08パイロット散華_のコピー

08パイロット散華

「とらえた! こいつだ! この大型機動兵器が!」
「物資を運ぶ艦船を落としたってんだな!」
コロニー連邦から派遣されたマッシとデルチャーは、
青と緑の機体ハバラと、斧を持った緑と黄土色の機体ズッシマ、
それぞれコロニー連邦特別機とコロニー連邦カラダ機とよばれる、
マシンに乗って正体不明機と遭遇した。
 所属不明のその機体は大型機動兵器、
単体で艦船を沈められるほどの戦闘能力を持つのは、
ひとえにこの小惑星の浮かぶ宙域でどこからともなく現われ、
奇襲をかけてくるからだ!

「くっ!目視可では三種のプラズマ砲で狙ってくる!」
「接近戦では巨大な六本の手と、強力な顎に注意だ!
 俺の斧じゃパワーが足りない!」


正体不明機の攻撃を小さい星を遮蔽物にしのぐが、
惑星が砕けて散る!

「がっ! だめだハバラの推力とパワーじゃ、
 小惑星の破片や宇宙ゴミに衝突し続けて、
 損耗する! デルチャー! コイツの注意をひきつけるから、
 ズッシマの短期決戦で、仕留めてくれ!」

「わかったマッシ! ハバラ機の機動性で導いてくれ!」

 両者の協力による攻撃が今、正体不明機に炸裂する!

「くらえ! ズッシマアックス!」

が!?
正体不明機は接近したズッシマ機を腕で薙ぎ払い、
斧を手放させ、
ズッシマの両腕を掴み取ると!

「が、ぐあわわわわわわああああ!!」

両腕が引きちぎられた!

「デルチャー! デルチャーやられたのか、そんな!」

圧倒的な敵機のクワガタ虫のようなアゴによって、
ズッシマ機は胴体部を粉砕され、炉心球を吐き出した。
デルチャー散華!

「デルチャー、お前の残した炉心球でコイツを討つぞ!」
 パイロットのマッシは、高位ランカーである彼に、
デルチャーのズッシマ機が破壊されそして、散華したデルチャーの命を、
目の当たりにして、炉心球を手にし、
ハバラ機の電海場出力が上昇していく!

「お前だって誰かが作った機体なんだ!
 炉心球のパワーを手に入れたオレの機体で破壊出来ない、
 はずがない!」

 ハバラ機の炉心球スロットに炉心球が吸収されて、
1スロット分の出力を得たハバラ機は、
敵の大型機動兵器に向かって推進し、鉄拳を喰らわせる!

「行ける! 押してる! だがこいつ、
 出力の大きな炉を積んでるだけのことはある、
 そしてピンポイントで防いでくるプラズマ制御の腕、
 こいつも死んだデルチャーの様に高位ランカーなのか!?」

 敵の機体の姿が見えない、

「馬鹿な、今の一撃で怯んで逃げたのか?! なっ!」

 小惑星がこっちに突如接近して粉砕さればらけた!

「くっ目くらましか! うっ!?」

 敵機の六本の腕がそれぞれハバラ機の自由を奪い、
パイロットのマッシは敵のアゴが近づいてくるのを知り、
決意を固めた。

「俺が死んでもデータは残る!
 ブラックボックスを回収してくれ!」

マッシは、ハバラ機から戦闘データの入ったブラックボックスを、
無人機で射出し、

「くたばりやがれ! ばけものめ!」

 炉心球の出力を急激に高め!
吸収したもう一つの炉心球と融和させ自爆した!

 爆発! そのインパクトの瞬間まで、
ブラックボックスは確かに記録した!

