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記憶

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架空で空想で夢で現みたいなもの
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#短歌

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母方の祖母はそれはそれは優しい人だった。
初孫ということもあり私は大変甘やかされた。

幼少期の記憶を辿れば、怒られた記憶はほとんどなく、どこかに連れて行ってもらったり、何かを買い与えられたり、学校帰りにはおやつを作って待っていてくれたりと良い思い出しか残っていない。

時は流れて、私が大学生の時分に祖母は大病を患った。生活にこそ支障はないが、決して現代の医学では完治できないものだった。

何度か

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ここはかつて海岸線沿いに浜茄子の花が自生する様な自然が美しいところであったらしい。

今では見る影もない。海岸沿いの土手もコンクリートで覆われた堤防に様変わりしている。

私は昔から事あるごとに海を眺めに行く。

堤防や砂浜に座って寄せては返す波の動きをずっと見ていた。そうすると心が落ち着くのだ。

13年前、

海が全てを奪い去った後は、しばらく海に行くことが出来なかった。私は運良く何も奪われな

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