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旅&バディの究極系『グリーンブック』

バディモノの醍醐味

何よりこの映画は痛快すぎるぐらいに最高な旅&バディ系な映画なんだけど、バディ系映画の醍醐味っていかにお互い同士が刺激し合うかにあると思うんですよね。

せっかくのバディものなのに、片方がもう片方に影響されるだけで終わってしまう映画を見ると、ものすごい一方的な価値観の押しつけでしかなくて、イマイチすっきりしないというか、バディという構図がもったいなく感じちゃう。

人それぞれに長所と短所があって、そこを影響し合ったり、補い合ったりするからこそ、映画的にバディというものが意味を成していくので、対立やカルチャーショック的なものがないと何のドラマ性もなくなってしまう。

その点、この『グリーンブック』は、いい具合に重なり合う部分と異なる部分が生まれにも育ちにもある中で、旅の中でそれをキャッチボールのように交換し合う。その中で生まれるドラマが最大な見所なあたり、バディ映画としてここまで痛快なモノはないんじゃないかと思う。

旅というストーリーが持つ意味

「目的があるのが旅、無ければそれはただの放浪」的なことを『あなたへ』でビートたけしさん演じる役が言っていた。

今回はコンサートツアーという明確な目的がある以上、これは旅なのだが、ツアーを続けていく中で、物語が進むに連れてもう一つの目的が浮かび上がってくる。シャーリーはトニーの才能を見出し、それを育もうとする。トニーはシャーリーの堅物的な部分を、持ち前の自由奔放さで崩そうとしていく。

ただ、これだけを描くのであれば「旅」である必要はないわけで、ある街の中でただ仲良くなるだけでいい。「旅」をストーリーで用いる上で一番意味を成すべき部分は、場所の移動だと思う。

この映画はもちろんこの時代における人種差別を背景に作られている。その中でも取り分け差別の厳しい南部を旅するというのがメインストーリーだ。

一定期間、共同生活を送ることになるという縛りにもなり得るが、今回の「旅」をするという設定は、全体的なメッセージ性のひとつでもある差別と、トニーというキャラクターが得るカルチャーショックという感情を動かす役割とで、様々な機能を果たしている。

題材といい、ストーリーといい、「旅」が持つ性質との相性がバッチリすぎるぐらいバッチリなんだよな~~~。

差別の中の差別

ここらで少し真面目な話をすると、差別というものがもたらすモノは二つあると思う。

それは、差別者に対する憎悪と、それにより生み出される被差別者の団結力だ。

あいつらが黒人を差別する。なら反対に、黒人であるということを貫くことがソレに対する反抗になるんだ。ただそれはある意味で、差別を受け入れることになる。彼らが言っている黒人像にどんどんとハマっていくことにもなるからだ。

社会情勢がその方向に進む一端を見せる一方で、今回の主人公の一人、ドン・シャーリーはもう一つの道を歩んでいる。

黒人として差別を受け入れるのではなく、その差別に断固として立ち向かい、白人達の地位に上り詰めようとしているのだ。

しかし、黒人というだけで白人からは差別をされ、黒人からも「黒人らしくない」と冷たい目で見られる。それでも彼は耐え続ける。抗い続け、戦い続けるのだ。

そんな白人も黒人も味方にはなってくれない彼の、仲間であり友人となったのが、一人のイタリア人だった。(厳密に言うとバンドの2人も)

人種差別なんてしていないと言い、自分自身にもコンプレックスがないように振る舞うトニーも、差別を自分に向けられるとキレてしまう。もしかしたら二人とも、抱えている悩みは一緒だったのかも・・・。

とにかく愉快で痛快な旅

色々難しいような理屈もこねたけど、この映画はとにかく愉快で痛快な旅映画!!

食事シーンはもれなくお腹が減ってしまうぐらいに魅力的だし、キャラクターもよく表れている!!

もちろん音楽も演奏シーンをはじめ、時代やキャラクターに合わせた使い方も上手!!

だけどそんなこと考えなくても、ただ見てるだけで笑えるし、泣けるし、スッキリするし、お腹が空く・・・そんな痛快な映画です!!!!

重い題材が大きなバックグラウンドにある割に、見終わったあとにモヤモヤが残るような映画じゃないので、ぜひぜひ気軽に見ておくんなまし。

文末(あとがき)

今回はじめて吹き替えで見たけど、大塚芳忠さんと諏訪部順一さんのお二人の演技はやはり素晴らしすぎるぐらいに素晴らしいので、ぜひ字幕でも吹替でも見ることをオススメしたいですね~~~。


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