 そして敵の機影が宙域の闇に去る姿も。


1、全人機シュラスとパイロットのニーガン

 「これが正体不明機と戦闘した結果得たデータです。
 敵機の戦闘力はけた違いであり、炉心球戦における、
 1スロット保有の状態でも、こちらの勝利に結びつきません、
 また自爆を察知されたようで、最後にうつった敵の機影は、
 まったく無傷で去っていきました、
 これほどのプラズマ制御の力を持つ相手は初めてです。
 ニーガン、訊いていますか?」

「ん? ああ、要するにオレの全人機シュラスなら、
 3スロットあるから量産機のジャックを伴っていけば、
 勝てる見込みってことだろ?」

 艦船の視聴覚室で敵のデータを分析する担当官と、
それを聴き入るのはシュラス機のパイロットのニーガンと、
その下につく量産機ジャックのパイロット達だ、
先の大戦で多くのベテランパイロットが命を落としたため、
コロニー連邦では、ロボット戦の花型、クラスタリーグの高位ランカーを、
雇用して、その下にコロニー連邦の兵士たちをつけるという、
異例の対応を行っている、たとえランカーが全人機乗りであってもだ。

「全人機シュラスの設計思想からかんがえれば、
 ジャックの2スロットよりも3スロットを補填できるシュラス機なら、
 3スロット状態で敵を撃滅できる」

「で、ジャック乗りは死ぬってか? 若い命、大切にしろよな」

「ニーガン、ジャック機には緊急脱出装置がついています、
 そしてコックピットをポッドごと射出して、
 あの宙域から離脱できれば、パイロットは回収できます、
 ですから、ジャック機は敵の攻撃を引きつけてから、
 戦線からパイロットだけ離脱し、
 あなたが、ジャック機の炉心球を手にして、敵を撃破してください」

「分かってる分かってるって、じゃあ、
 行こうぜ!」

 全人機シュラスは射出カタパルトにあり、
ジャック機は6機、ニーガンに従ってついてくるということである。

「じゃあ、ニーガン! 全人機シュラスで出る!」

 全人機シュラスは艦船より射出され、
続いてジャック機六機も小惑星帯に射出されて、
例の正体不明機を撃破するために、
作戦行動に出た。

「さて、異常はないか? 新人さん達よ!」
「はっ! ニーガン! 異常はありません!」
「こちらも異常は、な、なんだ!?」

 小惑星の背後から突然機影が現れ、
ジャック機一機からの応答が途絶えた。

「馬鹿! 固まって、それぞれ全方位に、
 警戒を示せ! 炉心球は!?」

「炉心球、電海場波形に捉えられません!
 減衰した? いや、それにしては早すぎる、
 ニーガン! まさか!」

 正体不明機は全身にプラズマ電海場を帯びて、
再び姿を現した、きらめく色は先ほどよりも、
チカラを増してるようである、そして、
コックピットと炉を破壊されたジャック機を、
こちらに投げつけてきた!

「こいつ! 炉心球を取りやがった!
 くそ! こっちも炉心球を補給する!
 二名離脱して、俺に炉心球をよこしやがれ!」

「ニーガン! シュラス機に炉心球を受け渡します!
 受け取ってください!」

 ジャック機のパイロット二名が、ポッドで離脱し、
加速し、宙域から離脱しようとすると、

「砲撃? そんな! 正確過ぎる!うわー!」

 敵の機動砲台が二つのポッドを正確に打ち抜き、
ジャックのパイロットは帰還することなく散華した。

「なんだと! くそっ! 生きて返さないってことか!
 炉心球は、手に入れたが、胸糞悪い奴め!
 とっとと始末してやる!」

 敵機は炉心球を一つ保有している。
対する、シュラス機は二つスロットを埋めた、
炉心球によるパワー差はシュラス機の方が上であるが、
大型機動兵器の元々の出力と質量差、
そして、その巨大な体躯が、シュラス機を圧倒する!

「くそ! やはり3スロットの力がいる!
 もう一機、パイロットだけ戦線を離脱しろ!」

「う、う、嫌だー!」

 ジャック機は一機、宙域からポッドも射出せずに、
逃亡を図った!

「馬鹿野郎! ここで仕留めそこなったら、
 あの二人は無駄死になんだぞ! 腰抜けと、
 後代まで呼ばれたくなかったら!
 黙ってニーガン様に炉心球をよこしやがれ!
 残り二機! 二機!?」

 敵機の狙いはもともと、ジャック機だったのか!
連続した攻撃でジャック機を三機破壊した!

「ば、ばかな! あの機動性、
 そして、六本の腕が、
 炉心球を三つ抱えて!
 まさか、そんなことが!?
 こいつ4スロットなのか!?」

 そう、敵機は全人機シュラスの3スロットを越える、
4スロットの機体、4スロットの状態では、
こちらの電海場バリアもピンポイントガードも、
まるで豆腐のように軽く薙ぎ払われて機体を寸断されてしまう!

