ケガと心(メンタル)
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ケガと心(メンタル)

Body Updation トレーナー 中田史弥です。今回は、トレーナーとして現場に出ている方なら誰しもが ”必ず” と言っても過言ではないほど、直面するであろう選手の「ケガ」についてお話ししようと思います。「ケガの話」といっても実際に選手が受傷するケガそのものの話ではなく、ケガを受傷した選手が経験する『5つ心の変化』について皆さんと考えたいと思います。

「スポーツにケガは付き物」とは言っても、選手にとってケガというのは、望むものではないし、願わくば経験したくないことだと思います。なぜなら、ケガによって肉体的な痛みを感じることによる苦痛や、ケガによって競技の出場機会が失われてしまったり、場合によっては選手生命にも関わる問題が起きることもあるからです。そんなケガと選手は常に隣り合わせでプレーをしています。
したがって、どの立場のトレーナーも、トレーナーとして選手に関わっている以上、常にケガの予防に努めて選手をトレーニングしたり、治療・ケアをしたり、用具や施設の安全管理を怠りません。しかし、そうした中でも起こってしまうのがケガというもの。だからケガが起きたときにどうその選手と向き合えるかが重要になります。

もちろん、ケガそのものをしっかりと対処することは、最優先事項ですが、ケガをした選手の心のケアも非常に大切です。

1. Denial 拒否
2. Anger 怒り
3. Bargaining 折り合い
4. Depression 落ち込み
5. Acceptance 受け入れ

1969年にGrief Cycle(悲しみのサイクル)というものを精神科医であるElisabeth Kubler-Rossという方が説明されました。その中では、スポーツでのケガのように、人がネガティブな出来事(重篤な病気や交通事故)に直面した際に経験する5つの感情をGrief Cycle 5つのステージとして説明しています。長年、この5つのステージについて『すべての人がこの5つのステージをこの順番で必ず経験する』とされていましたが、Elisabeth Kubler-Ross 本人が『ステージには個人差があり、人によっては経験しないステージも存在する』と自身の理論について補足をしています。ですので、今回説明をする5つのステージは、一般論として捉えていただくのが適当だと思います。ただ、僕自身トレーナーとして活動していて、怪我をした選手に関わる中でこの考え方を学んでいたことで、選手の気持ちに寄り添えて良かったなと思う経験が数多くあるので今回皆さんに共有したい思いました。

Denial (拒否)

まず1つ目は『拒否』です。これは、僕自身、アスレティックトレーナーとして現場で突発的に発症する怪我に対応する中でよくあることですが、ケガをして倒れている選手に立ち寄って行くと、選手は、第一声「大丈夫です」と言います。これは、ケガを受傷したことを選手の心が、受傷直後ということもあり受け入れることが出来ていない状態で、ケガをした、痛い、という事実を拒否する感情です。こう言った場合は、ケガの度合いに関わらず、状態を把握できるまでフィールド、または競技会場からベンチなどに選手を移動させ、まず選手を守ってあげる行動を取ることが必要です。

Anger (怒り)

2つ目は『怒り』です。これは、心がケガをした状況を一旦受け入れ、その事実に対しての感情(反応)です。選手の頭の中には、「なぜ、自分がケガをしないといけないんだ」と理不尽さを感じ、物を投げたり、蹴ったり、相手との接触があった場合は、相手選手への暴言などが怒りの感情として出てきます。この状況の時には、怒りに任せた選手の言動や行動を決して否定せず、ケガの状態の確認作業を淡々と行うことが大事になります。この心の状態の時にトレーナーや監督・コーチのかける言葉は、大抵の場合、選手の頭には届きません。

Bargaining (折り合いをつける)

3つ目は、『折り合いをつける』です。プレーの続行を望む選手はこの感情の時に、試合・練習に戻るための交渉をしていきます。「大丈夫です!」だったり「痛くありません!」「走れます!」と選手は、思い思いの行動、言動で戻れるように話をしてきます。こう言った場合は、先ほどと同じく冷静に「ケガの状態がしっかり確認できて、プレーに復帰できるための体の運動機能が確保されていることが確認できれば戻れる」という事をしっかりと伝えてください。

*体の運動機能とは、痛みのレベル、各関節可動域、筋力、走る・飛ぶ・切り返す・蹴る・投げる・振るなどスポーツに必要な動きが全力でできるかどうか

Depression (落ち込む・嘆く)

4つ目は『落ち込む』です。上記のようなチェックをしっかり行った上で復帰が出来ないとトレーナーが判断し、その理由がはっきりとすると「自分がケガの状況をコントロールする事が出来ない」という事実が選手に重くのしかかります。そのため「嘆く、落ち込む」といった感情が溢れます。この感情の時は、復帰までの道のりをしっかりと説明する事で選手に未来を見せてあげましょう。「自分に出来ることはない」と嘆いている選手に対して何が出来るのか、何をすると出来ないことが出来るようになるのを示してあげることで選手は、自分が出来ることを積み上げていく思考を持てるので未来に向けて希望を持つことができ、今後のモチベーションが生まれます。

Acceptance (受け入れる)

最後の5つ目は『受け入れ』です。ここまで来ると選手の心は落ちついているので、監督・コーチ・トレーナー・両親と復帰に向けた未来を見た建設的な話しが出来るようになります。これからの治療、リハビリの展望や復帰時期を大まかに伝えることで選手のやる気スイッチを押してあげてください。

まとめ

この5つのステージは、もしかすると皆さんの過去の経験上、真新しいことではなく、自然にそうしている。ということも多数あったかと思います。実際にケガを受傷した本人にしか分からない感情というのは、間違いなくあると思います。したがって、この5つの感情のステージを過信して選手の感情をわかったふりをして対処しようとする事は、絶対にしていはいけないと理解はしつつ、選手のケガと心に寄り添うことが必要ではないかと思います。冒頭でも書きましたが、Elisabeth Kubler-Ross 本人の補足でもあるように『ステージには個人差があり、人によっては経験しないステージも存在する』そして、ステージの進行にも個人差があり一つのステージを長く経験する場合もあるので、トレーナーを含め選手に寄り添う人たちは、決して進行具合をコントロールしようとせず、それぞれの感情を経験する選手を否定せず、選手本人と一緒にその経験を乗り越える事で、信頼が生まれて本当の意味で『選手に寄り添う』ことができるのではないでしょうか。

Body Updation トレーナー 中田史弥

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