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ブランドを変更する・しないの問題

4月にスープストックトーキョーさんのツイッターでの炎上騒ぎがありましたね。離乳食を全店で無償提供するとツイッターで発信したところ賛否両論が飛び出し、なんと3,200万件もの閲覧があったとのことです。「離乳食はありがたい」という声の一方、子連れのお客さんが増えることへのネガティブな反応もあったらしい。「子どもが苦手なので行くのをやめます」など、企業としては胸を切り裂かれるような言葉です。結論からいうと、いまでは炎上も収まり平静に帰ったようで良かったです。ただこれを単なる炎上と見ることもできますが、一方で「ブランド体験の問題」と捉えると学ぶことも多いように思いました。

ブランド体験の問題。つまり顧客が抱いている「ブランドらしさ」から外れる時におこる違和感や「私のブランドでなくなった」という感覚。一貫性の問題とも言えます。例えば「安全を売り物にしている自動車ブランドがスポーツカーを発売する」のは違和感があります。あるいは顧客の「マイ・ブランド感」に配慮せず、企業の思惑で変更するときに起こる問題。例えばニューコーク事件のように、米国人のコーク愛を無視して一方的な変更を加えた結果、「俺たちのコークを返せ」と大騒ぎになった事件です。今回のスープストックトーキョーの話はどちらだろうか。ちなみに僕にとっては離乳食を無償提供するのは別段、ブランドを毀損するようなものではありません。ただ一部のコアユーザーにはそうでなかったということでしょう。

ブランドが仮に顧客、それもロイヤルティの高い顧客だけを相手にブランディングしていくと、長い目で見てブランドは顧客の老化とともに老化し衰退していく。つまり「変わらなければよい」というほど単純な問題ではないのです。一方、ブランドに変更を加えると、時には上記のような問題が起こる。未知なるリスクに対処する必要が出るかもしれない。

そんな問題を見事に解決した事例もあります。バーバリーがそうでしょう。かつてバーバリーは「英国紳士が着るトレンチコート」というブランド・イメージを頑なに守ってきました。結果、ブランドは老化。年配者向けの旧態依然としたブランドとなりました。そこに出てきたのがアップルを退職したアンジェラ・アーレンツ女史です。彼女はバーバリーのブランド資産に敬意を払いつつも、若い女性にもアピールするよう新しいコミュニケーションを開始。日本でも例えば安室奈美恵さんがバーバリーを着てランウェイを歩くなど、僕も新生バーバリーの登場感に驚いたのを覚えています。もし当時、SNSがあればこれも炎上していたかもしれません。しかし今になってみれば結果オーライ。ブランドと顧客の新しい関係性を作り出した成功例でしょうね。一方でバーバリーの昔からの良いブランド・イメージも損なわれずに生きている。バーバリーくらいになるとちょっとやそっとのことで出来上がったイメージを壊すことは不可能なのですね。そこでアンジェラ・アーレンツさんは老化の問題を優先し炎上(顧客離反)のリスクをとったと思います。このような話も6月26日の「ブランド体験基礎講座」でお話できればと思います。


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