「がっ! 見ろ! こんなところで、
 タイリアすまん! データだけは残すぞ!」

 全人機シュラスは両足がもげた状態で、
機体から無人機でブラックボックスを射出した。
今回の戦いで、敵機が4スロットであることが知れた、
そして、高位ランカーが手も足も出ない相手であることも。


2、カラダ機バオン、パイロット花嫁タイリア

「ニーガンが! ニーガンがやられたのでしょう!?
 はやく私に出させなさい! かたき討ちよ!」

「ランカー、タイリア、お待ちなさい!
 カラダ機バオンから降りてください!
 まったく何故、彼女に映像を見せたんだ!?
 だれの差し金だ!?」

 タイリアはニーガンと結婚する予定だったが、
それも無念にもニーガンが散華したことによって夢と消えた、
残っているのは復讐心のみである、必ずやかの敵を討つ、
そう胸に決めたタイリアの心が今、敵との戦いへと、

「誰だ! 射出カタパルトを動かしている奴は!?」
「わかりません!? タイリアに外部協力者が?!」

 タイリアはこのままでは出撃させてもらえないことは、
分かっていたし、何よりも勝算があったので、
制止を振り切れるだけの仕掛けを艦内にするだけの余裕はあった、
ニーガンより高位ランカーである彼女ならもしかしたら?

「タイリア! カラダ機バオンで出る!」

 戦斧を手にした、紫の機体、カラダ機バオンが出撃した!
カラダ機はコロニー連邦が高位ランカーに向けて作った、
専用機に近く、格闘戦や近接戦が主体の戦場において、
優位に立てるように工夫されていた。

「タイリア、タイリア! 聴こえますか?
 あなたがここに来るまで充分に時間があったので、
 敵機が保有した炉心球は減衰し、
 4スロットの力は無くなっていることと思います、
 ですがカラダ機だけでは3スロットが限界、
 ジャック機をよこしますので」

「いらないわ!
 ニーガンの映像を見なかったの?
 足手まといの新兵が余計にいる状況では、
 敵に炉心球を補給させるのがオチよ!
 私ならやれるわ!」

敵の機影が!

「見えた! 喰らいなさい! バオンアックス!」

 カラダ機、バオンのアックスが敵機に命中するが!

「ピンポイントガードか! でもこの連撃に、
 いつまで耐えられて!?」

 タイリアは相手を逃そうとしない、
絶妙な集中力で連続的に敵の手足を狙い、
そして無防備な下腹部を叩こうともし、
胸に一撃を、両アゴの突進を斧で払って、
逃げようとする敵を追撃し、猛進した!

「いける、行けるわ! こいつはそこまで強いファイターじゃない!
 戦い慣れてはいない! ただプラズマ制御でピンポイント、
 ガードをしてるだけ、ちょっと高機能なAIを搭載したくらいで!」

 タイリアは敵の上段に構えると、
振り下ろす一撃に全電海場エネルギーを集中させて、
プラズマ制御のリミッターを解除して振り下ろした!

「私に勝てると思わないで!」

 が、その一撃はスキであった!
狙っていた! 敵機はその一撃を!
二つの機動砲台がバオン機の目を狙い澄まして打ち抜き、
プラズマキャノンは全力でバオン機の頭部を吹き飛ばしたのだ!

「くっ! 油断した! あっ!」

 斧は的確な位置を逃して宙を切った。
敵のプラズマキャノンによる衝撃でバオン機が後ろにのけぞったのも、
影響している。 この戦いは。

「データは残すわ! 受け取って!」

 敵機の強力な両あごが、バオン機をコックピット部で寸断すると、
花嫁タイリアは散華し、バオン機は粉砕され、
宙域を漂う無残な遺骸となった。


「タイリアが、やられた!?」


3、全人機ウルモリ、パイロットシェービアス

「気に入らないな、そんな卑怯な手でやる気なのか?」

「ええ、シェービアス、今回、コロニー連邦は、
 多数のパイロット、ランカーをこの宙域で失って、
 本腰を上げました」

 コロニー連邦の兵士であるシェービアスは、
ジャック機ではなく、全人機ウルモリを与えられ、
その3スロットとシンプルな機動性、運動性が、
ジャック機と似通っていることから、
今回、小惑星帯のある宙域での投入が決定された。

