変貌するシルクロードの国・ウズベキスタン鉄旅:⑦優しく親切なウズベキスタン人
8月18日、サマルカンド駅6:37発のアフラジャブ号に乗り込み、首都タシケントへ向かった。
次の動画は、アフラジャブ号がサマルカンド駅に到着する様子である。いま見てもワクワクする。砂漠やステップのなかを疾走しながら、中央アジアの国・ウズベキスタンの経済を下支えしている。
サマルカンド鉄道技術博物館で鉄ちゃん親子に出会う
サマルカンドからアフラジャブ号に揺られて約2時間。タシケントに到着したのは8:47だった。
列車を降りて早速訪れたのは、タシケント駅から歩いて5分のところにある鉄道技術博物館だった。博物館といっても建物があるわけではなく、屋外に往事の蒸気機関車やディーゼル機関車、電気機関車、客車などが並べてあるだけだ。かつて滋賀県の近江八幡駅のすぐ横で古い電車を並べただけの近江鉄道博物館があったが、それに似ている。
入場料を払って大きなキャリーバックを引きながら見学を始めようとすると、「その荷物預かってあげるよ」と職員のおじさんが声をかけてくれ、オフィスまで荷物を運んでくれた。旅行中、ウズベキスタンの人々は親切だなあと何度か感じたがあらためて実感した。
日曜の朝早くだったのでお客は私以外には父と息子の親子連れだけだった。お父さんさんの方が、「キミも好きやなあ」と言った調子で声をかけてきた。言葉はわからないが、鉄っちゃん同士心は通じる。「俺たち親子を撮ってくれ。そのかわりキミも撮ってあげよう」と言われ互いにスマホで撮影した。かのお父さんは息子に熱心に鉄っちゃんの教育をしていた。
ウズベキスタンの鉄道は帝政ロシア・ソ連規格なのでとにかくデカイ。例えば線路の幅は、日本のJRが1,067㎜の狭軌、新幹線や多くの私鉄、ヨーロッパの鉄道などは1,435mの標準軌であるのにたいして、ロシアの鉄道は1,520mmの広軌である。線路の幅が広くなれば、それだけ大きな構造ができる。展示されている蒸気機関車の運転席には自由に登ることができますが、まさによじ登る感じ。登ったのは良いが、降りるのが怖かったぐらいだ。
この後訪問した国立歴史博物館では、帝政ロシアがウズベキスタンを支配下に入れていく上で鉄道が重要な役割を果たしたという趣旨の展示があった。と同時にこの地域の近代化や産業の発展にとって不可欠の存在でもあったと指摘していた。
機関車に付いている「カマ+トンカチにCCCP(ソ連)」のエンブレムがかっこよかった。とくに、上の写真にあるДB-0487という蒸気機関車が威風堂々として良かった。
鉄道技術博物館には、日本の狭軌よりも線路の幅が狭いナローゲージ(762mm)の列車も展示されていた。かつてソ連時代に、青少年教育の一環として子どもたちだけで運営している鉄道があったと聞いている。それかな?と思って例の鉄ちゃんのお父さんに聞いてみました。すると、そうではなく、かつてペテルブルクで走っていた軽便鉄道だというのだ。さすがお父さん、詳しい。これも、お互いに言葉は通じないが、鉄っちゃん同士のコミュニケーションでだいたい意味がわかった次第である。
さっと席を譲ってくれる地下鉄
首都タシケントには地下鉄が走っていて、なかなか便利だった。ソ連時代の1977年、中央アジアで最初の地下鉄として開業した。京都市の地下鉄が1981年開業なので、それより早い開業ということになる。
窓口でキップの代わりに1,400ソム(約16円)を払ってプラスチック製のトークンを買い、これを自動改札機に入れて構内に入る。
簡単なボディチェックがある。ホームに入ると、サマルカンドなどの遺跡をイメージした青を基調としたゴージャスな内装だ。シャンデリアも輝いている。まさに地下鉄の駅が芸術作品のようだ。
この地下鉄は軍事施設の見なされていて、私が訪問した前の年2018年までは撮影禁止だったそうだが、堂々と撮影できた。
走っているのは、いかにもソ連的な無骨な電車だった。ハンガリーの首都ブタペストの地下鉄1号線もこんな感じの電車だった。
この地下鉄で感動したのは、満席の電車に私が大きなキャリーバックを引きながら乗りこむと、さっと席をかわってくれる人が必ずいたことだ。ウズベキスタンの人々はとても穏やかで、親切、優しい人が多いと、電車に乗るたびに実感した。
タシケントには地下鉄、サマルカンドにはトラムがあり、鉄道が都市近郊の日常的な移動手段となっているが、これはウズベキスタンの鉄道利用としては例外中の例外である。ウズベキスタンだけでなく、中国やロシアもそうだが、鉄道は基本的に長距離移動の手段として位置けされており、駅と駅の間隔も長い。タシケントからブハラへ向かう新幹線アフラシャブ号に朝早く乗った時も、タシケント駅を出発して30分〜40分ぐらいは工場や住宅街が続いていたが、通勤・通学の列車や電車は一切見かけなかった。
日本の首都圏や京阪神地区のように、中心都市から1〜2時間程度の近郊都市がJRや私鉄などで結ばれて、通勤・通学・観光の手段として頻繁に電車が運行される形態は、世界共通の当たり前の姿ではないということを改めて認識した。
(つづく)
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