見出し画像

AIと共存するHIという概念

今週、SMBCコンサルティングさんでネーミングのセミナーをしました。このセミナーは2014年から続いているロングランのコンテンツで、主に事業会社のマーケターが製品サービスのネーミングを決める時の基本戦略と作り方を教えています。今回のセミナーではコンテンツをリニューアルしChatGPTを活用したネーミング戦略を教えました。特にイメージワードを捻出するプロセスで実際にGPTを立ち上げ利用してみました。そしてクリエイティブのプロセスでは対象製品の市場状況を鑑みネーミングのルールに従って新しい製品名を作りました。ネーミングではイメージワードを出すプロセスが一番大変です。コピーライターでもない受講生にとってボキャブラリーの限界があるからです。しかしそのプロセスをAIに任せることで、気づかなかった言葉や、適切な言葉を、瞬時に大量に入手することが出来ます。事実、受講生は労することなく、より快適にクリエイティブワークに入ることができました。快適過ぎてネーミングの「生みの苦しみ」が損なわれたとすら感じるほどです。

「ではネーミング自体をGPTに作らせたらどうか」。当然、これも試してもらいました。こちらも凄まじい数のネーミングが出てきます。しかもなかなかのものです。大規模言語モデルは言葉の繋がりを学習しているのでネーミングにはとても役に立つ。正直、こんな作り方でもいいかなと思いますが、あとは「選び方」ですね。ここは個々の事情や戦略意図が必要になる。ロジカルな思考をクリエイティブに活かす基準はまだまだ人間の領域です。僕のイノベーション戦略のパートナー、コラボ・エイト社のPhil James氏は、このことをAIに対して「HI/ヒューマン・インテリジェンス」と名付けていました。良い定義だと思いますし、HIなくしてAIはその威力も半減でしょうね。

それにしてもChatGPTの進化はおそろしく速い。『動画を作成するAIモデル「Sora(ソラ)」を開発していると明らかにした。文章で指示すると、最長1分の動画を作れるという(日経新聞2月16日)』『人の声を再現する生成AIを開発したと発表した。15秒分の声のサンプルをふき込み、文字を入力することで、話し手にそっくりな音声を合成することができる。母国語以外の外国語へのふき替えにも対応した(同3月30日)』『新型AI「GPT-4o(フォーオー)」を開発したと発表した。従来に比べて処理スピードを2倍に高速化した一方、運用コストを半減した。声で話しかけると、ヒトと同じ反応速度で会話ができる(同5月14日)』。僕も早速4o(フォーオー)を使ってみました。アウトプットがとにかく速い!これに限らず短期間にこのような進化を遂げるのはやはり凄まじいと思うし、なによりこのスピード感がすごい。こういうスピード感は勢いがあり、ノロノロと迷ってばかりいる競合を易々と追い抜き引き離す。同時に、このスピードについていくことで、僕たちの仕事ももっと進化します。AIに限らず道具とは人間の仕事を楽にしたり、それまで出来なかったことを可能にしてくれるものだと言えます。例えば人間は飛べないけれど、飛行機という道具が出てそれが可能になった。江戸時代は大阪まで行くのに歩いていたけれど、いま大阪に行くには新幹線を使う。AIも同様です。一方、世界ではフェイクポルノなどAIを使った倫理的問題、犯罪まがいの事件も起きていますが、それはAIよりもむしろHIの問題でしょう。あくまでも道具というのはそうしたもので、ヒューマン・インテリジェンスによって毒にも薬にもなるものだと思います。