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大人のピアノを始めてから1年3カ月

 59歳の秋から念願の大人のピアノを習い始めて約1年がたった。遅々とした歩みではあるが、ちょっとは進歩していると思う。
 大人のピアノを始めたいが迷っている人、また同年代で始めている人の何かの参考になればと思って私の経験を書いてみた。

1年3カ月目の「だったん人の踊り」

 まずは、お恥ずかしながら、ピアノを習い始めて1年3カ月目の時点での演奏を披露したい。途中でつまったり、間違いまくっていて、とても「披露」なんていうレベルではないが、正直な現状である。
 曲は、ボロディンの「だったん人の踊り」。オペラ「イーゴリ公」の中に出てくる曲で、とても美しくて、大好きな曲である。

やりたいのに、やらない理由を探してどうする?

 私が59歳にして大人のピアノを習い始めたきっかけは、2020年、コロナ禍のもとで全国民に10万円の定額給付金が支給されたことだった。
 西田敏行の「もしも、ピアノが弾けたなら」という楽曲のとおり、私は昔からピアノが弾けたらいいなぁという願望をずっと持ち続けてきた。私は音楽が大好きで、一番のお気に入りはクラシックだが、歌謡曲やジャズ、J-popなども好きだ。ただ、楽器の演奏は学校時代に習ったリコーダーと、大学1回生のころに1年だけチャレンジして挫折したクラシックギターぐらいしか経験がない。音楽の楽しみ方としては、もっぱら聴くばかりで、たまにカラオケで音痴に歌うぐらいのものだ。それだけに、自分自身で表現したいななという気持ちがずっとあった。
 この20年ぐらい、「大人のピアノ教室」というものがあちこちにできて、ピアノ経験がないおっさん、おばさんでも恥ずかしげもなく教えてもらえる環境が整ってきた。私も、「大人のピアノ教室」が気になって、通ってみたいという気持ちが膨らんできた。しかし、「仕事が忙しくて、そんなのいっている暇がない」「お金がかかるんじゃないか」「また挫折したらいやだな」などと、やりたいくせに、やらない理由を一生懸命見つけようとしている毎日だった。
 そうしたネガティブな自分の背中を押してくれたのが、コロナの定額給付金10万円だった。
 そうだ! この10万円でキーボードを買おう。やりたいくせに、やらない理由を一生懸命に探してどうする? 一度しかない人生、やりたいことをやったらええやんか!
 「大人のピアノ教室」も、いろいろ探して、2校ほど体験入学もして、「シアーミュージックスクール」に決めた。1回45分のレッスン×月2回=1万円の月謝なので、まあ、なんとかなる。

下手は下手に、上手は上手に忠実に再現する電子ピアノ

 次は、ピアノ選びである。
 当初の予算は、定額給付金の10万円前後で買えるキーボードか電子ピアノだった。10万円にちょっと+アルファしても、いいなと思っていた。
 たしか2020年9月頃、島村楽器イオンモール桂川店でピアノを物色していたら、お店のお姉さんが声をかけてきた。
 10万円前後のキーボードかピアノを買おうと思っていることを告げると、「10万円前後のピアノじゃ上達しませんよ」と、店員のお姉さんが強力に勧めてきたのがRolandのLX705 という電子ピアノだった。242,000円で大幅に予算オーバーだ。
 お姉さんの説明によれば、LX705クラスの電子ピアノの音源は、モデリング音源というものだ。従来の電子ピアノの音源は、生のピアノの音を一つ一つ録音したサンプリング音源というものである。これにたいして、モデリング音源というのは、弦をはじめとしたピアノを構成する各部をデジタル技術で仮想的に合成し、ピアノ音を一からプログラミング的に再構築したもの。モデリング音源の方が、鍵盤のタッチの仕方など微妙な具合が忠実に音に反映されて、よりアコースティックピアノに近い音の出方がするそうだ。お姉さんによれば、サンプリング音源は下手でもなとなく上手に聴こえるが、モデリング音源は、下手は下手に、上手は上手に忠実に反映するので、「お客様、こっちの方が確実に上達しますよ」ということだった。
    RolandフォレスタのYoutueでもその辺りのことを宣伝していた。


   せっかく、ピアノを習い始めるのなら、より上達するものにしようと、お姉さんのご提案通りとした。
 きっと彼女は優秀な営業ウーマンなんだろう。60歳前後とおぼしきおっさんで「大人のピアノ」を始めたいという人物なら、「モデリング音源の方が確実に上達しますよ」とくすぐると財布のひもが緩むだろうと見たに違いない。まんまと乗せられた。

コロナ禍でピアノ納品まで2か月待ち

 ところで、電子ピアノは1週間ぐらいで納品されるかと思っていたら、なんと2か月も待たされた。コロナ禍で、Rolandの電子ピアノを製造している東南アジアの工場の生産や輸送がマヒしているからだった。
 しかし、10月からピアノ教室に通い始めたので、ピアノが納品されるまでのあいだは、とりあえずロールピアノを買って練習することにした。おもちゃみたいなものだが、無いよりはましだ。

