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名作探訪 その18 変則的なバッティングと交渉のゲーム 『バザリ』

こんにちは、ボードゲームデザイナーの山田空太といいます。

今回は、ボードゲーム 名作探訪シリーズ その18をお届けします。

ボードゲーム 名作探訪 : 皆さまに是非とも遊んでほしいボードゲーム紹介のシリーズです。1990〜2015年くらいのファミリーストラテジーのゲームを中心として、100作を目指して書いております。


前回の記事はこちらからどうぞ⇩


本日、ご紹介するゲームは、ラインハルト・シュタウペの代表作である『バザリ』。宝石をめぐる変則的なバッティング x 交渉のゲームです。

他プレイヤーとバッティングすれば、そこからアクションの権利を対象とした競りのような交渉が始まるという、バッティング→交渉という2段構えのゲームシステムに特徴があります。

New Games Orderが日本語版をリメイクしています。このnoteを読んで面白そうだなと思ったら、ぜひチェックしてみてください。

バザリ BASARI

Designer: Reinhard Staupe
Artists: John Kovalic, Johnny Controletti, Yusuke Mamada
Publishers: Out of the Box Publishing, F.X. Schmid, New Games Order, LLC
(1998)
3-5人
好み:AA
プレイ時間:30-45分


ゲームの概要

プレイヤーは宝石商となり、市場を巡りながら4色の宝石を集めることを目指します。

プレイヤーは全員サイコロを振って市場をすごろくのように自分の駒を進めた後、各プレイヤーは3つのアクションの中から1つを、秘密裏に選択します。この手順を繰り返していき、誰かが市場を1周したらラウンド終了で決算です。それぞれの色の宝石を、最多で持っているプレイヤーが勝利点を得ます。3ラウンドしたらゲーム終了。



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アクションには、「サイコロ」「勝利点」「宝石」の3つがあります。各プレイヤーは内々に行いたいアクションを選択をし、一斉に公開します。

しかし、『バザリ』はバッティングのゲームです。

バッティング:プレイヤー全員が秘密裏にアクションを選択し、同時に公開するが、このとき他プレイヤーと被っていたら、そのアクションができなくなるというメカニクス。アクションの選択は、カードやタイルを選んで裏向きに伏せたりする。

バッティングの有名ゲームは『ハゲタカのえじき』。

ただ1人が選んだアクションは即実行可能ですが、2人がバッティングすると、どちらか1人しかそのアクションを行えません。そして、3人以上がバッティングすると誰も何もできません。選択肢が3つしかないので、4人以上で遊べば必ずバッティングが起こるわけです。

2人がバッティングしたとき、交渉が起こります。交渉ではお互いに宝石を提示しあって、どちらがそのアクションをするかを決めるのです。「赤の宝石2個あげるから、ここはお願い、譲って」って感じで。

4人プレイでは、2人-2人でバッティングすると、2つの交渉がテーブルの対面で進行するなんてことも起こります(ルール上、厳密には順番で交渉するのですが…)。

『バザリ』での交渉は、自由な交渉ではありません。2人のプレイヤーが交互に条件を提示します。

 ①相手よりも多い数の宝石を提示する
 ②提示する宝石の数はそのままで、宝石の価値を上げる

このどちらか一方を選びます。この制限がうまく効いているので、プレイヤーはそこまで悩むことはありません。交渉は、しばしばスムーズに完了します。

一見宝石がお得そうですが、宝石ばかりに気を取られていると、バッティングをせずに首尾よく事を進めたプレイヤーがいつの間にかトップになっていることも。

ゲームデザインの観点から

『バサリ』の主要なメカニクスは、独特のバッティングフェイズと競りのような交渉フェイズの2つです。それぞれに、きちんと工夫がありゲームデザインされています。

まず、バッティングから。

通常のバッティングゲームでは、プレイヤー全員が同じ対象を競るケースが多いですが、『バザリ』では競る対象がプレイヤーの駒のあるマス目に依存するので、プレイヤーごとに異なります。ここが特徴的。

あるプレイヤーは勝利点が欲しいし、別のプレイヤーは宝石が欲しいし、さらに別のプレイヤーはすごろくを進んで早く決算をしたいといった具合。勝利点と宝石に人気が集中しそうなので、バッティングしないように敢えてサイコロを選ぶっていう手も考えられます。

プレイヤー同士の思惑が少しずつズレているんですね。バッティングゲームは、同じことを繰り返すので、ややもすれば単調になりやすい。しかし、『バザリ』では、このズレのおかげで単調になりません。

バッティングを避けるために、他のプレイヤーが今何を欲しているかということも考えるべき。相手の状況を常に把握しておかないといけないのです。

そして、バッティングしたときに起こる交渉。

交渉ってちょっとハードルが高そう。しかし、ここでの交渉は、前述のように、相手の提示したものよりも良い条件を出すか否かの2択。グッと選択肢が狭められているので、時間がかかりません。相手の条件を上回ると、選んだアクションが実行でき、出せないとアクションができない代わりに宝石をもらえる。交渉というよりは、アクション権を対象にした競りに近いですね。

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ここからは推測ですが、この変則的なバッティングと変則的な交渉を繋いでいるのが、ベースとなるすごろくの部分じゃないかなと思うのです。

『バザリ』はボードを見たら分かる通り、ベースがすごろくなんです。サイコロをふってコマを動かすというところ。最初に見たとき、すごろくである必然性はないと思っていたのですが・・・。

よくよく見てみると、このすごろくをベースにしているところがゲームデザインでは引き算になっていて、ゲームをまとめているんじゃないかなと

誰もが知っているすごろくなので、そこに対する説明は不要なんですね。この引き算によって、バッティングと交渉というゲームの中心が際立っているのだと思います。

まとめ

『バザリ』は間違いなく面白いゲームです。ちょっとひねくれたルールで、交渉というと敷居が高そうですが、ゲームの肝が分かりやすく誘導されているので、初心者にもオススメできます。しっかりとゲームデザインされているゲームであり、言わずもがなの名作と思います。

単調になりがちなバッティングを、プレイヤー間の条件で差異をつけることで、読み合いを促している。一方、複雑になりがちな交渉を、制限をつけることでテンポ良く進ませる。さらに、誰でも知っているすごろくを土台に据えることで、引き算をしている。

そんなゲームです。ぜひ一度遊んでみてください。


今日のnoteは以上です。

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