「そんな作戦で本当にいけるとでも?」

 作戦は、こうだ、
先にジャック機の炉だけを起動させて破壊し、
炉心球を取り出して、
3スロットの状態を保持して、敵のいる宙域に向かう、
これにより始めから3スロットを保有している状態で、
ノーガードな敵機を打ち取るという寸法だ。

「にしても正体不明機とだけ名付けていては、
 敵に他の機体があった時に問題があるだろう?」

「敵の仮名は決まっています、グアーロ、
 大型機動兵器グアーロと呼ぶことにしました」

「何にしても気乗りはしないが、私もコロニー連邦の兵士の端くれ、
 グアーロを討つために最大限努力をしよう」

 こうして、全人機ウルモリと共にシェービアスは射出された、
ジャック機は速やかに炉心球を全人機ウルモリに受け渡し、
全人機ウルモリは炉心球、3スロットの力を持って、
4スロット持つという大型機動兵器グアーロ撃破を目指す。

「といっても、敵は炉心球を保有していないんだ、
 この戦い、勝ったも同然のはずだ」

小惑星帯、を全人機ウルモリの高い機動性で、
シェービアスのこなれた操縦テクニックで越えていくと、
敵の機影が見えた、と?

「なんだ、あの光? ! そんなばかな! 蜘蛛の巣だと!?」

 全人機ウルモリはもちろん、3スロット保有の、
強い電海場をまとって、特殊なワイヤーで張られた蜘蛛の巣など、
簡単に破壊して通過してしまえるはずだが、
問題があった。

「これは! グアーロが巣にしているとでもいうのか!?
 あのワイヤーで巻きつけられ括り付けられたのは、
 ジャック機ではないか!? 応答しろ! 生きているのか!?」

 ジャック機の光りを見る限り、起動している?
起動したまま、捕獲して、なんのために?
目視可能な領域に達した時、コックピットが無残に破壊されている、
数多くのジャック機の姿を見知った。

「ばかな!? 艦船がやられたときから、
 今までずっとジャック機を炉を生かしたままで?
 これは餌か! やつのエサだというのか!! しまった!?」

 一手遅れた、グアーロは数多くの捉えたジャック機を破壊して、
炉心球を取り出すと一気に4スロットの力を得た。

「これが目的か! こいつは狡猾だ!
 そして何より、明らかに人の考えの斜め上を行く!」

 グアーロはウルモリを一撃で破壊した。
ブラックボックスは自動的に射出されたが、
グアーロはあえて見逃したのか、
その映像はコロニー連邦を震撼させた。


4、全人機ゴナ、パイロット、アクタス

「アクタス、貴方のチームの助けが必要です」
「気に食わんな、我らアクタスチーム三名をして、
 やっと勝てる相手だというのか?」

 アクタスチームは高位ランカー三名で構成された、
全人大戦期末期に活躍した実力者だが、
なによりもリーダーのアクタスと、
それに尽き従う名も知れぬ二名、
ちょっと特殊なマスクをつけているのが特徴だ。

 ピンクと紫で配色された全人機ゴナは、強力なアームを持ち、
敵機に優位に立ち向かうことが出来る。
攻撃のリーチが長いことによる優位性だが、
敵機、グアーロはそれよりはるかに長いリーチを持つ、
有効なのか?

「なんにせよ、グアーロの巣の位置が分かった、
 敵は多くの艦船を破壊した時に、
 機動戦闘下で大量のジャック機を、
 炉を生かしたまま捕獲し、
 それを利用して容易に4スロットになるというわけだが」

「アクタス、スロットが上回る相手に、
 勝算はありますか?」

「我々はそのために組まれたチームだ、
 ゴナの高い機動性と、
 3点からの多角的攻撃が、
 敵のピンポイントガードを揺るがし、
 確実に一撃を与えることが出来る
 それが我々チームの何よりの強み」

今回の作戦も、3スロットを先に炉心球補給して行うが、

「あまり長丁場になるとこちらが不利だ、
 炉心球の減衰時間がキューポイントシステムで、
 長くなっているとはいえ、
 敵が長期戦に持ち込んできたら、
 その時点でこちらの不利は確定する、
 相手は4スロットを自分の巣で補給できるのだからな」