 それと、電子ピアノを鎮座させる部屋の手作りリフォームをおこなった。
 その部屋はかなり傷んでいた空き部屋で、畳がかなり汚れボコボコになっていて、襖も古びていた。しかし、畳の上にウッドカーペットを敷いて、襖にはダイソーのリメイクシートを貼ると、まるで見違えった。

リフォーム前
リフォーム後

 ウッドカーペットが江戸間6畳分で17,780円。
 これを敷くのに、部屋の中の家具を全部移動して、また戻す作業などが結構大変で「便利屋さん」にお手伝いを依頼したので、その手間賃が13,200円。
 リメイクシートは、110円×18枚分=1,980円
 合計で、32,960円。今回はちょっとお金がかかったが、部屋の雰囲気がガラッと変わったので、十分価値はあった。
 そして、2020年12月、ついに電子ピアノが納品された。

ついにピアノが納品された

クリスマスまでに「もみの木」を弾けるように頑張る

 10月から大人のピアノ教室に月に2回通いはじめた。毎回、マンツーマンのレッスンで、レッスン時間は45分。そのなかで、『バーナム・ピアノテクニック』という教則本と自分が弾いてみたい曲のレッスンを受ける。
 ピアノの教則本というと、素人でも『バイエル』と思っていたが、ピアノの先生のご推薦は、『バーナム』だった。こっちの方が、より表現力が身に着きやすいということだった。
 並行する曲としては、とりあえず、クリスマスまでに『もみの木』を弾けるようになることを最初の目標に設定した。
 毎回、『バーナム』と曲を自宅で練習していって、レッスンの時にそれを弾いてみて、先生から具体的なアドバイスを受ける。やはり、ちょっとした指の使い方とか、姿勢からはじまって、リズムの取り方、間の取り方、練習の仕方など、独習ではなかなかつかめないことを毎回教えてもらえる。一から大人のピアノを始めるのであれば、教室に通うことをお勧めしたい。
 先生の方も、自分より年上のおっさんであり、何かのコンクール目指して猛練習をするわけではないので、厳しいことは言わず、基本は楽しく、「上達が早いですね~」と適当におだてながら教えてくれるので良い。とは言っても、やはり先生の前で演奏するのは緊張する。
 そして、2020年12月末、「もみの木」がある程度弾けるようになった。これまたお恥ずかながら、その時の動画がこれ。動画では左手しか映っていないが、一応、両手で弾いている。

忙しくても、たとえ5分でも毎日ピアノに触る

 この動画が習い始めて2か月後で、冒頭の動画が1年3か月後。ちょっとは複雑な曲が弾けるようになったが、まだまだスムーズに弾けない。

バーナム・ピアノテクニック


 この間、「バーナム・ピアノテクニック」という教則本は、「導入書」⇒「1」⇒「2」と3冊目まで進んだ。教則本は無味乾燥というイメージがあるが、私は全然そうは思わなくて、「バーナム」は一つ一つの曲に物語があり、かつ短いので、楽しくて弾きやすい。しかも、ところどころに難しいところがあるので、それをちょっとずつ突き崩していくのが楽しい。

電子ピアノの内蔵曲の楽譜


 自分が弾きたい楽曲は、電子ピアノの内蔵曲の楽譜のなかから、チョイスし、「山の音楽家」「大きな古時計」「浜辺の歌」「ハイ・ホー」などを練習し、この数か月は冒頭の「だったん人の踊り」を練習してきた。内蔵曲があると、いつでもお手本が聴ける。しかも、右手の音だけを消して、右手を練習する、、、といった電子ピアノならでも練習ができる。
 「だったん人の踊り」には特別な思いがある。私ななぜか昔から中央アジアに何となく憧れがあり、いつか行ってみたいと思っていた。そんな私にとて、ロシアの作曲家・アレクサンドル・ボロディンによる「イーゴリ公」や「中央アジアの平原にて」などの楽曲は中央アジアのイメージを広げてくれるものであった。そうしたなかで、機会あって、2019年に中央アジアの国・ウズベキスタンを訪問する機会があった。

 「だったん人の踊り」の舞台は、いまのウクライナやカザフスタンなので、ウズベキスタンとはちょっとずれているが、列車の車窓から見た平原はまさに「だったん人の踊り」のイメージだった。その雰囲気を表現したいと思っての曲選びだったが、なかなか指がついていかないのが現状だ。
 ピアノの先生からは、難しいところは3楽節ずつ練習するとか、慌てずに、ゆっくりでいいから正確に弾くように、、、というご指導を頂いて、「なるほど」と思ったりしている。そのうち、思い通りに弾ける日が来るだろう。
 仕事をしながらなので、夜遅く帰ることもあるが、継続するためには、どんなに忙しい時でも、たとえ5分でも10分でもピアノに触れることを第一としてきた。とはいっても、本当に時間がない時とか、どうも気分が乗らなくてピアノに触らない日もけっこうあった。それは、それで、「まあいいか」と自分に甘くしてきた。他人と比較する必要はなく、自分が楽しければよいので。
 いずれ、ストリートピアノ・デビューを目指したい。



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