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バレエのコンクール

バレエにはコンクールというものがあって、様々な古典バレエの作品から、メインのダンスをセレクトして、それを競技として舞台で踊り、順位を争います。

そのバレエコンクールの審査員を務めてまいりました。

そもそもバレエとは「舞台芸術」であって、スポーツではない。そこんとこの一般的な誤解と不理解は、未だにこの国では浸透していないようで、何を上手いとして何をヘタとするかの基準も曖昧である。

似たような存在でフィギュアスケートがあるけど、あれはスポーツ。芸術的な解釈は絶対に外してはいけないけれど、専門的な目でジャッジされて「テクニック(技術)」に得点が付けられて、厳格な基準で順位が決まる。まあそれでも庶民の見るところは「やった〜!成功した〜!!」か「ありゃ〜!コケてしまったぁ!」くらいにしか見えてないけどね。

それでバレエのコンクールなのですが、審査員になるのは「バレエの先生、評論家、現役ダンサーなどなど」といった感じで、この国では特に「バレエのルーツ」がないからロシア派、パリ派、ロイヤル系、純和風?など様々なスタイルや「好み」が出てくるし、有名、上級バレエを「観る専門家」から、有名、上級バレエ団で「踊る専門家」が居たりするから、本当に「何を見ているか?」も分からなくなってきます。

なので「誰が見ても上手い子」が上位に入ってくるのだけれど、その「上手い」ってどういう感じなんでしょうね?

僕はバレエコンクールの審査員を務める上で、まず「どんな踊りをするのか?」というところを見ます。

「どんな踊り」というのは上手いか下手か?というボーダーラインを気にする前に、そのたった1分前後のソロダンスの中に「何を込めて踊るか?」という「ストラテジー(戦略)」の部分を探ります。

僕はコンクールで使用されるバレエ作品は全部熟知してますから、ソロが踊られるシーンの情景や設定、心情を理解しているので、表情はもちろんのこと、目の動きや指先の動き、作法なんかもしっかり見ています。

で、ほとんどのケースで「登場した瞬間に」分かっちゃいます。テクテク歩いて舞台に出てきてポーズを取ったときに、すでに「おおおっ!」って思える子と「はて?」と思える子に大きく分かれますね。

その「おおおっ!」って思える子の最大の特徴は「自分の踊りを披露する子」で、それ以外は、言われたこと、教えられたことを頑張って踊ろうとする、いわゆる「先生の言う踊りをする子」であって、ワレここに無し!という感じです。

なかなか若い子に、作品や人物をよく理解して、それを忠実に表現できる子なんていないです。だからこそ「私、バレエ大好き!踊るの大好き!」とか「ここでこうして踊れることが幸せっ!」という一直線な想いが出てくる子が、かなり光って見えてきますね。

つま先がしっかり伸びている、使えているとか、脚がしっかり上がっているとか。ポジションの使い方がとても丁寧とか。増してピルエットやジャンプなどのテクニックに至っても。実は才能でも鍛錬によるものでもなく「そこに込める想い」が形になって出てきますから、ダンサーの特質はちゃんと見えています。

先生に「違う!そうじゃない!そうそれっ!」って、なんぼ叩き込まれても、踊ってる本人が「???」だったら、どれだけ上手にこなしても「ああ…自分が何やってるか、分かってないんだな…」って見えてきます。

若者たちへ。
「今、踊っていることを幸せに感じること」は一番大事だけれど「これからどうしていくのか。どういう風になりたいのか?」を具体的に描いておくことはもっと大事。それがあるとないでは、成長の強さに雲泥の差が付きます。
なかなか難しいところではありますがね…

あともう一つ!
「音感」は最大のエッセンスです。それが無いだけでアウトです。他のどんなに素晴らしい能力が万人を超えていても、音感がおかしいとすべて台無しです。そこは「表現の第一条件」として、しっかり磨いて下さいね♫

to be continued...

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