担当官はうなずき、やがてアクタスチームを見送ると、

「アクタスチーム、全人機ゴナで出るぞ!」
アクタスチームが艦艇より発進した。

 小惑星帯を三機のゴナが越えていくと、
アクタスチームは、前のパイロット、シェービアスが行き着いた、
グアーロの巣まで来た。

「機影、発見! アクタス! 短期決戦で行きましょう!」
「行くぞアクタスチーム、グアーロを攪乱しながら、
 敵のピンポイントガードを不能にする!」

 アクタスは、4スロットを補給したグアーロに対して、
圧倒的な機動性能を持って、これを撃破しようと、
チームが敵の強力なプラズマカノンを回避し、
連続的に来る六本の腕の薙ぎ払いを、
近接で躱して、ゴナのパンチを加える。

 続いて全人機ゴナを操るアクタスが、
振り上げた両こぶしを握りかためて、
ハンマーにして振り下ろす!

 全人機ゴナの三方向からの攻撃が徐々に、
グアーロを押して、こちらの勝利を確定させるが、
このまま押し切れるかというところで!

「後方から?! 敵の砲撃!?」
「くっしまった! ここは奴の巣、
 ということは!?」

 グアーロは後方より二機の機影を確認した、
そう、グアーロは三機いたのだ!

「ばかな!? こんなことがあるのか!?
 大型機動兵器を三機もだと!?
 量産化にこぎつけたとでも!?」


「うわー!」
ゴナ、一機が散華した、アクタスチームの連係はここまでか!

「お前は逃げて、今後に生かせ、
 残り三機はアクタスが引き受けた!」

 3スロットを持つ、ゴナ一機は戦場から遠ざかる中で、
アクタスが三方向から迫るグアーロに機体を引きちぎられ、
バラバラにされて蜘蛛の巣に飾り付けられるのを目視し、

アクタスチーム敗北をコロニー連邦、味方陣営に伝えた。


5、全人機アワナパ、パイロット、スーデアック

「確かに全人機アワナパはその機動性から、
 一度は全人宇宙連盟の量産ラインに乗りました、
 ですから、今回20機集められた訳ですが、
 ジャックを60機用意してくれるのですか?」

 パイロット、スーデアックは高位ランカーとして、
スーデアック隊を操ることで知られる。
 全人機アワナパは3スロットにも関わらず、
量産ラインに乗せられたことのある機動性が魅力な、
特殊な機体であるが、問題はその3スロットを埋める、
炉心球の確保であった。

「安心してください、スーデアック、
 旧式のジャックをサルベージコロニーから60機分の、
 炉を用意して、こちらに送ってくれるようですから」

「なら良いんですがね、
 にしても、スーデアック隊、
 全員を集めて、敵機を撃たねばならないとは、
 敵も相当厄介な相手だと見受けられます。
 グアーロというのは三機だけなのでしょうか?」

 スーデアックは自分の頭を撫でながら、
グアーロの情報を担当官から受け取った。

「全人機ゴナが届けてくれたデータです、
 アクタスチームには酷なことをさせましたが、
 スーデアック、今まで散華したパイロットたちの、
 仇をあなたの隊が討つのです」

 コロニー連邦の各艦船に乗せられた、
アワナパは射出機に乗せられ、発信の準備をした。
届けられた旧型ジャックの炉心を機動させて、
炉心球を補給した全20機は戦場に向かう!

「では、出撃と行きましょうか、
 スーデアック、アワナパ機、20機編成で出る!」

続々と射出されるスーデアック隊の全人機アワナパ、
全身に出来る限りの武装をつけるものもあれば、
最小限にとどめた武装で格闘戦を予想するものも居る、
そんな中でスーデアック隊は小惑星帯を越えて、
4スロットに補給を終えたグアーロの巣へと、が、

「グアーロがいない? だがまだ破壊されて間もない、
 ジャック機や味方機の炉心の残骸が蜘蛛の巣に、
 絡まっているところを見ると、そう遠くない所に、
 構えているとみた」

