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出会った意味

某百貨店で靴の販売をしていた時に出会ったお客様とそこで働いていたスタッフのお話。

ショップでの仕事

お店のスタッフは数名程度。外反母趾の方向けの靴を販売していたので、その人に合う商品の提供も必要ですが悩みを深く知ることと、「この人に任せよう」と思ってもらえな信頼を得るための知識・技術の両面で勉強することが重要になると感じていました。

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高い所から商品を取ったり、足の状態を見るために深くしゃがんだりの繰り返し。貧血を持っていた私にとって、想像以上に過酷でした。バーゲン時期ともなると狭い空間に人だらけになってしまうほど。広告に商品が載ると電話で問い合わせがあったり、人気商品はすぐに売り切れてしまうようなお店でした。

技術面での苦労

シューフィッターの資格を持ったスタッフいたので、皮の伸ばし方や器具の使い方を学びました。骨があたる部分の皮を伸ばしてお客様に履いていただき、また調整をする。そんな作業を繰り返して足に違和感がなくなったらお帰りいただく。売りっぱなしにせず、購入後のメンテナンスも行っている店でした。お客様に迷惑をかけてはいけない…そんな気持ちでいました。

ある方との出会い

バーゲン期間中で混雑していた店内で、年配の方の接客をしました。(以後Aさんとします)広告に載っているブーツが見たいということでしたが在庫がなかった為、違う色でサイズが合うか確認してもらい、店で在庫があったので取り寄せの手配をして入荷したら連絡する旨を伝えました。

再来店された際、Aさんから「あなたに接客してもらえてよかった」と言われました。Aさんのお子さんと私が似ているんだそうです。残念なことにすでに他界されているとのこと。「勝手に親近感をもってしまってごめんなさいね」と笑っておっしゃいました。その後も1か月に1回程度来店してくれるようになりました。

初めての顧客

この百貨店ではキャンペーン期間中に自分のお得意様にお手紙を出せることになっています。ちょうどクリスマス時期だったので私はAさんにクリスマスカードを送ることにしました。初めての私の顧客様です。そういう方がいることがとても嬉しかったのを覚えています。
Aさんが来店してくださった時、「あなた肌が白くて荒れそうだからこれ使って。若い人って何がいいかわからなくて…。気に入らなかったらごめんなさいね」と、ロクシタンのハンドクリームをプレゼントしてくださったんです。自分がよく使っているのであなたにもぜひと。

スタッフの反応

接客業でこんなことをしてもらったのが初めてだった私は、近くで見ていたスタッフBに意見を求めました。「私もよくもらうわよ。受け取っていいのよ。」と言われたのでそんなものなのかなぁと思いつつも、私のことを考えながらプレゼント選んでくれたことに感動していました。

態度が急変

スタッフBは売り上げNo,1で接客もスマート。私の体調も気遣ってくれる面倒見のよすぎるお姉さんのような存在でした。しかし、新たにスタッフC、Dが入ってから態度が一変したんです。
スタッフCにはとても優しく対応しているのに、スタッフDには教え方も冷たく、無言からのため息…と傍から見てもわかるほどでした。
ある日、スタッフDと一緒に仕事をしていると「あの…Bさんが怖くて…」と相談を持ち掛けられました。実は私への態度も冷たいと感じていたので、「面倒見のいい人なんだけど。最近私も冷たいなと感じてしまうんだよね。でも仕事が出来るようになったら認めてもらえると思うからもっと頑張ろうと思ってる。わからないことがあるなら私に何度でも聞いてね」と伝えました。私に何か落ち度があったのか、気づかないうちに失礼なことを言ってしまったのかどちらかだと思いました。

貧血の悪化

そんな中、1階から2階への階段の上り下りですら途中で休憩しなければいけないほど息切れがひどくなりました。仕事中も立ったり座ったりで立ちくらみもあったので貧血の検査をした所、6項目で標準値より数値が低い結果となりました。血液の貯蔵庫と言われる数値がゼロになっていたのです。
Bさんの態度にも神経をすり減らしていたこともあり、私はお店を辞める決心をしました。
Aさんが来店した時に事情を説明したところ、とても残念がってくださり、最後の出勤日を教えてと言われました。

最後のプレゼント

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最終日、Aさんがやってきて「あなたのイメージが黄色だったから」とオレンジと黄色の花束をくれました。自分に明るい色のイメージがあると思わなかったので嬉しかったですし、まさかのことに驚きながらちょっとだけお話をして別れました。
お花をスタッフルームに持ち帰ろうとしたとき、スタッフBと目が合いました。その時の目がとても冷たくて私が通ろうとした時に何も言わずすっとどいたのを見て、私が感じた冷たさは間違いじゃなかったなと思いました。

その後

Aさんにお礼の手紙を送って以来、街で偶然会うこともありませんが今でも時々思い出します。
二人に出会って…
わからないことがあった時、疑問を聞けない先輩にはなりたくない。でもそれよりも前に相手が1度で理解できるような伝え方が出来なければいけないと学びました。接客業をしているのですから、お客様の前だけいい顔しているのは違うと思いますし、スタッフがぎすぎすしているとお客様にも伝わってしまいますからね。
Aさんはお嬢様が亡くなる前に色々してあげられなかったと後悔されていました。私とお嬢様を重ねてらしたのだなと思います。出会って数か月で店を辞めてしまったのでとても気になっていましたが、私が出来ることは、後悔をしないよう思ったことを伝えられる人になることだと思います。



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