしました。その話の主人公は短所を直接的には克服せずに長所でカバーする選択をした一方、千砂都はかのんに真正面から短所と向き合わせる選択をしました。好きな相手にこれをやるのは結構勇気のいる決断だと思うのですが、かのんなら克服できるという確信があったのでしょう、きっと。

何やかんやあって、かのんは過去の自分と向き合い、「ひとりで歌うこと」の恐怖を受け入れて、「気持ちはひとりじゃないこと」を認識することで、舞台に立つ覚悟を決めました。

過去の回想では、舞台裏で緊張している仲間に「大丈夫だよ」と声をかけておきながら、実は自分も大丈夫ではなく本番で倒れてしまうシーンが描かれています。これは舞台裏で仲間と気持ちの断絶が起こり、物理的にも精神的にも「ひとり」になってしまったのがよくなかったと私は理解しています。あのときまさに「怖いよね、でもひとりじゃないよ」と仲間に声をかけることができていれば、世界は変わっていたかもしれません。現在のかのんが過去のかのんに、当時みんなにかけられなかった言葉を、今、スクールアイドルをやってみたからわかった言葉をかけることで、踏ん切りがついたのだと思います。

ここで披露されるのが「私のSymphony」のかのんソロバージョンなのがめちゃくちゃいい。この曲はもともと「みんなで叶える物語」「私を叶える物語」の2形態で発売されたデビューシングルのうち「私を叶える物語」にのみ収録されたカップリング曲でした。Liella! キャストの初めての歌唱イベント「Liella! デビューシングルリリースイベント「始まりはみんなの空」」でも披露されており、無観客だからこそできた客席から歌う演出で「無名の少女が夢を叶えるために舞台に上がる」をうまく描いていました。この場面もまた「ひとりで歌うことを恐れていた少女がスクールアイドルとして舞台に上がる」シーンであり、どの曲を差し込むかと言われたら個人的に100点満点の選曲です。ライブでも披露してくれるかなぁ独唱。1番を独唱で、2番から5人なんて演出も面白いかなと思います。

かのんの課題も解決し、迎えた第12話の地方大会決勝戦。これまでの話でライバルであるサニーパッションに勝てる要素は特になく「1期では勝てない」がラブライブアニメの定石なので、たぶん負けるだろうなぁと思っていました。結果は予想通り。気になるところもμ'sの「Snow halatio」のオマージュが過ぎるなくらいだったので第12話の感想はあっさりめです。

メイントピックは何といってもかのんのラブライブに対する心の変化でしょう。

かつて千砂都がサニーパッションに相談したときと同じ構図で、かのんもサニーパッションに相談しました。なぜスクールアイドルは競うのか。歌えるだけで十分に幸せではないか。サニーパッションは答えます。すぐ気づく。なぜ勝ちたいか。勝たなきゃって思うか。この言葉の通り、すぐに気がつくことになります。クラスメイトの期待を背負って、クラスメイトの作った舞台に立って、今できる最高のパフォーマンスをして、それでもサニーパッションに負けて。

勝たなきゃ。

部室のホワイトボードに「目指せ! ラブライブ! 優勝!!」と決意表明を書いて1期はおしまい。めでたしめでたし。渋谷かのんという歌が大好きなだけだった少女は敗北の味を知り、これからどうなっていくのでしょう。勝負の血に飢えた獣……にはならないか。

さて、最終回放送から1週間後のキャスト登壇振り返り上映会で早々に2期制作決定が発表されました。2期までやるのがラブライブアニメの定石であり、1期の終わり方が終わり方だったので既定路線。2期制作自体に驚きはありませんでした。2期というより分割2クール目の方が感覚的に近そうです。強いて驚いた点を挙げるとすれば発表が早すぎたことくらい。2期発表は1stライブツアー千秋楽の1月頭だと思っていました。じゃあ千秋楽は放送時期でも発表するのかと思うと放送時期は意外と早いのかもしれません。既に2022年4月に放送予定のラブライブ虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の後になるかしら。まさか被せてくるかしら。それぞれのメインスタッフが異なる今の制作体制なら物理的には被せることもできそうです。いろいろと偶然の重なった、またとない機会のような気がするので被せてみてほしい気持ちはあります。毎話感想書こうとするとめちゃくちゃ大変だけど……。

内容も気になります。入学希望者数と資金の問題は第12話開始早々、雑に解決してしまいました。無印、サンシャインと異なり、学校を救うためにラブライブ優勝を目指す必要はありません。話の主軸はかのんが「勝ちたい」を叶えようとする物語になるのかなぁ。これまでと異なり「全員1年生なので最大3年間描ける」というのも特徴です。さくさく季節が進んでいる気がするので進級イベントや後輩入部イベントもあるのかもしれません。メンバー各個人や1期で見られなかった組み合わせの深掘りも見たいですね。そういえば実はまだ可可の個人回がありませんでした。そのあたりも描かれるのでしょう、きっと。かのんだけでなく、メンバーそれぞれの「勝ちたい」にフォーカスすると、自然な形で可可の話も回収できそうです。

話は戻りますが、1期最後の挿入歌は「Starlight Prologue」でした。最後にしてプロローグ。まさにアニメ1期はLiella! の負けイベプロローグに過ぎなかったことをここでも示しています。すごく有志ペンライト企画のやりやすそうな曲だなぁというのがいちばんの印象でした。完全再現はめんどくさ……難しいでしょうけど、落ちサビのオレンジ一色や、欲を言えばその後にキャラクターごとの5色のラインを引くことはそんなに難しくないのでは。立ち位置が変わらずむしろ運営から引けと言われているのでは。1stライブツアーがアニメ準拠であるならば千秋楽までに20回歌われることになります。会場が1500〜2000人規模のメインステージしかない場所である今回は大チャンス! 「操作が簡単で」「何度も披露される(ことになる)曲で」「やるタイミングがほぼ読めて」「完成すると何が起こるかわかりやすい」と、有志ペンライト企画に対してめんどくさい姿勢の私でも思わずやりたくなる好条件が揃っています。企画があれば、明後日の群馬公演は不完全でも千秋楽の宮城公演に向けてどんどん完成度があがっていくことでしょう。

いや、うん、明後日からもう始まるんですよね、1stライブツアー。展開の早さにびっくりだよ。群馬公演はオンラインでの参加ですが、岡山と大阪と東京は1日ずつ現地で参加予定です。どんなパフォーマンスが見られるのか今からワクワクが止まりません。

余談
資金問題が葉月恋のお父様からの1通の手紙で解決して笑ってしまいました。お母様の証拠隠滅といい、恋ちゃん、両親に振り回され過ぎでは……。あと、可可がサニーパッションの巨大ポスターの入った額を背負って平安名すみれの神社に来たシーンも面白かったです。「お焚き上げかと思った」という友人のコメントにじわじわ。燃やすな燃やすな。

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