見出し画像

パーマだけを毛先に残して


夏に気合を入れ過ぎていた私は全ての熱が消え失せたような毎日を過ごしていた。やりたいことをやり尽くしたといえば聞こえはいいが、自分の中で原動力となっていた燃えたぎる何かがなくなり、さて、これから自分が向かわんとするところはどこなのかと途方に暮れていた。とにかく季節に影響を受けすぎるタイプなのだと改めて実感した。

こんな寂しい人間だったか、と下を向きトボトボ帰宅する1週間をこなして訪れる週末。誰かに会って話せば何か変わるかもしれないとかすかな希望を抱いて退勤間際、お姉ちゃんに明日の出勤時間を確認した。今日お風呂行かない?と付け加えて。
帰ってきた返事は「いいよ!」フットワークが軽くて助かる。

姉との同居を解消して半年が過ぎた。
月に1、2回はお互いの家に行くか、買い物に行くか、お風呂に行くかしている。今日もノリで決まったお風呂でわたしが弾丸トークをし、それに対してスピリチュアルが大好きなお姉ちゃんがそれ風に励ましてくれる。ことあるごとにスピなのでそのうち変な石を売られそうと本気で心配している。が、本人曰くそれは絶対に無いそう。そうは言われても以前小さな石や火をつけて炊くセージを買い出したときがあったのでまだ密かに気にしている。

今日も21時半集合で24時過ぎに出た。ほかほかに整った身体にトレーナー生地のカーディガンを羽織っても少し寒いと感じることに心地よさを感じる。これはこれでいいな、と秋に酔いしれていたので、やっぱり季節には影響を受けやすい。
帰りの間も会話は止まらなかった。最近甘いもの食べたい欲が止まらなくてね、前まで全然興味なかったのに。会社の大好きなお兄さんが辞めちゃうことになってね。仕事内容も結構変わってね。前まで人に会いたくてたまらなかったのに、今は特にそういうのなくてね。
そんな最近のなんでもない話をしていたら、スピオタクお姉ちゃんが「さえ!周りの環境とか自分の中の変化は何かが大きく変化する前触れだよ!」と何か大発見をしたような勢いで言ってきた。なるほど。半ば勢いに押されたところはあったが、振り返れば確かに些細な気持ちや環境の変化がいくつもあった。何か大きなものに向かって今進めているんだ。

なにも刺激がない毎日と下を向いて歩いていた私が気づかなかったことをお姉ちゃんが肩を叩いて知らせてくれたようだった。そしてそれが繋がってこの先に大きな何かが待っていることを期待させてくれた。誰かに会えば何か変わるかもしれない。そんな希望は間違いなかったようだ。
先に待つ出来事の良し悪しはわからないが、変わり映えのない毎日に刺激を与えてくれるならなんでもいいと思った。変化のない毎日なんてなく、それを気付けるか気づけないかは自分次第、周りの人次第なんだな〜と思いながら、変化とは裏腹に、いまだに3月にかけたパーマが毛先に残り続けるえりあしをなでていた。

この記事が参加している募集

#この経験に学べ

53,596件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?