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インスタントフィクション妄想解説#2「あなたには愛する人がいますか?」

noteで投稿されているインスタントフィクションを勝手に解釈させてもらっています。どうも墓穴掘男です。

今回はのぶゆきさんが2022年3月11日に投稿されたインスタントフィクション「みどり男」を読解します!

あくまで個人の会見であり、作者の意図を読み取ったものではないことはご了承くださいませ。
※下記から内容のネタバレが入っているのでぜひインスタントフィクションの記事から閲覧ください。


彼は緑が大好きである。

この話の主軸は、ある「彼」という存在の話から始まっており、彼の趣味趣向が描かれている。お気に入りのカーディガン。ニューバランスの靴、お財布。それもすべてが緑色でそろえているところから、色のこだわりがかなり強いことがわかる。わたしも好きな色はもちろんあるけど、特に身に着ける物や服装にまでそれが反映されているのかと言われるとそこまで色にこだわった物を揃えたりはしないだろう。なぜ彼は緑色にこだわりがあるのか?

緑色の持つイメージ

緑色が持つ性質には沈静色、重量色といった色の特徴があり、リラックスさせてくれるような気持ちを穏やかにする効果がある。また黄色と青色の混色でも作られる緑は2つの色と似たイメージもあり、沈静、安定の青色、集中や緊張などの黄色が合わさっているとも言える。
緑色の性質っていい意味で若々しさやフレッシュさがある分、少し青臭いというかまだまだ若い、未熟的なイメージもある。もしかしたらそんな深層心理がいい面悪い面も総じて好きな色なのかもしれない。

みどり男は散歩が大好きである。

ここで「みどり男は散歩が大好きである。」と先程まで「彼」という表現だった一人称が「みどり男」になっている。もしかしたら普段の「彼」が緑色を身にまとったときだけは「彼」→「みどり男」へと変身している、または彼自身が「俺は今からみどり男だ」という気持ちに意気込みを持っているのかもしれない。そんな「みどり男」は普段から木々や田んぼなど緑に溢れた場所を散歩することが大好き。これは散歩を日課にしていることにまた意味があるのか?はたまたみどり男じゃないと散歩をしないのか?「彼」の状態ではもしかしたら散歩をしないのかもしれない。それもまたなぜなのか?

彼は神経質である。

ここでまた「彼」が登場する。ここからの「彼」の神経質は文章の中でも説明書きが多く、嫌なことを感じたりすることでストレスになること、最近はウクライナとロシアの情勢や東日本大震災の話題で「全員がしんみりしなくてはならない」
ここの文章がわたしは引っかかった。正直な話をしてしまえば、3月になると東日本大震災の話題が上がることはわかるけども、あれから11年、私が九州の出身ということもあり震災による影響が少なかったことも踏まえても「そういえば東北大震災があったな」という感覚だ。「全員がしんみりしなくてはならない」という感覚がかなり薄れてしまっている。ただ、震災が起きた際に東北に住んでいる友人と震災の話をしたとき、「今でも脳裏に恐怖がよぎる」といっていた。
もしかしたら「彼」もその一人だったのではないか。すくなくとも東北大震災が起きたときに「彼」自身なのか「彼」の身の回りになにか「しんみりしなくてはならない」ことが起きたに違いない。
そして文章のなかで「みどり男はその不安や苛立ち、悲しい感情に敏感であり、自分自身もネガティブな気持ちになるので、毎日ストレスを抱えてしまう。」とある。ここで「彼」から「みどり男」にまたかわる。この文章の前にテレビを見て、世情や政府への不満が言葉に出ているのだが、その過程の中で「彼」は「みどり男」になって不安をぶつけているようにもみえる。「彼」にはできない心のストレスを「みどり男」が代弁しているのか。同じ人間でも「彼」と「みどり男」では何が違うのか?
その答えの核になる文章が次の文。