敵機が三機とはいえ大型機動兵器であることは確かだ、
それを撃破するには相当の苦労が必要とされるが、

「わっぐあー!!!」

「!? アワナパが一機やられた!? どこから?!」

「そ、そんなばかなー!!!」

「また一機やられた! 一体何が起きている!?
 全機一か所にまとまれ!」

 スーデアックの呼びかけに反応して素早く、
皆が、集い、敵の襲撃に備えるが、敵の機動性は思った以上に早い、

「はっ! あぶない! 小惑星がいくつもこちらに向かって!?」
「焦るな! 隊列を乱すな!
 敵機がまだいるんだぞ!
 固まったまま、小惑星を回避する!」

と、小惑星は破裂して飛散した破片がアワナパに衝突する!

「こしゃくな手を! だがこちらも3スロットの力がある、
 こんな小惑星の欠片を幾つ受けたところで、
 沈むことはない!」

「す、スーデアック! 我が隊が散り散りに!」

「くそ、仲間にはきつかったか!
 全員、破片の無いエリアに集合する、
 私に続け!」 

 スーデアックは大急ぎで空間に出ると、
崩れた隊列を集め直そうとするが、

「数が少ない? そんな馬鹿な! あの短時間で、
 10機もアワナパがやられたというのか!」

4スロットの力を持つ、グアーロの想像以上のパワー、
そしてその出力によってアワナパ機はどんどんと脱落していく、

「じりじりと、くそ敵のホームグラウンドでは、
 我々は力を出せない!
 残ったアワナパは何機か!?」
「は、スーデアック、貴方のアワナパを含めて4機です!」
「フォーメーションを組むぞ!
 四機でプラズマカッターとなって、
 やつらに強い痛手を与えてやろう!」

アワナパ機は円形に集まり手を結ぶと、
回転を始めて全方位にプラズマ電海場の力を発しながら、
回転する輪はカッターとなって、小惑星帯を切り刻みながら、
敵機グアーロを索敵して、接近する!

「とらえた!」

 が、二機のグアーロからの正確な射撃が、
四機連係のカッターの軌道をずらしてしまった。

「くそっ! だがこの方法でしか敵は攻略できない!
 そして敵も容易には我々に近づけないはず! ぐっ!?」

四機のうち一機にカッターの輪に対して縦につきあげる、
グアーロの強力な顎が炸裂した!

「一機損傷! このままカッターを維持、持続できません!」
「なんということだ! 三機連係に切り替えっ」

アワナパ機を操るスーデアックは一瞬の隙をつかれて、
コックピットをグアーロのアゴで貫かれ散華した。

「スーデアック! スーデアック! そんな!」

アワナパ機20機すべてはそのままグアーロの餌食となった。


6、全人機アケア、パイロット、セプシー

「アケアを投入するというのは本気ですか?」

「この戦いはもはや人道的なものを越えています、
 アケアのプラズマキックでしか、
 おそらく4スロットを匹敵できる力はありません」

敵のグアーロは容赦などない、となると、
全人機アケアと高位ランカーのセプシーが投入されるのは、
納得される。

「まあ、私は戦うだけです、
 プラズマボールを脚部の底につけた、
 全人機アケアと、私、セプシーなら、
 三機相手でもやってみせましょう」

勝算は無いに等しい、だが全人機アケアの機動性と、
これ以上の補給は消耗戦になると判断した、
コロニー連邦軍部は撤退も見越していた、
ここでアケアの果たした、戦功いかんやにおいては、
巻き返す事も出来る。

「セプシー、無理だけはしないでくださいね」

「死地に追いやろうという担当官としては、
 随分とお優しいことで」

セプシーは全人機アケアに乗り込むと、
射出機にセットされ、発信準備を取った。

「全人機アケア、セプシー行きます!」

既に全人機アケアは3スロットの炉心球の補給を受けているが、
対する、グアーロは20機の全人機アワナパの炉心を、
稼働したまま、巣に捕獲していることだろう、
となると当然、勝ち目の問題になってくるが、

「機影? 一機だから、油断しているな、
 グアーロ! 落とさせてもらう!」

アケア機のセプシーはプラズマキックをグアーロに一撃喰らわせた!
グアーロはすかさず反撃のプラズマキャノンを撃つが、
全てアケア機の足でガードされた。

「アケア機は足に高度なシールドを持つ、
 そして大きな脚部の底にプラズマエネルギーを、
 相手のプラズマエネルギーを中和するバリアボールをセットされている、
 いくらお前がピンポイントガードしたとしても、
 こちらの蹴りにはかなわない!」

4スロットのグアーロに、二度目の蹴りを浴びせると、
グアーロのアゴを叩き折った!

