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「水路」

死者を目の前にした時、視覚というものが無意味に白み始めるのは
何ゆえか。
私が見ていたものは別のものだった。
生者のなかに美しいものを見た時、
それは死者を見出していることでもある。

幻惑されることで生まれるほど、幻想は堕落していない。

物質、肉体はすでにノスタルジーの世界に位置を占めるのか。

しかし目は水平、背骨は垂直、かくも私の肉体はかろうじて天秤のごとし。


©松井智惠     1990年12月 信濃橋画廊個展リーフレットに寄せて

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