だから、みどりが好きなのである。

この文章で一つの可能性を導き出しました。
「彼」には「みどり」という大切な女性がいたのではと。
ここでは「みどり」のことを「緑」と表現されていません。
その理由は「みどり」という名前の恋人、または子供、または家族が「彼」にはいたからではないでしょうか。そしてその「みどり」さんを東北大震災の際に、、、

「彼」が緑が好きなのはそんな「みどり」さんを忘れないように無意識にもえらんでいたのかもしれない。「彼」が「みどり男」になるときは「みどり」さんとの思い出、たとえばそれこそ田んぼや木々を二人で散歩して「今日も暑いね」とか「今日も嫌なことがあってさぁ」とか、なにげない会話をしたり、彼の神経質な悩みをすべて受け入れてくれる「みどり」さんを想いながら彼は「みどり男」になっていたのではないでしょうか。
「彼」がストレスをかかえこんで、爆発したときはいつも「みどり」さんが話し相手になって聞いてくれていたのに、「みどり」さんはいない。だから「みどり男」になって彼女を思い出し、「だから、みどりが好きなのである。」と再確認する。
緑色には若さや癒やしのポジティブなイメージがある分、未熟、保守的というネガティブなイメージもある。
「彼」が11年まえ、若き日に経験した東北大震災。彼は純粋にも「みどり」さんを想い続け、そして未熟にも前にすすめないでいるのかもしれない。

彼はみどりが大好きである

「だから、彼はみどりがすきなのである」の次の文が「彼はみどりが大好きである」という2回同じことを繰り返し伝えているところを読むと本当に大事であることが表現されている。ここで最初の文の「彼は緑が大好きである」との違いにはその日付に意味があるのであろう。「彼」はいつもどおりルーティンで散歩に出かけ、
「3月11日。午前11時34分。気温は15度。」と表現されている。
東北大震災が起きた時間は14時46分。11時34分は震災の3時間12分前のことだ。この時間にも、もし意味があるのであれば、「みどり」さんとこの時間まで一緒にいたのかもしれない。そしてその時間で「みどり」さんとは別れた。いや別れてしまったのだ。たとえ「みどり」さんの都合があっても行かせなければよかった。「一緒にいてほしい」ことを伝えて無理矢理でもわがままをきいてもらえばよかったかもしれない。そんな叶わぬ想いと後悔を胸に今日は「彼」のまま散歩日和を満喫して「みんなみどりが好きになればいいのに。。」とつぶやく。

ここでいう「みんな」は争いごとやネガティブな思いを抱えた人たちを指しているのかもしれない。「彼」または「みどり男」がストレスを感じてしまう負の感情をもった人のこと。それに対して「みどり」は緑色の安定やリラックス、希望などの意味も含んで「みどり」という女性のことを比喩的に伝えたいではないか。「彼」が愛してそして彼にとっての「緑」でもあった「みどり」さんのことを誰かに知ってほしかったのではないでしょうか?

今年の3月11日、わたしは友人に誘われて、福島県で行われたチャリティーイベント「SONG OF THE EAETH 311」に参加した。

https://lovefornippon.com/

キャンドルアーティストのキャンドルジュンさんが主催のイベントでバンド演奏の他に福島県の会津唐人凧の夢の凧あげや夜には想いを灯したキャンドルナイトが行われた。

東北大震災が起きた14時46分。福島県民の方とともに私も黙祷をささげたとき、友人のすすり泣く声が聞こえた。それは友人だけでなく、周りからも聞こえてきた。屈服なおじさんだろうが、タトゥーの入ったイカツイ姉ちゃんだろうが、子供を抱えたパパさんだろうが、みんなみんな泣いていた。

わたしもつられて泣いた。

わたしの中で過去になろうとしていた出来事がそのイベントを堺にとても大事な一日に成り代わった。

そんな想いをまた思い出させてくれる「みどり男」を妄想解説させていただきました。

素敵な物語を作っていただきありがとうございます。

ぜひまた素敵なインスタントフィクションを読ませてください!!

それでは、さよならまた今度ね。

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