「やはりそうだ! アケア機ならやれる! おっと!」

二機が奇襲にプラズマカノンを撃ってくる、
それは今まで戦ってきた、それぞれのパイロット達から得た、
データで理解出来ていたことだ、そしてそれを躱した。

「お前たちもくらいな! セプシー様に勝てると思うな!」

 アケア機から繰り出される連続した蹴りのラッシュに、
二機のグアーロもアゴで受けようとしたため、
両機ともにアゴを損壊して、
グアーロ三機にダメージを与えた!

「やっぱりそうだ、このグアーロたち、
 そんなに強いファイターじゃないってデータにあったが、
 機体の性能に頼るだけの腰抜けだったか!」

三方向からくるプラズマカノンを蹴りによってはねかえし、
突進してくるグアーロを跳び箱のように飛び越えて、
小惑星をぶつけてきても、アケアの蹴りで逆に飛散させた破片、
これをグアーロ機にぶつけて混乱させる。

優勢だった。 その声を訊くまでは、

「グアーロ全機、密集隊形を取れ!
 次で落とすぞ! 敵機はアケア!
 我々の全機名簿に載っている!
 畏れる相手ではない!」

「人が乗っているのか! やはり!
 こちらセプシー! 貴様たちの所属は、
 なんだ!? 目的を教えろ!
 このまま蹴り殺されたくなかったらな!」

グアーロ機は密集隊形を取るとアケア機に、
体当たりをかけた!

 アケア機はこれを回避しようとする、が!

「つ、掴まれた!
 こいつ手で!
 ええい、蹴りを喰らえ! がっ!?」

アケア機のプラズマキックは空を切り、
セプシーはグアーロ三機にそれぞれ違う方向から、
引っ張られて、六本の腕を合わせて18本の手につかまれて、

「お前ら、一体、何が目的で!」

「我々の事はお前たちは知ることは無い、
 これからもこの先も永遠にだ!」

アケア機はグアーロによって引き裂かれ四散分離し、
コックピットをプラズマキャノンで撃ち抜かれ、
セプシーは散華した。



7、ファブァールとパイロット、ゼック

「信じられんな、アケア機の記録、
 あの複雑な大型機動兵器を人が制御していると?」

ゼックは驚いたようで、担当官に向き直る。

「ええ、ゼック、奴らは三機連係して、
 それぞれまるで体の一部のようになって、
 アケアに襲い掛かったという記録が、
 にしても何故、連中は記録をこちらに残させているのでしょうか?」

「おおよそ、こちらを畏れさせるためだろう、
 情報が多ければ多いだけ、こちらが混乱するとみてだろう」

 コロニー連邦機ファブァールを眺めながら、
ゼックは確実に次の戦闘のイメージを掴もうとしていた。

「プラズマナイフはいけるな、
 シールドも充分、二連カノンも恐らく、
 敵との砲撃戦で有利に働くだろう」

「でもまさか、ファブァールが4スロットだなんて、
 極秘、ですよね?」

ゼックは答えた。

「いつなんどきも味方に隠す情報もあるのだ、
 4スロット機は研究は進んでいるが、
 未だに安定しないことから量産化はされていない、
 我々にはデータが足りないという事だ、
 なら、私が出れば、量産にも乗り出そうというものだろう、
 私が、戦果をあげれば、なおのことだ」

ゼックはいい終ると、ファブァールに屈ませて、
胸のコックピットに乗り込んだ。

「ゼック、ファブァールで出るぞ!」

 射出機は、ファブァールを発進させ、
魔の宙域での戦闘がまた、宇宙を白熱させる!

「小惑星を回避するのも、
 ファブァールの機動性なら!」

 既に4スロットの力を得ているファブァールは、
推力も安定し、チカラなら軽く、
グアーロを上回るはずだ!

「グアーロの巣か! ん?」

 そこには破壊されて間もないアワナパの残骸と、
炉心球を抜かれたのだろう、いくつもの機体が、
飾られていた。

「敵も4スロットならば、
 三機でくるだろう、
 この戦力差、乗り越えてみせる!」

 ファブァール乗りのゼックは、
敵の機動性を理解し、近くの小惑星が不審な動きをしたのを、
見てとると素早く二連プラズマカノンで打ち抜き、
グアーロ一機を捕捉、続けざまに両腕の二連プラズマカノンを、
撃ち続けた、グアーロにダメージが通ったようだが、

「おかしい!? 今の機影、グアーロのアゴが、
 破壊されていなかった、アケア機のセプシーが、
 破壊したものと思っていたが、そうではないというのか?
 いや、そんなはずは! ともすれば、この戦い!?」

 ファブァール乗りのゼックは方針を変更し、
宙域を探査し始めた、途中襲いくるグアーロを回避しながら、
小惑星の浮かぶ宙域、そこで電海場の反応を、
プラズマ制御により確認していくと?

「やはりそうだ! 敵機グアーロは、
 隠蔽された艦艇で修繕、補給を受けていた!
 三機編成で戦いを継続できるのもすべて、
 艦艇のバックアップがあるからか!
 だが、ここまで長く戦い続けるとは、
 こいつら戦闘狂か?!」

 グアーロ三機はゼックのファブァールが、
艦艇を察知したことを知ってか、
攻勢を強めた。

「このゼック、伊達にコロニー連邦を務めているわけではない!」

 ゼックはプラズマナイフをファブァール、腰元から手に取ると、
プラズマナイフのプラズマの刃を出してみせて、
近づくグアーロ三機の18本ある腕を次々と切っていき、
迫りくるあごの追撃を両腕のシールドで凌ぎ、
複数あるプラズマスラスターを全開にして、
グアーロを相手にしながら、隠蔽された艦艇に向けて、

「これが貴様らの母艦だろう! 受けてみろ!
 コロニー連邦の怒りを!」

 二連プラズマカノンを連射した!
4スロットの力で撃たれたプラズマカノンは、
偽装した艦艇のフロート部を撃ち抜き、
やがて爆風とともに艦艇の艦影が明らかになった。

「これは、この色は全人宇宙連盟の艦か!?
 まだ生き残りがいたか!
 く、これは電海場!?」

全人宇宙連盟の艦は電海場によって辺りを、
制御し、小惑星を電海場平面に引き寄せた!

「だが、4スロットを持つ機体は電海場の干渉を、
 微弱にしか受けない!
 この戦い勝機はあった!
 とどめを刺させてもらうぞ!」

 敵の母艦を叩こうとしたとき、グアーロが、
「お前の相手はこの私だ!
 ゼック!」
 グアーロからの通信が入った、
この声は一体?
「貴様! 私の名前を知っているのか?
 だが、今さらなんだという! くっ!」

 三機のグアーロが連携して、
ファブァールに電海場平面を波立たせて、
これをぶつけた。

「今さら電海場戦に入るつもりか!?
 だが、それが何になるという!
 がっ!?」

 ファブァールが電海場平面から離脱しようとしたとき、
グアーロ三機は電海場を利用して飛翔しファブァールに組みついた!

「こいつら、電海場の干渉を無視するだけでなく、
 利用して、戦い慣れてる?
 全人大戦を乗り越えてきたのか!
 だが!」

 ファブァールのゼックはプラズマナイフでくみついた手を、
切り離そうとだが!

「な、これは艦艇の電海場が! 渦上になって!
 メイルシュトロムか! これに引きずり込まれれば、
  4スロットでも耐えられるかは分からん!
 こいつら、これを狙って!」

 グアーロ三機は質量と電海場と出力全部を振り絞って、
ファブァールを電海場の渦に叩きつけると、
ファブァールは波の力によって五体をバラバラにして!

「だが、データは残すぞ!
 4スロット三機干渉による電海場の渦中にあっても、
 無人機よ! コロニー連邦に勝利を!」

グアーロ三機はさすがに、このデータだけは取られたくなかったのか、
奪い返そうと、必死に腕を伸ばしたが、届かなかった。

 かくして、コロニー連邦は全人宇宙連邦の残党だと知れた、
敵に対して本格的に攻勢を強めることになるのだが。

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